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国土交通省 愛知県内事務所


地域経済のさらなる発展と安全・安心を支え続ける



 2015年度当初予算のうち国土交通省中部地方整備局の直轄事業への配分額は、前年度比3.2%減の2869億5000万円だった。道路分野では、名古屋環状2号線(名古屋西〜飛島)の建設で231億円を配分した。

また、市町村を巻き込んだ維持管理の取り組みも本格化。河川分野では、全国的に頻発する豪雨に備えた治水対策が急務となっている。

愛知県内の河川・国道関係5事務所が予定している15年度事業の概要を展望する。



名古屋国道事務所




【名国】島村喜一所長



  名古屋国道事務所は、愛知県内の主要国道である1号、19号、22号、23号、41号、153号、155号および302号の8路線(管理延長437`)に関し、道路利用者への安全かつ快適な道路サービスを安定して提供できるよう、維持・修繕、防災対策および交通安全対策を中心に事業を展開している。また、地域ごとの課題に応じた道路空間や沿道環境の整備、道路管理に関する膨大な情報の収集と利用者への提供、道路の適正利用に向けた指導・取り締まり・許認可事務を実施している。

愛知県は交通事故死者数が全国最多であり、安全性の向上は切実な課題である。こうした中で、主要幹線道路における事故多発交差点などでの事故対策に加え、生活道路での事故対策に注力していくことも重要だ。

一方、近年では、交通事故データに加え、プローブデータや地理空間情報などのいわゆるビックデータを活用した分析も進んでいる。生活道路の自動車抑制対策とともに、幹線道路の事故対策や交通円滑化対策をパッケージで考え、効果的な面的交通安全対策を講じることが可能となった。

このため、複数の道路管理者が協力・連携し対策を進める「包括的交通安全対策」に新たに取り組む。今年度は、まずモデル的な地区を抽出し、年度後半から具体的な対策が実施できるよう積極的な調整を進めていく。

また、大規模災害時に道路管理者、関係企業、道路利用者間で情報共有できる安価でオープンな仕組みを実現するため、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の活用を検討していく。

改築事業では、名古屋市西部の国道1号西部環境対策(中川区下之一色町、延長0・5`)について、4車線拡幅事業を15年度に完成する予定である。また、国道1号震災橋架け替え(熱田伝馬橋・瑞穂区桃園町〜熱田区神宮、延長0・8`)、国道153号伊勢神改良(豊田市明川町〜小田木町、延長2・4`)について、本線迂回道路などの工事を進める。さらに、国道23号環境対策について、名古屋南部訴訟の和解条項を履行する沿道環境改善事業を行っていく。

このほか、円滑な道路交通と道路の防災・減災の強化を図るため、電線共同溝事業などを進める。また、14年度、153号道の駅「どんぐりの里いなぶ」と23号道の駅「とよはし」(仮称)が、それぞれ重点、重点候補の道の駅に選定された。地元地域に協力して個性豊かな空間づくりを支援していく。






包括的交通安全対策のイメージ_1






 維持修繕事業では、道路施設が老朽化する中、予防保全の観点も踏まえた道路の点検を含め、橋梁の補修・補強や舗装などの維持・修繕事業を進めていく。また、愛知県内全ての道路管理者が本格的な道路メンテナンスサイクルを持続的に回す仕組みを構築するため、愛知県道路メンテナンス会議を開催する。さらに、橋梁点検講習会の拡充など技術支援も実施していく。

今後とも、地域や道路利用者の皆さまに安全・安心してご利用いただける道づくりに積極的に取り組んでいく。引き続き、皆さまのご理解とご協力をお願いしたい。



【主要事業費の内訳】

15年度事業費は68億2000万円。

▽改築事業―29億7100万円▽交通安全事業―31億6900万円

▽共同溝・電線共同溝―6億8000万円 ※維持修繕は除く





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愛知国道事務所




【愛国】所長



 愛知国道事務所は、国道1号、41号、302号、近畿自動車道伊勢線の4路線約74`と、国道302号の東部共同溝(春日井市〜名古屋市)約24`の整備を担当している。

2014年度に引き続き、名古屋市を中心として放射・環状の道路網を形成する国道1号、国道41号名濃バイパス(BP)、国道302号名古屋環状2号線の改築・共同溝整備・震災対策、近畿自動車道伊勢線の名古屋西ジャンクション(JCT)〜飛島JCT(仮称)の整備を行う。また、国道22号をはじめとした渋滞箇所の継続的な調査と、渋滞の緩和・解消に向けた取り組みを推進する。

15年度の主な事業内容は次のとおり。

近畿自動車道伊勢線は、橋梁上下部工事、移転補償、橋梁設計および水文調査などを推進する。

国道302号は、西南部・南部U区間について、改良工事、橋梁上下部工事、橋梁床版工事、遮音壁設置工事などを推進する。東北部区間については、暫定踏切の除去に向け、鉄道立体化を推進する。西北部区間については、暫定踏切の除去に向け、関係機関との調整を推進する。東南部区間については、共同溝工事などを推進する。






