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【東海3県】深刻さ増す老朽化

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(2017/9/8)



 


【東海3県】深刻さ増す老朽化

〜維持管理起点にサイクル確立〜


 



雨水幹線発進立坑



 



ポスター



 施設の老朽化と執行体制の脆弱(ぜいじゃく)化が問われる中、国土交通省は2017年8月に「新下水道ビジョン加速戦略」をまとめた。



この中で、「マネジメントサイクルの確立や効率性の高い最新設備の導入、施設の集約化・共同化が求められている」と指摘する国土交通省の森岡泰裕下水道部長に、下水道の維持管理方針や可能性について聞いた。また、愛知県、岐阜県、三重県と名古屋市の下水道施策を紹介する。










森岡泰裕国交省下水道部長に聞く




森岡泰裕国交省下水道部長



 持続性の高い下水道を目指す『新下水道ビジョン』策定から3年がたった2017年8月、国土交通省は『新下水道ビジョン加速戦略』をまとめた。ビジョンで指摘した施設の老朽化と執行体制の脆弱(ぜいじゃく)化は深刻度を増しており、施策の選択と集中で新下水道ビジョンの早期実現を目指す。国交省の森岡泰裕下水道部長は、加速戦略が「下水道に携わる全ての関係者に対する国交省からのメッセージだと受け止め、議論を深めてほしい」と述べ、より切迫性の高い対応を求める。9月10日の「下水道の日」に合わせ、森岡部長に加速戦略の狙いを聞いた。



―加速戦略を策定した背景を聞かせてください。

「『循環のみちの持続と進化』をテーマに新下水道ビジョンを策定したのは2014年7月。ビジョンを踏まえて下水道法を改正し、維持修繕基準による老朽化への対応、下水道管理の広域化を促す枠組みを制度化した。ただ、法改正から2年が経過してみると、人口減少が進んで下水道の経営環境は厳しさを増し、執行体制の脆弱化や施設の老朽化もより深刻な状況に陥りつつある」

「下水道事業の将来を考えた時、こうした状況の変化を踏まえれば、ビジョンで示した施策にメリハリを付ける必要がある。このため、2017年4月から若手の学識者や下水道部の若手職員ら、将来の下水道事業を背負う世代を中心に議論し、今後5年程度で実施すべき施策を加速戦略としてまとめた」



―老朽化対策では何を提言しているのでしょうか。

「下水道の市場規模は、建設分野の年間投資額約1兆5000億円に対し、維持管理の投資額も1兆円に上っている。投資額だけを見ても、他のインフラに比べて維持管理の重要性が高いことがよく分かる」

「加速戦略で求めたのは、維持管理を起点とした『マネジメントサイクルの確立』。処理場の機械・電気設備は土木構造物よりも耐用年数が短く、技術革新のスピードも速い。更新期が早く訪れることを逆手にとり、効率性の高い最新設備を導入するべきだろう。一方で、人口減少が進んだ地域では施設の集約化・共同化を進めることも重要だ」



―下水道の防災・減災を重点的に進める方向性も示されました。

「激甚化した豪雨被害が頻発しており、マンホールから雨水があふれるような状況も多く見られる。とはいえ、全ての地域で1時間当たり100_の降雨に対応するような対策を講じることは難しい。雨水貯留浸透施設の導入促進など、まちづくりと連携し、ハード・ソフトを組み合わせた水害対策を進めなくてはならない」



―加速戦略に盛り込まれた「下水道へのオムツの受け入れ」も話題になりました。

「人口減少が進めば下水道の利用者が減り、下水道の処理能力には余裕が生まれる。加速戦略では、こういった処理能力の余裕を有効に使い、下水道に生ゴミやオムツを受け入れることを検討できないかと提言している。オムツを下水道に流すには、オムツ分解装置、おむつディスポーザーを各家庭に設置することになる。下水道への負荷が増すため、流下阻害や環境影響など課題はあるが、高齢者介護や子育ての負担を軽減する、こうした利用者目線の施策によって、将来的な下水道の存在意義や可能性が広がるのではないかと期待している」

 


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最良の下水道ソリューションパートナーへ




愛知雅夫



 「日本下水道事業団」は、地方公共団体の下水道技術者不足を支援する目的で設立された「下水道事業センター」を前身として、1975年に国の認可法人として発足いたしました。2003年には、地方公共団体の共通の利益となる事業を実施する地方共同法人となり、現在に至っております。発足以来、終末処理場やポンプ場などの下水道根幹的施設の設計・建設の受託、維持管理などに関する技術援助、自治体職員などの研修業務を通して、多くの地方公共団体の支援をさせていただいており、水環境の保全・改善、下水道事業の発展に微力ながら寄与してまいりました。

2017年度当初には、21年度までの第5次中期経営計画の策定にあたり、『日本下水道事業団は、下水道ソリューションパートナーとして技術、人材、情報等下水道の基盤づくりを進め、良好な水環境の創造、安全なまちづくり、持続可能な社会の形成に貢献します』という新たな基本理念を制定いたしました。下水道事業を取り巻く状況は複雑化・多様化しており、自治体の皆さまにおかれては事業の実施にあたりさまざまな課題に直面されているかと思います。日本下水道事業団は基本理念に基づき、課題解決の支援により持続可能な社会の形成に貢献できるよう、設計・施工基準類の整備や新技術の開発など業務レベルの一層の向上に取り組んでまいります。

2017年度、東海総合事務所(岐阜・静岡・愛知・三重の4県を担当)では建設工事で42自治体、実施設計で26自治体より、終末処理場・ポンプ場などの新増設・再構築、雨水対策、耐震化などの事業を受託しております。日本下水道事業団は、下水道インフラ事業に係る唯一の地方公共団体の支援・代行機関として、皆さまにとって最良の下水道ソリューションパートナーであり続けるため不断の努力をしてまいりますので、引き続きご支援のほど、よろしくお願いいたします



