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【大阪・兵庫】大雨から街を守れ!

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(2017/9/8)



 


【大阪】大雨から街を守れ!

〜整備進む中央北増補幹線〜


 



中央北増補幹線(写真提供=大阪府都市整備部下水道室)



 



 寝屋川流域の浸水対策及び合流式下水道改善対策として、大阪府が進めている中央北増補幹線と寺島貯留施設の整備事業。浸水対策事業の増補幹線と、合流式下水道改善事業の貯留施設を一つのシールド工事で施工するもので、2019年度の全体完成を目指している。

施工区間は東大阪市荒本西三丁目〜西鴻池町四丁目の延長約2.7キロ。中央北増補幹線は、大雨時の雨水を途中の分水人孔2カ所から流入させ、既設の中央南増補幹線(二)を経由し、寝屋川南部地下河川へ排水することで浸水被害の低減を図る。また、寺島貯留施設は、寺島ポンプ場から送水される降雨時の未処理下水を一時貯留し、晴天時に寺島ポンプ場を経由して川俣水みらいセンターで処理・放流することにより汚濁負荷量を低減する。

シールド工の一次覆工は大成建設・村本建設・中林建設共同企業体が受注し、16年度に完成した。同現場では、プロのカメラマンに現場撮影を依頼するなど美観にこだわる作業環境づくりに取り組んだ。2017年7月には、安全衛生に係る厚生労働大臣表彰を受賞。また、高い工事成績評定点を得て、大阪府都市整備部優良建設工事等表彰(部長表彰)にも選ばれた。



 



なわてMC 処理施設増設進む





 大阪府が全国に先駆けて着手した流域下水道事業は、普及率で96%を超えるなど着実な成長を続けている。しかし、その一方で、多くの下水道施設が改築・更新時期を迎え、今後どのように老朽化対策を進めていくのかが大きな課題となっている。

2017年4月、都市整備部下水道室長に就任した稲垣勝伸氏に、主要施策や今後の取り組み、展望について聞いた。





稲垣勝伸



―最新の下水道普及率と、100%に向けた未普及対策をお聞きします。

「16年度末時点での府全体の下水道普及率は96.1%です(15年度末現在、東京都、神奈川県に次いで全国3番目)。前年と比べると、普及率は約0.3%、整備人口は約1.6万人、整備面積は約365ヘクタールとそれぞれ上昇しています。地域別では、南河内地域で約1.1%、泉南地域で約0.8%上昇し、とくに高い伸び率となりました」

「未普及対策としては、大阪南部エリアで和泉泉大津幹線(一)15工区の整備を進めており、17年度中に完成予定です。これにより、南大阪湾岸の汚水幹線整備率は100%となり、全線が完了します。この他、大阪東部エリアでは、八尾市が進める下水道事業と並行して、枚岡河内南(二)幹線2工区の整備を進めています」



―処理場の増強や、合流改善対策についてはどのように進めますか。

「寝屋川北部地域にあるなわて水みらいセンター(MC)は、同じ地域内にある鴻池MCの処理機能を補完する目的で整備されました。さらなる処理能力の増強に向け、なわてMCで高度処理施設を増設しています。現在の処理能力は38000立方メートル/日で、完成すれば2倍の76000立方メートル/日になります。18年度の供用を目指して整備を進めています」

「合流改善対策としては、なわてMCの増設に合わせ、汚水専用の萱島直送幹線の整備を進めています。また、全部で20カ所ある合流式ポンプ場の改築更新を順次実施しており、これに合わせて沈砂池のドライ化を進めています」





処理能力の増強が進むなわてMC



―寝屋川流域の浸水対策についてはどうですか。

「当初計画施設はほぼ達成済みですが、汚水・雨水共にレベルアップ分の対策が残っています。寝屋川北部では、増補幹線・直送幹線について全体37.1キロに対し整備延長22.7キロで整備率61.1%。北部地下河川関係では、中央(一)増補幹線(一、二)、大東(一)増補幹線が、17年度末に北部地下河川と一体供用予定となっています。寝屋川南部では、増補幹線・直送幹線について全体35.7キロに対し整備延長30.2キロで整備率84.6%。寺島貯留管との一体整備で計画する中央北増補幹線は、16年度にシールド工が完成しました。取り込み工事についても、16年度から着手しており、19年度までの予定で進めています」



