林業に組織的に参入しようとしている建設業はまだまだ少ない。
そうした中、参入のケーススタディとなるのが、全国で初めて業界単位で林業に参入した「ひだ林業建設業森づくり協議会(会長・菅沼武飛騨市森林組合代表理事組合長)」だ。
飛騨地方は埼玉県の行政面積に匹敵する森林面積(3600平方`)を抱える国内有数の林産地。2008年5月に設立した協議会の目的は、建設業のもつ機械や技術者の活用による、環境保全と経済活動を両立させる、持続可能な林業経営システムの確立。建設業の雇用の安定と地域の林業の担い手不足の解消が狙いだ。
飛騨でのこれまでの取り組みによって、多くの経験値が得られ、林業に建設業が参入する上での多くの課題が浮き彫りになってきている。
課題の一つは、建設業者が林業参入しても、林業事業体としての実績がないために、森林組合などのように補助対象事業者とはならないことだ。
建設業者が補助を受けるには、@建設業者が林業事業体となるA建設業者・森林組合などを含む協同組合を組織化する―の二つの方法がある。
しかし、事業経験のない建設業者には@の選択肢は考えられず、Aは今のところ具体的な事例がほとんどない状況。
このため、現行制度で建設業者が補助対象事業者になるためは、まず建設業者が森林組合などと共働する場や組織を創造することが必要で、そのための制度(枠組み)の創設が不可欠ということだ。
参入の障壁となっている既存の制度もある。
森林施業地の集約や境界確定には、何を置いても、まず最初に所有者を特定しなければならない。
所有者を特定する方法には、森林簿情報や土地台帳・公図情報の活用があるが、森林簿情報では正確な森林所有者情報は入手できない。所有者の委任状があれば開示を求めることはできるが、登記の不備も多く、現実には森林所有者の特定は極めて困難な状況だ。
最も正確な情報は市町村役場にある固定資産税課税台帳の情報と土地台帳情報を照合することだが、これらの調査には気の遠くなるような時間と労力、経費が必要になる。所有者の特定には、司法書士などをはじめとした有資格者の活用など、多様なスキルを活用できる仕組みと、経費の公的支援が求められている。
また、近年は地形改変も最小限に抑えられ、林地に優しい「低コスト林業」がうたわれているが、土地の改変を禁止する法律(砂防法など)に抵触する場合、低負荷な地形の改変であっても例外扱いにはならない。木材の効率的な管理・伐採・搬出には、路網や林道整備などに対する法の柔軟な運用や、場合によっては関係法令の見直しが必要だということも分かってきている。