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川越排水機場建設工事その12




川越排水機場建設工事



 伊勢湾岸自動車道みえ川越インターチェンジの程近くに位置する川越排水機場で現在、「川越町川越排水機場建設工事その12」が進められている。施工を担当するのは戸田・生川特定建設共同企業体(JV)だ。同工事は、2016年11月に着工した。7月末現在の進捗率は約63%。現場を指揮する中村憲仁所長は、「計画をやや上回るペースで進んでいる」と話す。

川越排水機場は1988年に稼働した施設。現在の施設は旧耐震基準で建設されているため、現在の耐震基準に合わせた改修工事を順次進めている。同JVが施工する工事では、調整池に架かる管理橋橋台の補強と、管理橋付近から北側の矢板護岸工を行っている。

橋台は、増し杭および増しコンで補強する。杭は口径400_、長さ31bの回転圧入鋼管杭を合計16本打設した。管理橋の建設年度が古く、支障物の有無が分からないため、事前に地中障害物撤去工法(PSP工法)を施工した。

鋼矢板仮締切では、橋梁下部の施工は、上部区間に制約がある中で進めなければならない。このためクリア工法で鋼矢板を打設した。護岸の改修では、既設の護岸を撤去し、延長約180bにわたって鋼矢板を打設し笠コンクリートを設置する。施設を使用しながら工事を行っているため、調整池に水がある状態で工事を進めている。工事を進めるに当たり、「墜落・転落災害を防ぐため、護岸天端に仮設手摺りを設置。また、橋梁点検車を使うことで足場作業をなくす」など、安全に万全を期す。

また、現場は伊勢湾の防潮堤のすぐ背後に位置する。排水がすぐに海に出てしまうため、「pH計で数値を頻繁に測定するなど、水質管理を徹底している」。近隣では高潮防潮堤や臨港道路・霞4号幹線の工事も行われている。そのため、工事車両の通行など、これらの工事関係者と調整しながら進めている。

18年2月の工期末まで半年を切った。「無事故・無災害で完成させたい」と気を引き締める。



【工事概要】

▽発注者―日本下水道事業団

▽場所―三重県川越町地内(川越排水機場内)

▽工事内容―橋台補強工、基礎杭工、仮設工、調整池矢板護岸工、既設構造物撤去工、復旧工







汚水処理施設を10年概成へ




高木下水道課長



 愛知県は2016年度、今後の愛知県の下水道事業を推進するための羅針盤となる「あいち下水道ビジョン2025」を策定した。少子高齢化や災害対策、老朽化への対応など、下水道を取り巻く環境が大きく変わる中、汚水処理施設の10年概成、ハード・ソフトを組み合わせた災害対策などに取り組む方針を打ち出した。愛知県建設部下水道課の高木淳課長に、県の下水道事業について聞いた。



――愛知県内の下水道整備の進捗状況は。

「愛知県の下水道普及率は16年度末時点で77.2%となった。名古屋市を除くと67.7%となる。16年度末の全国平均78.3%と比べると低い水準で、愛知県は全国第16位だ。愛知県の人口753万人のうち、下水道の未整備人口は123万人。名古屋市を除くと約121万人となる。下水道事業への着手が遅れた名古屋市近郊の都市に多く残っている」



――流域下水道の整備はどうか。

「16年度末時点の進捗率は、幹線管渠が計画延長382`のうち360`が完成し、進捗率は94%。また、処理場は計画処理能力の48%の進捗率だ。引き続き、関連市町の公共下水道の面整備の進捗に合わせ、幹線管渠の延伸と処理施設の増設工事を進めていく」



――地震・津波対策はどのように進めているか。

「下水道施設を耐震化するハード対策の『防災』と、被害を最小化する『減災』を組み合わせた総合的な対策を進めている」

「ハード対策については、00年以前の土木設計基準を適用した施設などは十分な耐震性能を有していない可能性があることから、耐震診断を行っている。診断の結果、対策が必要と判断された施設は、最低限の汚水処理機能を確保するための優先度の高い施設から順次耐震対策工事を進めている。さらに、14年12月に公表した第3次あいち地震対策アクションプランでは、作業員が常駐する建築物の耐震対策や非常用自家発電設備の整備などを位置付け、対策を行っている」

「ソフト対策は、想定外の被害が発生することを前提として、下水処理の最小限の機能を確保するとともに、早期復旧のため13年度に各流域下水道の下水道BCPを策定した。このBCPなどに基づいた訓練を定期的に行い、ブラッシュアップを図っている」

「津波対策については、14年5月に公表された県の被害予測調査結果で、沿岸部にある流域下水道の6処理場は津波による浸水の可能性はないと報告された。しかし、3カ所の中継ポンプ場について浸水が予想されるので、今後対策を検討していく」



――下水道の更新、長寿命化も進めていかなければならない。

「限られた予算の中で持続可能な流域下水道施設を運営していくためには、ライフサイクルコストを考慮した改築更新を行っていく必要がある。愛知県では、10年度から施設ごとに長寿命化計画を策定して改築更新を進めてきた。16年度に国が下水道ストックマネジメント支援制度を創設し、これまで個別施設ごとに策定していた長寿命化計画に代わり、施設全体の管理の最適化を目指すストックマネジメント計画を策定することになった。愛知県では、16年度に全11流域下水道でストックマネジメント計画を策定した」