―下水道施設の長寿命化対策についてはどう進めますか。

「流域下水道のこれまでの建設総投資額は約2兆円。保有するストックは、幹線管渠が延長約560キロ、水みらいセンターが14カ所、ポンプ場が32カ所となっています。府では、これらの施設の適切な維持管理と計画的な改築更新に向け、17年度中にストックマネジメント計画を策定する予定です。また、府内市町村のストックマネジメント計画策定については、勉強会を開催するなど、技術的なサポートを進めていきます」



―エネルギー、環境面の取り組みについてはどうですか。

「太陽光発電に関しては、大和川下流流域の狭山MC他6機場で、自らが発電事業者となって順次発電を開始しています。発電量は計12メガメガワットで、環境面はもちろん、災害時の防災力強化や収入面でも非常に効果的だと考えています」

「流域下水道の汚泥処分は、経済性に優れた処理方式として、焼却処理後の灰を大阪湾の公共最終処分場に搬出、埋め立てしています。処分場の受け入れ可能量の見通しや環境負荷低減のニーズも踏まえ、PPP/PFI手法の導入など民間活力を用いた下水汚泥の有効利用について検討していきます」



―建設業界へ要望することはありますか。

「既存ストック活用の観点から、大規模土木施設(水槽構造物)の耐震化対策、老朽化対策について、技術開発や設計手法の提案をいただければありがたい。これからの下水道施設の大更新時代を乗り切るためには、建設企業のノウハウや技術力が必要不可欠だと考えています」



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クリアウォーターOSAKA本格始動





 大阪市が100%出資する株式会社「クリアウォーターOSAKA」が、2017年4月から本格始動した。大阪市から下水道施設維持管理業務を包括受託している他、市域外事業の獲得など、民間企業ならではの新たな経営展開も目指す。同社は2016年7月に設立。本格始動までの9カ月間で準備を進め、社員数1000人を数える体制を整えた。本格始動のタイミングで同社社長に就任した福井聡氏に、今後の抱負や経営戦略を聞いた。



略歴 1980年大阪市採用。建設局道路部長、建設局理事、建設局長などを経て、2017年4月から現職。河内長野市出身。62歳。





福井聡



―新会社は2016年7月に設立された。設立目的について聞きたい。

「大阪市の下水道は、使用水量が低下傾向にある一方で、浸水対策や施設の老朽化対策など、取り組まなければならない課題が多い。財政状況が極めて厳しい中、思い切った形で上下分離し、市と新会社で役割分担することにした。こうすることで、より効率的な下水道運営が可能になると考えている」



―新会社の事業内容は。

「大阪市の下水道では、市域全体で多数の施設が複雑に関連しながらトータルシステムとして、総合的に雨水排水、下水処理が行われている。これらの施設の運転・維持管理を行う。具体的には、2017年4月1日付で、下水道施設維持管理業務を大阪市から5年間の期間で包括受託した」



―新会社の強みはどんなところにあるか。

「現在、社員数は約1000人で、このうち6割以上が大阪市から転籍した技術系職員だ。長年にわたって大阪市の下水道の維持管理業務を担ってきただけに、多くの知識やノウハウが蓄積されている。また、行政職員も12人が転籍し、大阪市からの派遣職員や市OB社員も在籍しているため、的確な自治体ニーズの分析が可能だ。民間企業に対しては、これらの強みを生かした共同受注などを呼び掛けていきたい。また、自治体に対しては、下水道事業の発注者支援や運営支援を提案していきたい」





設備日常点検のようす



―事業内容のうち、外部委託するものはあるか。

「運転管理については、当社の職員が直接実施すること96になるが、機器のメンテナンスや修繕関係については、専門的な技術や知識が必要。それについては業者に外部発注することになる。発注の際は、複数の小規模工事を1本にまとめたり、複数年契約などにより発注時期の平準化を進めたい」



―市域外事業の獲得も目指すと聞く。市場の現状と今後の戦略は。

「下水処理場維持管理業務の包括委託の導入状況は、処理場施設でいうと大阪府内では43カ所のうち2カ所、関西地区では267カ所のうち28カ所にとどまっている。今後包括委託が見込まれる市域外施設として、大阪府内では、管渠施設約23000キロ・約73000ヘクタール、処理場施設41カ所があるとみている。また、関西地区では、管渠施設約71000キロ・249000ヘクタール、処理場施設239カ所がある」

