林業で生きている人たちは、懸命に担い手を欲している。それでも、建設業の参入となると話は別だ。林業の施業者(林業事業体)は最近の林業への労働移動をめぐる国の動きや、建設業の参入の可能性をどのようにみているのか。
静岡県島田市の大井川中・上流域で施業するヤナザイの山内秀紀取締役森林管理部長(41歳)に聞いた。以下はその一問一答だ。
Q1.建設業は林業の担い手になれると思うか。
「建設業が参入してもやっていける可能性はある。除伐・間伐・下刈り・植栽・伐倒はできるだろう。でも造材は知識が不可欠だし、何より林業の仕事には地権者との信頼関係が必要。それまでより所得がずっと下がることも覚悟しておく必要があるだろう。日給月給の林業事業体が多く、1カ月の実働日数は20日程度、30歳の平均年収は300万円程度。ケガや労災も多い仕事だ」
Q2.(もし、建設業が林業の担い手になろうとした場合)建設業には、どのような準備や教育・訓練が必要だろうか。
「木を大事に扱えることが重要。まずは林業の奥深さを学ぶ必要がある。木から建築材を造る過程や木の出し方、地形の見方など覚えなければならないことは多い」
Q3.建設業が持つスキルは林業の施業に役立つ、という見方があるが。
「路網整備については重機操作など、熟練技術は活用できる。林道工事などの測量図や施工管理がきちっと整った工事にはなれているが、『林業用作業路などの図面も管理方法も決まっていない条件の下、現場(森林など)での判断が要求される開設作業はできない』と言った建設業者がいたという話を聞いた。境界確定は素人には無理だ。一本の木がどちらの所有なのかでもめる場合もあるし、裁判になった事例さえあるほどだ」
自身が脱サラしてまで林業の世界に飛び込んだ山内取締役の林業への思いは深く、危機感も強い。
「担い手は必要。だが、山から木材を切り出せるようになればいい、というものではない。需給バランスが崩れ、材価がさらに下がってくる恐れがある。新規参入を助長するだけでなく、需要を増やしていかなければ、現在の木材量すら過剰になる可能性がある」と心配する。