「この計画では、下水道施設の保全方法を、劣化・動作状況に応じて対策を行う『状態監視保全』、あらかじめ定めた周期により対策を行う『時間計画保全』、異常の兆候や故障発生後に対策を行う『事後保全』の3種類に分類した。状態監視保全は、管渠やマンホール、処理場の設備のうち点検で劣化状況が把握できる施設としている。処理場の電気設備など、劣化状況の把握が難しく、定期的に更新する必要がある施設は時間計画保全とする。また、処理場の機械設備のうち故障により停止した機能を予備機などにより補完することができる施設は事後保全で対応することとしている。これらの施設について、不具合発生によるリスクに応じた点検計画と、5年間の改築実施計画を定め、計画的に改築更新を進めている」



―下水道資源の有効活用の取り組みは。

「16年度に流域下水道から発生した汚泥は脱水ケーキベースで約189000dだった。この汚泥はセメント原料、燃料、肥料などに有効利用している。民間企業を活用することで、有効利用率はほぼ100%に達しており、全国平均の68%(15年度国交省調べ)を大きく上回る。発生汚泥量は下水道の普及に伴い今後も増加が見込まれている。引き続き高い有効利用率を維持するためには、利用先を戦略的に確保していくことが不可欠だと考えている」



――エネルギー利用にも取り組んでいる。

「衣浦東部浄化センターで、12年度から汚泥燃料化施設の運用を開始し、石炭火力発電所の燃料として利用している。16年度は県全体の発生汚泥量の約18%をエネルギー利用した。矢作川浄化センターでは、16年度から汚泥の減量化を目的とした汚泥消化施設の運用を開始。消化工程で発生するバイオガスで汚泥焼却炉の補助燃料の約42%を賄っている。また、豊川浄化センターでは、既存の汚泥処理施設の改築とバイオガス利活用施設の新設、20年間の運営・維持管理をPFI事業で実施している。17年2月からバイオガス発電を開始し、固定価格買取制度で売電することで維持管理費を削減している」

「引き続き、下水汚泥のセメント・肥料原料などの『資源利用』に加え、燃料利用・メタンガス利用などの『バイオマスエネルギー利用』を推進していく」



――下水道整備の今後の課題は。

「16年11月に策定した『あいち下水道ビジョン2025』では、県内の下水道事業の課題として、全国平均を下回っている普及率の向上、閉鎖性水域であり環境基準が未達成である伊勢湾・三河湾の水質保全、南海トラフ巨大地震などの大規模災害に備えるための地震対策を掲げている」

「こうした課題の解決に向け、汚水処理施設の10年概成、ハード・ソフト対策を組み合わせた災害対策、人・モノ・カネの持続可能なマネジメント、下水汚泥のエネルギー利用などの視点を新たに盛り込んだ。あいちの下水道の三つの役割として、『快適な水環境を想像する』『安心・安全なまちづくりを支える』『地域社会・地球温暖化対策へ貢献する』を掲げた。この役割を達成するため、具体的な取り組みを展開していく」



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持続可能で災害に強い下水道へ




松葉秀樹



 供用を開始してから既に100年以上が経過した名古屋市の下水道事業。老朽化した管が増大する一方で、人口減少を背景に使用量収入の拡大は難しい。大規模地震や水害への備えも求められる中で、事業のさらなる効率化が求められている。「持続可能で災害に強い下水道」を目指す上で何が重要か。名古屋市上下水道局の松葉秀樹計画部長に聞いた。



――下水道事業の現状と課題は。

「2016年度末現在で人口普及率は約99.3%、管渠ストックは約7850`に及ぶ。このうち50年の標準耐用年数を過ぎた管渠は約1450`で、全体の約18%。高度経済成長期に集中して整備した施設が今後20年間で一斉に標準耐用年数を迎え、老朽管は総延長の約半数にまで増える見込みだ。適切な維持管理による管渠の延命化に加え、健全度・重要度を考慮して改築の優先順位を定め、事業量を平準化する必要がある」

「南海トラフ巨大地震の発生も懸念材料だ。下水道施設は重要なライフライン。被災時の機能確保に向けて早急に地震対策を進める」

「一方で、下水道使用料収入は減少傾向にある。限られた予算で効率的に事業を執行するとともに、持続可能で災害に強い下水道の整備を目指す」



――老朽管への対応策は。

「本市では、1980年に発生した国道での大規模陥没を契機に『下水管路調査改築計画』を策定した。下水管路の状況を事前に把握して処置を講じる予防保全を前提とした取り組みだ。16年度から第8次下水管路調査改築計画に基づく事業を推進している。老朽管の急増や大規模地震に備えるため、前計画よりも改築事業量を約20%増やし、年間45`を改築していく」

「また、管渠の老朽化による道路の陥没を抑制することを目的として、空洞調査も計画的に行っている。17年度からは、都市機能が集積する名古屋駅周辺地域などを新たに重点的に取り組む地域と定めて、定期的に調査を実施することとしている」



――内水氾濫への対策も急務だ。

「近年、局地的大雨や集中豪雨が各地で頻発しており、2017年においては、九州北部豪雨など、前例のない規模と頻度で豪雨が発生している。名古屋市においても、7月12日の大雨により道路冠水による車両の水没や地下鉄駅構内への雨水の侵入、床上・床下浸水が発生した。」

「本市においては、下水道創設期より1時間50_の降雨に備えた整備を進めてきた。16年度末の対策達成率は96.9%に達している。」

「また、東海豪雨や平成20年8月末豪雨などで浸水被害が集中した地域や、都市機能の集積する地域を対象に、原則として1時間60_の降雨に対応する施設へレベルアップする緊急雨水整備事業を進めている。この事業により、東海豪雨の際名古屋地方気象台で観測された過去最大の1時間97_の降雨に対して、床上浸水のおおむね解消を目指している」