「最近では、多くの自治体が、下水道施設の老朽化と下水道収入の減少による予算不足という共通の課題を抱えている。われわれとしては、これまで大阪市の下水96道事業で培った実績とノウハウを生かして、段階的に市域外事業を獲得していきたいと考えている。まずは周辺自治体の下水道維持管理事情を調査、把握することから進めていきたい」



―収支目標は。

「ベースとなる大阪市からの包括受託事業は、年間約170億円。市域外事業については、当初の2年間(17〜18年度)は入札参加資格の取得に向けた取り組みなど、いろいろな準備を進め、5年目で約3億6000万円、10年目で約10億円の売り上げを目指している」



―本格稼働から見えてきた課題は。

「全国的に見ても新会社への注目度は非常に高いと聞いている。しかし、新参の民間企業として、取り組み内容や方向性をもっとPRし、認知度と知名度を上げていかなければならない。また、大半の社員が公務員であったことから民間企業であるという意識改革を徹底して行う必要がある。さらに、どこにも共通することだが、若手社員の確保と育成も今後の課題だ。キャリアアップ体制を充実させ、社員が夢を持って働けるような環境を作っていきたい」



―今後の抱負は。

「大阪市民270万人の暮らしを支える下水道施設の維持管理業務を一体的に受託すると共に、広く国内外の下水道事業に貢献していくことに、大きなやりがいと同時に責任を感じている。今後の下水道事業の先駆けとなれるよう、コストダウン、スピード化を図って、早期に事業を軌道に乗せていきたい」






CWOの事業範囲



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兵庫県生活排水効率化推進会議が発足





 兵庫県内では、公共下水道事業などの生活排水処理施設について、持続可能な施設の構築に向けて、施設の統廃合などが進んでいる。さらに市、町の枠を超えた広域化や共同化などを検討する場として、兵庫県生活排水効率化推進会議(会長・濱浩二兵庫県県土整備部土木局長)を設立した。県内で進む統廃合などの状況や、推進会議の今後の取り組み、動きなどをまとめた。



◆統廃合計画の現状

2017年7月末現在で、県内市町、事務組合が供用している公共下水道、農業集落排水、漁業集落排水、コミュニティプラントなどの処理施設は568施設。主な内訳は、公共下水道が136施設、農業集落排水が312施設など。現在、各市町で統廃合の検討や統合事業が進められており、将来的には360施設(公共下水道126施設、農業集落排水166施設など)に統合する考えだ。しかし、この統廃合は、いずれも市、町のエリア内のみの計画となっている。



◆推進会議の目的

兵庫県生活排水効率化推進会議は、改正下水道法で創設された協議会制度を活用して設立された全国4例目の組織。

国土交通省近畿地方整備局、兵庫県県土整備部土木局下水道課など6部局、神戸市など県内41市町と播磨高原広域事務組合を構成員とし、オブザーバーとして兵庫県まちづくり技術センター、兵庫県土地改良事業団体連合会、日本下水道事業団が参加。統廃合、広域化、共同化に関する情報提供や県全域で検討すべき事項などを協議していく他、「行政界を超えた統廃合検討部会」と「流域編入検討部会」の2部会を設けて実現可能性などを検討していく。



◆検討部会の具体的な取り組み

「行政界を超えた統廃合検討部会」では、市町のエリアを超えた施設統廃合について、検証地区を抽出。廃止側、受け入れ側の双方に利益があることを前提とし、効果と課題、実現可能性を検討する。当面は、いずれも近接市町で農業集落排水を下水道事業に統合する2案、コミュニティプラントを下水道事業に統合する1案、公共下水道事業同士を統合する1案の計4案、4地区について検討する。また4地区以外で検討を希望する市町があれば適宜追加する。さらに維持管理や事務の共同化など、ソフト面での連携についてもモデルケースを抽出し、検討する。

「流域編入検討部会」では、人口減少社会においても流域下水道のポテンシャルを最大限発揮するため、施設や資金の大幅な増設を伴わない条件で新規参入市町を受け入れる方法を検討。流域区域拡大について、人口減少が懸念される加古川上流流域下水道で、多可町をモデルに、新規参入の実現可能性を検討する。

また国土交通省の「下水道事業における補完体制の構築による執行体制強化方策検討業務」のモデル地区として選定を受け、検討で得られた効果や課題を他流域の検討にも反映させる。



◆設立総会

8月29日に開かれた兵庫県生活排水効率化推進会設立総会で、会長に就任した濱浩二兵庫県県土整備部土木局長は、「人口減少による使用料収入の減少、施設の老朽化、専門職員の不足などにより施設の経営環境は厳しさを増している。県民生活に密着した重要なインフラである生活排水処理施設の持続性を高める取り組みを進めたい」とあいさつ。また来賓として出席した国土交通省水管理・国土保全局下水道部下水道事業課の石井宏幸事業マネジメント推進室長は、人口減少、施設の老朽化など生活排水処理事業は厳しい環境で、転換期にあると指摘。「民間事業のようなM&Aとは単純に比べることはできないが、下水道などの広域化、共同化は今後強く求められている。2018年度予算編成においても、広域化は主要なテーマだ」と説明した。

さらに協議会制度を活用した組織としては、大阪府、埼玉県、長崎県に次ぎ、兵庫県は全国4番目の発足だが、「市町の域を超えた広域化、共同化を盛り込んでいるのは全国初。この事例が全国のモデルになるように国土交通省としても支援したい」と述べた。




設立総会のようす



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兵庫県内 市、町の取り組み状況





 下水道ストックマネジメントは、下水道を資産として捉えて、下水道施設の状態を客観的に把握しながら評価し、中、長期的な資産状態を予測するとともに、予算制約を考慮して下水道施設を計画的、効率的に管理する手法。国土交通省は支援制度を設けて各自治体に導入を促している。兵庫県内の市、町の取り組み状況などを調べた。



◇兵庫県内の状況

県内の41市町のうち、17年度に計画策定や実施方針策定などを行うのは半数程度。17年度中に計画策定を終えるのは、さらにその半数程度だ。

近畿圏の他府県に比べて取り組みが遅いと感じるかもしれないが、大阪府の状況と比較すると、大阪府内43市町村のうち、すでに計画策定済みは岸和田市、河内長野市のみ。17年度内に策定するのは箕面市、富田林市、豊中市、高槻市、八尾市、東大阪市という状況だ。一概に兵庫県内の取り組みが遅いとはいえないようだ。



◇課題

兵庫県には、他府県に比べて県域が広い、農業・漁業集落排水事業による汚水処理区域が多い、県による流域下水道事業の区域が他府県よりも狭いなどの課題がある。県内市町は、管渠、処理施設について、それぞれストックマネジメント計画を策定しなければならない点が負担となる。このような中でも、20年度までには大部分の市町が計画策定を終える見通しだ。



◇下水道施設の全国的な状況

下水道管路の総延長は全国で約47万キロ、処理場数は約2200カ所ある。国土交通省の調べでは、管路敷設後の経年劣化などを原因として、2015年度に約3300カ所で道路陥没が発生している。

管路による道路陥没事故防止、処理場の老朽化による機能停止を未然に防止するためにも、下水道ストックマネジメント計画を策定し、管路や処理施設の計画的な維持管理を早急に進めることが不可欠だ。計画に基づき行われる長寿命化、改築更新についても、コスト縮減、交通への影響や騒音・振動などに配慮した工法の重要度もさらに高まる。



クリックで下図を拡大↓↓↓






兵庫県内 市、町の下水道ストックマネジメント計画の状況



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大阪府 3流域下水道事務所の事業展望





【北部流域下水道事務所】 福森 一雄 所長

〜ストックマネジメントの充実、強化を図った下水道事業を目指す〜





福森所長



 北部流域下水道事務所は、淀川以北の猪名川流域、安威川流域、淀川右岸流域の3流域下水道事業を所管する。管内の北大阪地域は比較的早い時期から下水道整備に着手したため、下水道普及率は2016年度末で99.7%と、大阪市域を除けば府内で最も高いレベルに達している。