「現在、リニア中央新幹線の開業を10年後に控えた名古屋駅周辺において、緊急雨水整備事業の集大成となる、名古屋中央雨水調整池の建設を進めている。東海豪雨や平成20年8月末豪雨などで浸水被害が発生した西区、中村区、中川区を結び、延長は約5`、内径5.75bの円形管渠型で、貯留量は約104000立方b。特徴は、既存の雨水貯留施設を有効活用するために、各貯留施設と接続し、下流部に新設する広川ポンプ所で中川運河に最大毎秒10立方bを連続排水する『流下貯留式』であることだ。名古屋高速の橋脚基礎杭やリニア中央新幹線の計画位置を考慮した結果、調整池の底の深さは地下約50bとなった。現在、発進立坑が完成しシールドマシンを製作中だ」

「広川ポンプ所の躯体も地下部分が約65bで、全国でも有数の大深度施設。施工はニューマチックケーソン工法で行う。建設用地が狭小な上に大深度での施工となるため、設計業務から施工管理まで高度な技術力と実績を有する日本下水道事業団に委託している」

「浸水対策はハードだけではない。自助・共助の支援として、洪水・内水ハザードマップをはじめソフトを含めた総合的な取り組みを進め大雨に強いまちづくりに取り組んでいる」



――管更生も積極的に取り入れている。

「本市で最初に管更生を採用したのは87年度のこと。以来16年度までの施工実績は約190`に及ぶ。老朽管の改築は開削が原則だが、交通量が多い箇所や家屋の密集地などでは更生工法が有効だ。なお、本管を更生工法で改築する場合でも、道路陥没の原因となる状態の悪い取付管については開削工法で布設替えし、本管・取付管ともにリニューアルしている」

「近年は改築での開削・更生の延長割合はほぼ半々。特に、開削工法が困難な中大口径管で、重要な幹線の地震対策や老朽管の改築を行う際に更生工法のシェアが拡大してきている。今後も、管内水位の高い管渠や、光ファイバーが布設されている管渠など、施工条件の厳しい管渠について改築していく必要がある。既設管の状況を適切に把握した上で、更生工法を採用していきたい」



――建設業界に求めることは何か。

「更生工法の採用が増えている中で、中大口径管渠の改築では、下水が流下している既設管内での作業が避けられない。このような厳しい作業環境下においても第三者災害防止はもちろん、酸素欠乏や局地的な大雨による増水などの安全対策が欠かせない。その上で施工精度を高めるなど、ポイントを押さえた施工管理をしてもらいたい」

「一方で、団塊の世代に続きベテランの退職が進んでいる。施工管理の重要なポイントは一朝一夕で身につくものではない。若い世代に確実に技術を伝承してほしい」

「本市においても、長年培ってきた知識や技術の若手職員への伝承、現場対応力の強化を進めている。安全に関する暗黙知など、時間はかかるがしっかり伝えたい」

「効率的な体制づくりへ、多様な官民連携の手法を検討し、民間活力の導入を進める必要があると考えている。限られた財源で下水道を安心・安全かつ効率的に運営していく上で、新たな技術の積極的な開発と提案をお願いしたい」







現場ルポ ほのか雨水幹線下水道築造工事




ほのか雨水幹線





 名古屋駅から西側へ8分ほど歩くと、繁華街から住宅地に切り替わるあたりで高さ約13bの防音ハウスが見えてくる。不動テトラ・徳倉・東海特別共同企業体が受注した「ほのか雨水幹線下水道築造工事」の発進立坑の現場だ。

工事は、名古屋市上下水道局による「雨に強いまちづくり」の一環。雨水を一時的に貯める貯留管を地下に建設することで、浸水による周辺の被害を軽減する。

工法は泥土圧式シールドで、貯留管は内径3.5b。則武公園にある発進立坑から椿神明社の南側を通って太閤通の手前まで、総延長は約650bとなっている。時間雨量60_という大雨に備え、最大で約6300立方b(25bプール約25杯分)に及ぶ雨水を貯留することができる。

管の土被りは約8b。一部の区間が駅西銀座の地下にかかっており、付近は住宅や店舗が密集。直上の道路は交通量が多く、既存の埋設物も多い。さらに、シールドが通るルートの下を地下鉄桜通線が横断。地盤や地上環境への影響の抑制には「細心の注意を払う」と現場代理人を務める植手照博さんは話す。

取材に訪れた7月下旬の時点では、椿神明社の地下付近にまでシールドが到達していた。ちょうど暑い時期だった上に、坑内は湿気がこもりやすい。現場では、送風設備や冷蔵庫を設置するなど、作業員の熱中症対策に特に気を遣うという。

7月には地元のまちづくり協議会が現場を見学した。また、市上下水道局が12月にも市民見学会を検討している。橋梁やダムといった地上の構造物とは異なり、ふだん目にすることのない地中のトンネルだけに、これまでの見学会では参加者から「こんな工事が地下で進んでいるんだ」という率直な驚きの声もあったとか。見学会は、事業の意義を知ってもらえる貴重な機会としても機能しているようだ。



【工事概要】

▽発注者―名古屋市上下水道局

▽場所―名古屋市中村区則武2から椿町まで(発進立坑は則武公園内)

▽工事内容―発進立坑建設、シールド工



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岐阜県が91%超で13位 3県とも全国値届かず





 全国の汚水処理人口普及率は、2016年度末時点で90.4%となり、1996年の調査開始以来、初めて90%を超えた。中部3県の普及率の全国順位は、岐阜県が91.6%で13位、愛知県が89.8%で18位、三重県が83.5%で30位となっている。全国の普及率は90.4%で、岐阜県だけがこれを上回った。

さらに、処理施設の核となる下水道処理人口普及率を見ると、愛知県が77.2%で16位、岐阜県が75.3%で18位、三重県が52.5%で39位。全国普及率(参考値)は78.3%で、3県ともこれを下回る結果となっている。