近年は老朽施設の改築・更新が急務となっており、本格的な維持管理時代に対応した事業の推進が課題となっている。

17年度は、猪名川流域下水道の原田水みらいセンターで、継続中の汚泥処理施設や受変電設備などの更新工事、塩素混和池の増設工事、新規として監視制御施設の更新工事などを実施する。安威川流域下水道では、継続中の中央水みらいセンターおよび味舌ポンプ場の受変電設備の更新工事、新規として摂津ポンプ場の受変電設備更新工事などを実施する。





高槻MC雨水ポンプ



 淀川右岸流域下水道では、継続中の高槻水みらいセンターの汚泥処理施設、前島ポンプ場の雨水ポンプ設備の更新工事、さらには硫化水素ガスにより腐食した高槻茨木汚水幹線の管渠更生工事、新規として高槻水みらいセンターの雨水ポンプ施設の更新工事などを実施する。

今後、施設の老朽化が進み、改築更新時期を迎える施設が数多くあることから、突発的なトラブルを防止するため、点検整備内容等の見直し改善、さらなる長寿命化対策としての部分修繕・部品ストック化、メーカー協力体制の構築などを進めるなど、ストックマネジメントの充実、強化を図った下水道事業を進める。










【東部流域下水道事務所】 小林 保 所長

〜普及促進から維持管理に移行  老朽化施設の着実な改築を〜





小林保



 淀川と大和川に挟まれた淀川左岸流域と寝屋川流域に五つの水みらいセンター(処理場)、19のポンプ場、約186キロの幹線管渠を整備し、管内の下水道普及率(2016年度末)は96.9%になっている。

これからは、普及促進を図るための整備から効率的な維持管理に軸足を移し、老朽化していく処理場、ポンプ場の施設を着実に改築していくことが喫緊の課題と考えている。

特に処理機能や揚排水機能の停止など、重大なトラブルを避けるため、電気設備や焼却炉、雨水ポンプの改築が重要と考えており、現在は、川俣水みらいセンターにおいて水処理電気設備の更新や焼却炉の長寿命化対策、茨田ポンプ場などにおいて雨水ポンプ設備の更新を進めている。





中央(一)増補幹線分水施設



 また、従来からのレベルアップ事業(雨水増補幹線の整備・合流式下水道の改善対策)については、現在、菊水ポンプ場で雨水沈砂池の貯まり水を排水洗浄するドライ化や、中央(一)増補幹線、中央北増補幹線の整備を進めている。

2017年度中には中央(一)増補幹線を寝屋川北部地下河川と接続させることで、貯留容量を約5万立方メートル増加、浸水被害の軽減区域を約1000ヘクタール拡大できる予定。

引き続き、府民の安全・安心を守り、ものづくりの街東部大阪の生活基盤を支えていくために、効率的な下水道事業の運営と安定した下水道サービスの提供に取り組んでいく。










【南部流域下水道事務所】 九野 康司 所長

〜効率的・効果的なストックマネジメントによる下水道事業運営を推進〜





久野康司



 南部流域下水道事務所は、大和川下流流域下水道、南大阪湾岸流域下水道の流域下水道事業と、南大阪湾岸流域下水汚泥処理事業を実施しており、今池・大井・狭山・北部・中部・南部の合計6カ所の下水処理場(水みらいセンター)を有する。

2016年度末の整備状況は、大和川下流流域の水処理能力が約32万立方メートル/日、下水道普及率は約93%、南大阪湾岸流域では約31万立方メートル/日で約77%となっている。





和泉泉大津幹線(一)の現場



 現在、幹線管渠では、南大阪湾岸流域で唯一の未施工区間である和泉泉大津幹線(一)の最上流部を施工しており、17年度末までの完成を目指している。流域下水汚泥処理事業では泉北送泥管の複条化工事を進めており、他の送泥管についても複条化を進めるべく検討を行っている。北部水みらいセンターでは老朽化した溶融炉から過給式流動床炉への更新工事を行っており、供用後は運転コストの低減を期待している。

また、大井水みらいセンターでは本年度、施設運用の根幹施設である監視制御設備の更新工事を発注し、機能維持を図っていく。

今後は、国交付金が大幅に増加するのは難しい状況の中、増加していく老朽化施設を着実に改築・更新し、継続的な下水道サービスが提供できるよう、計画的な点検整備・調査を行い、施設の状況を的確に把握し、効率的・効果的なストックマネジメントにより下水道事業運営を進めていく。