市町村別の状況を見ると、愛知県では名古屋市が高い水準(汚水99.6%、下水99.3%)を示しているものの、行政人口30万人を超える一宮市(汚水82.6%、下水66.8%)、豊田市(汚水87.6%、下水71.3%)、春日井市(汚水88.1%、下水68%)の3市が全国平均に達していない。また、行政人口10万人超の自治体でも、江南市(汚水72.5%、下水32.1%)や稲沢市(汚水73.7%、下水40.5%)などが全国平均を大きく下回る結果となった。

岐阜県は、人口40万人を超える岐阜市をはじめ、行政人口10万人を超える4市(大垣、各務原、多治見、可児)が全て汚水処理人口普及率94%以上。また、安八町、北方町、富加町が100%となるなど、大半の自治体が高い汚水処理人口普及率、下水道普及率を示している。

三重県は、県庁所在地の津市が汚水処理人口普及率83.5%(下水道普及率46.3%)にとどまっており、最も人口の多い四日市市が90.5%(下水76%)。これに続く鈴鹿市が92.2%(下水54.8%)、松阪市が86.2%(下水53.7%)となっている。木曽岬町こそ100%だが、同市は県内で最も人口が少ない自治体。県全体の普及率向上には、市レベルの自治体の改善が不可欠と言えそうだ。



クリックで下図を拡大↓↓↓





中部3県の汚水処理・下水道普及率


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岐阜県 下水道整備の現状と課題




鷲野俊樹下水道課長



 下水道は、公共用水域の水質保全を通じて、『清流』を守り伝える重要な役割を担う。その役割を果たすためには、下水道の整備推進や長寿命化対策、耐震対策を着実に進めることが重要となる。今年4月に岐阜県都市建築部下水道課長に就任した鷲野俊樹氏に、下水道整備の現状と課題などについて聞いた。



――岐阜県内の下水道の現状はどうか。

「公共下水道事業は2017年4月現在、県内42市町村のうち、38市町村(21市16町1村、供用開始後の維持管理を含む)で行われている。公共下水道普及率は16年度末で75.3%となり、前年度に比べ0.5ポイント上昇しているが、依然として全国平均と比べて普及率は低く、効率的な整備が期待されている。農業集落排水や合併処理浄化槽などを合わせた汚水処理人口普及率は91.6%であり、前年度と比べ0.6ポイント上昇している」

「全国的な課題である下水道施設の老朽化や地震への対策の必要性が顕在化する中、汚水処理施設の効率的な整備に加えて、長寿命化計画による計画的な維持管理や大規模地震でも下水処理機能を確保できるような耐震対策などを、地域の実情に応じて組み合わせて進めている」



――木曽川右岸流域下水道事業の整備状況、17年度の整備計画について。

「木曽川右岸流域下水道は、汚水量の増加に合わせて水処理施設の増設を進めており、14年度末に23池が完成し、処理能力は日最大208000立方bと、計画の86%に達した」

「地震対策では、08年度に岐阜県下水道地震対策緊急整備計画を策定し、大規模地震発生時でも基本的機能の確保を目指した対策を進めた。残る箇所についても、13年度に岐阜県下水道総合地震対策計画を策定し、引き続き対策を進めている」

「長寿命化対策では、13年度に策定した木曽川右岸流域下水道長寿命化計画に基づき、日常生活や社会活動に重大な影響を及ぼす事故発生や機能停止を未然に防止し、コストの低減を図るための対策を進めている」

「2017年度、県では『清流の国ぎふ』づくりの全面展開という中で、「人づくり」、「地域の魅力づくり」、「安心・安全の地域づくり」を掲げている。下水道は、「安心・安全の地域づくり」として公共用水域の水質保全を通じて、『清流』を守り伝える重要な役割を果たすことから、整備推進や長寿命化対策、耐震対策を着実に進めていきたい」

「具体的には、15年度に変更した事業計画に基づき、処理場施設(24〜25池機械・電気設備)の増設、流入ポンプ棟と放流ポンプ棟等の耐震対策や、処理場施設(送風機棟機械設備など)、ポンプ場施設(長森ポンプ場機械設備など)、幹線管渠(管更生)の長寿命化対策を推進する予定だ」



――下水道管渠の点検について。

「木曽川右岸流域下水道では、約78`の汚水幹線、約9`の放流幹線を管理している。一般的に道路に埋設しているため、直接異常を確認することが困難。日常点検によるクラック、段差、陥没など道路の変状を確認することで、管渠の異常を早期に発見するよう、週1度のパトロールを実施し、2週間に1度は全ての管渠を確認している。異常があれば、管渠内部を目視やカメラによる調査を実施し、修繕などの対策を行う」

「特に硫化水素による腐食が激しいと考えられる箇所については、5年に1度管渠内部を確認することを目標に取り組みたい。下水道管渠は、汚水を処理場まで流す、処理水を放流先まで流す重要な施設。日常点検で早期に異常を発見することに努めていきたい」



――高度処理の導入についてはどのように取り組んでいくのか。

「富栄養化による赤潮が発生している伊勢湾の水質を改善するためには、窒素やリンを除去する高度処理が必要。県内の高度処理実施率は15年度末で約65%であり、下水道施設の新設や増設、改築時に施設の高度処理化を進め、改善に取り組んでいる」

「木曽川右岸流域下水道では、当初計画の標準活性汚泥法から、嫌気無酸素好気法やステップ流入式多段硝化脱窒法へ変更し、急速ろ過法も併用して高度処理を進めている」



――17年度の下水道整備の課題は。

「木曽川右岸流域下水道施設の耐震化・長寿命化対策は、施設を供用しながら進める必要があり、汚水処理能力の確保と早期の整備に配慮したより計画的な推進が課題となる。県内市町村には、必要な長寿命化計画や耐震対策計画などの策定が円滑に進むよう指導・助言などの支援をしていく」

「財政的制約の中で早期に汚水処理施設を概成するためには、効率的な整備手法の採用が必要で、13年度末に国が発表した都道府県構想策定マニュアルを参考に、現在、岐阜県汚水処理施設整備構想の見直しを行っているところである。社会情勢の変化や地域の実情を踏まえた合理的な整備手法の採用や、下水道を実施する際も効率性に配慮することが大切と考えている」



――下水道の整備に当たり、建設業界に求めることは。

「建設業界は、社会基盤の整備や維持管理の計画を具現化する担い手であり、特に地元業者は有事の際に地域の防災力を支える重要な存在と考えている。流域下水道においても災害時の応援協定を結び、被災時の迅速な協力をお願いしている」

「また、今後増加が見込まれるメンテナンス業務について、地域の業者で対処できる体制の確保は、地域の雇用や安全な社会資本の持続的な確保につながると考えている。引き続き、岐阜県の下水道行政に協力をお願いしたい」





SPR工法の製管状況


ダンビー工法の製管状況





岐阜県内各市の下水道事業計画





<岐阜市 支障移転、要望箇所を順次>

岐阜市は、2017年度の公共下水道整備として市街化区域で延長約600b、市街化調整区域で延長約5500bの整備を予定しており、8月末時点でほぼ全ての工事を発注している。今後は支障移転や、要望を受けた箇所について順次検討し発注していく予定だ。



<瑞穂市 コミュニティプラント公共下水道へ移管予定>

瑞穂市は、25年度末までに公共下水道を14年度末の8.1%から15.8%まで拡大する見通し。

現在、瑞穂処理区の瑞穂地区が単独公共下水道で進めている。中地区は公共関連特定環境保全公共下水道で将来的に整備する計画。コミュニティ・プラントがある別府処理区は、瑞穂処理区の単独公共下水道へ移管する予定だ。

また西処理区では、事業計画を変更し、予定処理区域の面積を133fから134.7fに拡大した。計画汚水量は、事業計画が日量最大1764立方bから1451立方bに、全体計画を2117立方bから1525立方bに変更。口径100〜500_の管渠延長を4360bから4280bにした。



<中津川市 25年度までに2処理区整備>

中津川市が坂本処理区と中津川処理区を対象に進めている整備は、2017年度、管渠敷設工事14件のうち9件を発注した。残る5件の工事は年内に発注する。両処理区とも25年度の事業完了を目指して進める。

16年度末の時点で、坂本処理区は千旦林、茄子川の2地区の計画面積282fのうち99fを、中津川処理区は手賀野、駒場など13地区の計画面積1153fのうち780fが整備済みとなっている。

16年度末の時点での人口普及率は58.5%とまだ低い。

また、浄化管理センター(駒場1657-6)は日本下水道事業団(JS)に事業を委託し、17、18年度で設備の長寿命化を行う。



<大垣市 長沢町など下水管敷設> 大垣市が進める公共下水道事業の人口普及率は2015年度末現在で86.1%。これを19年度末までに88%まで普及させたい考え。17年度は下水管敷設工事で30件の発注を予定しており、釜笛地内や長沢町で整備を進めている。その他、汚水処理施設整備構想を策定しており、下水道や農業集落排水の整備手法などを定めた。18年度以降は池尻、赤坂大門、赤花地区などで管渠敷設を進める。



<山県市 年度末で公共下水道整備完了>

山県市の下水道施設は、6地区ある農業集落排水施設と、高富・富岡地区で整備が進む公共下水道施設がある。

公共下水道は、2003年度から整備が始まり、現在は第3期区域の事業が行われている。全体の完了は17年度末の予定だ。供用は08年度から行っている。全体計画は337fで、現在の面積整備率は約95%となった。

17年度分の工事は既に大半を発注している。今後、小規模の枝線工事3件を10月までに発注して全ての発注を完了する。

公共下水道整備事業完了後の18年度からは、水洗化率のアップに注力していく。



<多治見市 ストックマネジ計画策定へ>

多治見市の公共下水道の認可区域面積は3065f。そのうち整備済み面積は約2471f。人口普及率は94.3%(2016年度末現在)としている。

17年度の工事については姫地区、大針地区、大藪地区、西部地区での管渠埋設工事や旭ケ丘・京町などで管渠耐震工事の発注を予定しており、上半期中には工事を発注する。

18年度は、引き続き姫地区・大藪地区での管渠埋設工事を見込んでいる他、管渠・処理場を含めた下水道のストックマネジメント計画を17年度と18年度の2カ年で策定する予定。



<羽島市 幹線管渠整備19年度末までに91%へ> 羽島市が進める公共下水道事業の人口普及率は2015年度末現在で44%とまだ低い。これを19年度末までに46.5%まで普及させたい考え。汚水幹線管渠整備率は15年度末で77%となっており、19年度末までに91%を目指す。

17年度は矢熊汚水幹線管渠敷設(全体延長1660b、18年度末までに全体整備の予定)や正木地区の面整備を進める。18年度以降の整備計画では、須賀北汚水幹線や不破一色汚水幹線の整備を進めるとともに、福寿地区や正木地区の面整備を継続する。



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三重県 下水道整備の現状と課題




森伸生



 三重県は2017年度の流域下水道事業で、18年4月供用を目指す志登茂川処理場の機械電気設備などの工事を進める計画だ。そこで、三重県県土整備部下水道課の森伸生課長に、下水道整備の現状と課題、流域下水道事業の整備計画などを聞いた。