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大阪府内の下水道工事現場を見る





【施工:日立製作所】 上原 理弘 所長

〜寝屋川流域下水道なわて水みらいセンター水処理電気設備工事〜





上原理弘



 寝屋川流域下水道のなわて水みらいセンターでは、2018年春の供用に向けて、処理能力38000立方メートル/日の水処理設備の増設工事が進められている。このうち、日立製作所は電気設備工事を担当している。

工事受注後、監視制御設備や運転操作設備などのシステム設計、機器製作に取り掛かり、2016年10月から現場に入った。機械設備業者の据付状況を見て、電気設備作業を進めており、8月上旬の進捗率は約70%。18年1月の総合試運転に間に合うよう、11月から機械工事と機器単体試験を行うなど、作業は大詰めを迎えている。

上原理弘所長は、「大物の資材などの搬入口は1カ所しかないため、必要な資材は事前に使用予約を入れないと搬入ができない」と、工程管理の大変さを語る。





設置された電気設備



【概要】▽工事名―寝屋川流域下水道なわて水みらいセンター水処理電気設備工事

▽発注者―大阪府東部流域下水道事務所

▽場所―四條畷市砂4他▽工期―2015年12月24日〜18年5月31日

▽工事概要―機器製作、据付工事、既設機器機能増設、基礎・配管・配線・塗装・仮設工事、試験・調整など








【施工:中林・タナカJV】 永山 裕元 所長

〜寝屋川流域下水道中央(一)増補幹線(第7工区)下水道管渠築造工事〜





永山裕元



 既設管渠の能力不足解消を目的に「寝屋川流域下水道中央(一)増補幹線工事」が着実に進められている。第7工区では、既設流域下水道管で処理しきれない雨水を放流するため、導水接続管、分水、接続人孔などの築造工事が進められており、8月末時点の進捗率は92%を見込んでいる。

現場は、第二京阪や中央環状線が隣接している関係で施工敷地が非常に狭い。重機の操縦ミスが発生すると交通の妨げになるため「最新の注意を払い慎重に施工を進めている」。

同工事は、深さ30メートルを超える「No.1特殊人孔」を圧入オープンケーソン工法で築造する他、凍結工法を採用し、No.1特殊人孔と増補幹線を連結。さらに、中央環状線を横断する口径2400ミリの導水管を2連分敷設した。本来ならば浅い土被りであるため、開削工法での施工が望ましいところであったが、道路を通行止めにすることができない複雑な交通状況を踏まえ、泥濃式推進工を採用。敷設深度が非常に浅く難易度の高い工事となったが、路面のひび割れや道路陥没などに注意を払い、慎重な施工を進めていった。





上空から見た第7工区現場



 安全対策の一環として各ブロックに清掃担当者を配置。常に身の回りを清潔に保つことで安全意識の高揚を図っている。また、特別な取り組みとして建設業の未来を担う若者に魅力を発信するため、インターンシップを定期的に実施している。普通は、見ることのできない現場、多種多様な工法を採用している施工現場ということもあり、土木系の大学生などを中心に多くの生徒が訪れる。

永山裕元所長(現場代理人)は「さまざまな工法を活用する上に、施工現場のスペースが狭く苦労することも多い。安全第一でここまで進めることができている。引き続き安全意識を高め、完成を目指していきたい」と話す。



【概要】

▽工事名―寝屋川流域下水道中央(一)増補幹線(第7工区)下水道管渠築造工事

▽発注者―東部流域下水道事務所

▽工期―2015年3月17日〜17年12月8日

▽工事概要―No.1立坑工圧入式オープンケーソン(口径9600ミリ×高さ37.2メートル1カ所)、No.1特殊マンホール工、No.2分水マンホール工、No.0立坑工管きょ工(刃口推進工口径2400ミリ×1カ所、泥濃式推進工口径2400×2条)、補助地盤改良工(凍結、高圧噴射、薬液注入)、付帯工仮設工、既設人孔改良工×3カ所



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下水道管路維持管理に包括的民間委託





 地方公共団体における下水道事業で、機能・サービスの水準を持続的に確保していく課題に対し、多様なPPP/PFI手法の導入が解決策の一つと考えられている。そこで、国土交通省はモデル都市における先行事例を通じ、課題について検討し、その知見を、事業導入を検討する地方公共団体と共有し、同手法導入を促進する目的で検討会を設置している。検討会の2017年度参加者でもある堺市は、同市が取り組む官民連携の下水道管路施設維持管理「包括的民間委託」を先行事例の一つとして発表した。同市が持続的かつ安定的な下水道サービスを提供するために取り組む包括的民間委託について紹介する。