――三重県内の下水道整備の現状はどうか。

「本県では、16年度末の下水道普及率は52.5%と、全国平均の78.3%を下回っている状況です。そのため、16年4月に策定した県の中期計画である「みえ県民力ビジョン第2次行動計画」で水環境の保全を達成するために「生活排水対策の推進」を取り組みの一つとしています。具体的には、16年6月に策定した「三重県生活排水アクションプログラム」に基づき、市町と連携し、生活排水処理施設の整備を計画的・効率的に進めているところです。このプログラムに基づき、県内の処理施設の整備が完了すると、県の行政人口の約8割の方に下水道を使用していただくこととなり、下水道が担う役割は、非常に大きなものとなっています。このことから、引き続き、市町と連携して、下水道普及率の向上を目指すとともに、公共用水域の水質保全に努めていきます」



――各流域下水道事業の整備推進と施設の維持管理について。

「17年度の流域下水道事業の建設総事業費は約59億円。各市町が主体となって実施する公共下水道事業と連携しながら、下水道未普及地域の早期解消に向け、効率的、効果的に流域下水道整備を推進するとともに、施設の老朽化および地震対策を進めています」

「北勢沿岸流域下水道(北部処理区)は、17年度に菰野幹線の延伸を事業計画に位置付け、今後は工事着手に向けた準備を進めていきます。処理場では、引き続き、中央監視制御設備の改築工事などを進めていきます。北勢沿岸流域下水道(南部処理区)は、第2期建設事業として、処理場建設地の護岸・埋立工事を実施するとともに、処理施設の詳細設計を行っていきます。中勢沿岸流域下水道(雲出川左岸処理区)および同(松阪処理区)は、処理場の設備改築詳細設計などを実施していきます」

「宮川流域下水道(宮川処理区)は、引き続き、未普及地域の解消に向けて、内宮幹線と明和幹線の管渠延伸工事を進めていきます」

「また、下水道施設の地震対策として、北部、南部、雲出川左岸および松阪の4処理区を対象に「三重県流域下水道総合地震対策計画(第2次)」(14〜18年度)を策定し、被災時に最低限有すべき機能を確保するため、引き続き、耐震対策工事を進めています。さらに、大規模かつ広域的な災害に対しては、ハード整備のみでは被害を防ぐことが困難であり、被災後の迅速な応急復旧対策の実施が重要となることから、ソフト対策として15年度にすべての流域下水道処理場において下水道業務継続計画(下水道BCP)を策定しました。今後は訓練などによる検証を重ねて完成度を高めていきます」



――中勢沿岸流域下水道(志登茂川処理区)の供用開始について。

「津市北部地域を排水区域とする流域下水道志登茂川処理区が18年4月に供用開始する予定となり、約16000人の方に4月から下水道を使用していただけることになりますが、供用開始に向けて、処理場では機械電気設備工事などを引き続き進めます。また、管渠工事では安濃北幹線の工事を進めていきます」



――下水道ストックマネジメントへの取り組みについて。

「北部、南部、雲出川左岸、松阪および宮川の各処理場では、16年度に策定した「三重県流域下水道長寿命化計画(第2次)」(17〜20年度)に基づき、施設の改築更新を実施していますが、今後は下水道施設全体を最適化するストックマネジメント計画を策定し、膨大な施設の状況を客観的に把握・評価し、中長期的な施設の状況を予測しながら、維持管理方針を決め、事業費の削減や平準化を図っていきます」



――おわりに。

「人口減少社会の本格的な到来や、節水意識の向上などによる排水量の減少など、下水道事業を取り巻く社会情勢は大きく変化しており、一方で近年の地方自治体の財政状況は、非常に厳しいものがあります。このような現状において、重要なインフラ施設である下水道施設に対して、県民の皆さんの協力を図っていくことが必要不可欠であり、ストック効果を情報発信することで身近だけどあまり知られていない下水道への理解を広げていきます。今後も、下水道未普及地域の早期解消を図りつつ、適切に施設の維持管理を行い、県民の皆さんが安全で安心できる快適な生活環境の提供に努めていきます」





18年4月供用を目指す志登茂浄化センター




南部処理区2期工事




三重県各市の下水道事業計画





 三重県の各市町では、生活排水処理について、12市11町が下水道の他、農業・漁業集落排水、合併浄化槽などの処理方法で、尾鷲市、熊野市、度会町、大紀町、紀北町、紀宝町の2市4町が合併浄化槽で処理を行っている。下水道事業を進める市町の状況を見ると、16年度末で下水道処理人口普及率が52.5%(前年度51.7%)となっており、川越町、東員町、朝日町の3町が90%以上の進捗を示している。今回は、下水道事業を進める12市の進捗状況などに焦点を当てた。



<いなべ市 管渠敷設工17年度から着手>

16年度末の事業認可区域面積は2290.6f。供用開始区域は面積2166.9f(94.6%)で、区域内の整備はほぼ完了している。現在は農業集落排水4地区の公共下水道への統合を進めており、17年度から管渠敷設工事に着手し、18年度末に最初の1地区が統合される予定。



<桑名市 太夫枝線など管路敷設を予定>

桑名市は、合併前の旧桑名市と多度町地区を流域関連の公共下水道で、また旧長島町地区を単独公共下水道としている。現認可面積は、流域関連地区が2124.2f、単独地区が613.8f。16年度末の普及率は、流域関連地区が72.5%、単独地区が98.4%、市全体では75.2%。

汚水関連では、流域関連地区の枝線管路を中心に整備を進め、17年度には立花幹線の西方枝線や太夫枝線などの管路敷設を予定。また日本下水道事業団への委託により、福島、播磨、森忠などの地域において整備を進める。この他、長寿命化計画による長島浄化センター汚泥処理施設の電気設備改築が17年度に完了した。また、16年度に開始した城之堀ポンプ場の長寿命化計画では、17〜18年度でポンプ設備の改築を行う。