堺市は、政令指定都市で初めて14年度に下水道管路施設維持管理等業務の包括的民間委託を実施した。その背景には、経験豊富な職員の減少と技術継承の危惧、老朽化リスクや地震・浸水被害への対応など、限りある人材と財源を効率的に活用する必要に迫られたことがある。

13年度末まで堺市は、下水道管路の維持管理を3カ所の管理事務所で、直営で実施していた。陥没や詰まりなど事故が発生してから対応する事後保全業務に多くの時間を費やし、急激に進行する管路老朽化による業務増加を懸念。その対応策として、事故を未然に防ぐ予防保全型業務の必要性を強く感じていた。

そこで、清掃や修繕など応急対応業務を民間委託し、市は得られた情報を基に改築更新や計画的な保全業務を実施することを決断。官民の役割を明確化することで、市は事後保全業務の事務作業量を削減し、予防保全型業務に注力することを選択した。

14年度に官民連携の維持管理体制を構築し、3管理事務所のうち北区・東区・美原区を所管する管路施設維持管理等業務を、直営の美原下水道管理事務所から、美原下水道サービスセンターとして委託化し、16年度には、中区・南区所管の竹城台下水道管理事務所を竹城台下水道サービスセンターとして委託した。その際下水道サービスセンターとして、二つの委託化したエリアをカバーする体制も整えたが、残る堺区・西区については直営としての運営を残した。翌年の17年には市内全域をカバーすることを目的とした、下水道サービスセンターの中に直営エリアもふまえた体制を構築した。業務は地元業者を中心とした共同企業体が受注している。



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堺市






 センターへの委託業務は、従来の管理事務所の維持管理業務に管路、マンホールふた、水路調査などの計画的業務をパッケージ化。住民対応の他、調査など複数の業務を包括的に実施することで、維持管理情報を集約し、効果的・効率的な補修・修繕、長寿命化計画の作成につなげている。1件250万円未満の修繕業務も委託することで、契約手続きが省略でき事務処理を簡素化した。直営を1カ所残したのは、職員の技術力を確保するためだ。

具体的な業務概要は、下水道管路、水路、スクリーン、ゲート、雨水調整池、雨水ますなどが対象で、マンホールポンプと雨水調整池の機械電気設備は対象外。

業務内容は▽計画的点検・清掃等▽住民対応等▽補修・修繕▽雨水ます設置▽災害対応―の従来の維持管理業務に加え、新たに▽管路施設調査▽管路長寿命化計画策定▽マンホールふた調査▽水路施設調査―の調査業務などをパッケージ化し、業務の効率化を図った。

これにより、包括委託に関連する市職員業務は▽個別案件の対応例などノウハウの引き継ぎ▽地元調整の補助▽修繕工事などの施工方法の確認と金額の精査▽日々の清掃業務などの確認▽長寿命化業務に伴う調査資料内容の確認▽道路使用許可、占用関係の申請▽浚渫土砂などの処分立ち会い―などを行う。

市は、最初の美原下水道サービスセンターによる2年間の結果を受け、委託期間を2年から3年に延長し、効率的な維持管理に取り組みやすくした。業務内容では、下水道法改正に伴い、硫化水素による腐食発生懸念箇所の点検など新業務を追加。市の体制も、16年度に委託エリアを拡大したことから、委託業者との情報共有、連携を図るため、統括部署として市組織(下水道サービスセンター)を新設した。



包括的民間委託により、清掃業務などは住民対応から緊急清掃までワンストップ対応が可能となり、下水道BCPに基づく訓練や出前講座など多様な主体との協働による人材育成を実現できた。一方、課題として、委託後に大規模災害が発生していないため災害に備えた連携の不安、サービスレベルを維持していくため市職員、受託業者のノウハウを継承していく仕組み作りを挙げている。

市は、下水道事業に携わる職員数が年々減少する中、業務効率化と質の向上のためには、今後も民間と連携して下水道事業を執行していく必要があるとしている。



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(2017/9/8)


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