<四日市市 新五味塚ポンプ場建築など>

公共下水道事業のうち、汚水事業は16年度に事業計画変更したことから、単独公共下水道の事業計画面積を3134.1fに拡大した。流域関連は北部処理区が2220.16f、南部処理区が554.6f。16年度末までの人口普及率は76%となっている。

一方、雨水事業は単独公共関連の面積が2366.8fで、流域関連は北部処理区が1423.6f、南部処理区が273.1f。都市浸水対策の達成率は面積比で約50%となっている他、旧楠町を対象に取り組んでいる排水事業は127.9fで整備を進めている。

17年度の中心事業は、新五味塚ポンプ場建築工事、吉崎ポンプ場建築工事を進める他、新たに吉崎ポンプ場の放流渠工事や沈砂池工事を発注する。また、浜田通り貯留管整備や地震対策として塩浜雨水1号幹線築造を行う。汚水関連では、市内の幹線・支線整備を延長約20`行い、普及率の向上を目指す他、別山団地の公共下水道切り替えや日永浄化センター第2系統の特殊人孔耐震化に取り組む。



<鈴鹿市 下水道普及率 約70%を目標に>

16年度末現在の下水道普及率は54.8%。今後10年間で普及率約70%を目標に事業を進めている。

汚水の事業認可面積は約2659f。17年度は、鈴鹿北部、南部、西部、玉垣、野町などの各地区で幹線と面整備を実施し、約36.9f(管渠延長約13300b)の整備を進める。

雨水の事業認可面積は2873fで、金沢排水区を重点に雨水幹線築造を進めている。

17年度も汚水、雨水ともに16年度の継続整備を行う。



<亀山市 管渠敷設・舗装復旧を推進>

計画区域面積は1676f、計画処理人口は40514人。16年度末までに808.3fの整備を終えた。17年度末には841.8fの整備を終える見通しだ。

17年度は能褒野町などで管渠敷設工事、舗装復旧工事を進めている。また、16年度末に事業認可を拡大した地域で測量・設計業務を行う。



<津市 長寿命化対策など進む>

津市は、雲出川左岸処理区、志登茂川処理区、松阪処理区の三つの域流下水道処理区と、市単独処理区の4区域で事業を進めている。2017年3月末時点での下水道普及率は46.3%で、前年度比で1ポイント上昇したが、県庁所在都市では依然として低い位置となっている。しかし、三重県が進めてきた流域下水道志登茂川処理区(841f)が18年4月に供用開始する予定で、白塚町や河芸町など津市北部地域で、約16000人が下水道を使用することになり、普及率のアップが期待される。併せて、長寿命化対策・地震対策事業を進めており、中央処理区(橋内第1排水区)の下水道管更生工事、施設では、極楽橋ポンプ場耐震補強、中央浄化センター管理棟耐震補強工事などを実施する。



<松阪市 松阪第1処理分区など設計・工事を発注>

松阪市は公共下水道全体計画区域約4583fのうち、約2179fを事業計画区域として整備を進めている。事業認可区域の汚水処理人口は80700人で1日平均汚水処理量は19000立方b。2015度末にはこの区域の整備率が約83%となっている。16年度には全体計画区域のうち約294fが事業計画区域へ追加され、20年度までに整備を予定している。17年度も松阪第1処理分区などを中心に設計や工事の発注を進めている。



<伊勢市 21年度当初 普及率約58%へ>

伊勢市は、三重県が策定した中南勢水域流域別下水道整備総合計画に基づき1市2町(伊勢市・明和町・玉城町)を計画区域とした宮川流域下水道事業計画を基本に下水道事業を進めている。1989年に下水道事業に着手し、2016年3月末時点での下水道普及率は49.9%で21年度当初には約58%の普及率を目指す。全体計画区域は3509fで20年度末を期間としている事業計画区域は1884.4f。計画処理人口は全体計画区域が100500人、事業計画区域が65270人。



<志摩市 下水道BCPを策定>

志摩市は、安乗地区、神明地区、立神地区、坂崎地区、的矢地区、船越地区、塩屋地区、迫子地区、桧山路地区で下水道の供用開始が完了している。下水道事業については完了となるが、2017年3月末には地震や津波発生時の下水道業務継続計画を策定しており、下水道機能の継続と早期回復を図るために必要な手順を定めている。



<鳥羽市 安定した下水道稼動を>

鳥羽市は、相差・畔蛸処理分区(534f)を下水道処理区域としており、現在整備が完了し供用を開始している。同市では、2017〜26年度までの10年間を対象にした下水道経営戦略を策定しており、下水道が将来安定して稼働できるように取り組みを進めている。



<伊賀市 「上野」「青山」処理区 整備へ計画策定>

16年度末の下水道普及率は18.9%。計画区域面積は2317f。「上野」「青山」処理区の整備に向けた事業計画の策定を進めている。今後、関係地区との協議など、整備着手に向けた事業を進める予定だ。



<名張市 名張地区住宅団地 接続管中心に整備>

16年度末の下水道普及率は29.2%。市内では現在、公共下水道として中央処理区(既成市街地、シャックリ川流域、小波田川流域の住宅団地など)の第2期事業を進めている。中央処理区の全体計画整備面積は1286f。下水道事業認可では、第1・2期の事業認可区域766f(16年度までに617fを整備)を18年度末までに整備し、全体計画も25年度までの事業期間で次期認可手続きを進める予定だ。

17年度は、16年度の繰り越し分を含めた整備面積約50f、管路延長800bの敷設を計画。既成市街地の名張地区、住宅団地の接続管を中心に整備を進め、18年度も継続して管路の敷設を行う。



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(2017/9/8)


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