愛知国道






 蟹江町内の国道1号日光大橋架け替え事業は、改良工事、舗装工事、水文調査、移転補償などを推進し、15年度に新橋への交通の切り替えを目指す。

国道41号名濃バイパスは、改良工事および構造物等設計を推進する。

当事務所は、尾張・西三河地域の人・もの・情報の交流を支える道づくりをミッションとしている。今後とも道路を利用する皆様や地元経済を支える皆様に喜んでいただけるよう、事務所職員一丸となり精一杯努力する所存だ。引き続き御理解と御協力をよろしくお願いしたい。



【主要事業の内訳】

15年度の事業費は324億4000万円。

▽改築事業費―303億1800万円▽共同溝事業費―21億2200万円





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名四国道事務所




【名四】横山幸泰所長



 名四国道事務所は、国道23号名豊道路の各バイパス(BP、豊橋東・豊橋・蒲郡・岡崎)、国道153号の各BP(豊田西・豊田北)、国道155号豊田南BPの改築事業を担当している。

2014年度は、岡崎BPの西尾東IC〜藤井IC間(約4`)において橋梁工事がおおむね完了した。引き続き、床版および舗装工事に着手する。また、3月31日に豊橋BP前芝インターチェンジ(IC)〜豊川為当IC間約4・2`のJR東海道本線跨線部の側道整備が完了した。

15年度の主な事業内容として、23号名豊道路では、岡崎BPの西尾東IC〜藤井IC間(約4`)で、完成4車線開通を目指し工事を推進する。今後、車線切り替えを行った後で、中央分離帯などを施工し、4車線で開通させる。また、蒲郡BPの豊川為当IC〜蒲郡IC間(約9・1`)では、暫定2車線開通を目指し、用地取得と調査設計、工事を進める。なお、14年度には、トンネル工事(五井地区)に着手している。豊橋東BPと豊橋BPでは、調査設計を行う。






国道23号岡崎バイパス






 豊田北BPでは、豊田市扶桑町〜同市逢妻町間(約5・7`)で調査設計、用地取得および工事を推進する。なお、矢作橋においては14年度に下部工に着手している。153号豊田西BPでは、調査設計を行う。155号豊田南BPでは、豊田市東新町〜同市逢妻町間(約3・7`)で用地取得および工事を推進する。

名四国道事務所では、三河地域周辺における主要幹線道路の交通混雑緩和と通過交通の円滑化を図り、日本の経済を支える「ものづくり拠点」である三河地域の物流を支えるとともに、地域活性化に資する道づくりを目指して事務所一丸となって取り組んでいく。引き続き皆さまのご理解とご協力をお願いしたい。



【主要事業費の内訳】

15年度事業費は94億4400万円。

▽名豊道路改築事業費―49億円8200万円。

▽豊田3BP改築事業費―44億6200万円





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庄内川河川事務所




橋伸輔



 庄内川河川事務所は、岐阜県東濃地方から愛知県尾張地方を流下し、名古屋市から伊勢湾に注ぐ土岐川・庄内川の河川改修・維持管理、ダム管理を所管している。

2015年度は、昨年度に引き続き、庄内川水系河川整備計画に位置付けられた河川改修などを推進する。具体的には、東海豪雨時の流量相当の流下能力確保を目的とした浚渫・堤防整備(嵩上げ、質的強化)・枇杷島地区特定構造物改築事業(堤防整備)・環境整事業(水辺整備)および地域に開かれた小里川ダムの管理などを実施する。

下流部の浚渫については、打出地区(明徳橋〜横井大橋)において事業を本格化している。今年度は一色大橋から新前田橋の間の土砂を浚渫する予定。これに伴い必要となる低水護岸の整備も併せて実施していく予定だ。

枇杷島地区特定構造物改築事業については、枇杷島橋上流の左岸堤防(名古屋市西区)の堤防盛土に着手する。

堤防整備については、中流部右岸山田地区(名古屋市西区)の用地買収を継続するとともに、左岸志段味地区(名古屋市守山区)において堤防盛土に着手し、今年度完了する予定となっている。






打出地区浚渫事業






 11年9月の台風15号により内水被害が発生した岐阜県多治見市青木地区では、支川脇之島川の付替工事に着手する。

環境整備事業では、上流部の土岐川(多治見市及び土岐市)において、生物とのふれあいの場であるレキ河原の再生を実施する。

当事務所では、今後とも名古屋市他流域市町の皆さまの安全確保のため、治水事業の推進に取り組んでいくので、ご理解とご協力をお願い申し上げる。



【主要事業の内訳】

15年度事業費は46億3981万円。

▽一般河川改修―32億3900万円▽特定構造物改築事業(枇杷島地区)―1億8100万円

▽河川維持修繕費等―6億4350万円▽堰堤維持費―4億6145万円▽総合水系環境整備事業費―8970万円





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豊橋河川事務所




【豊橋】関健太郎



 豊橋河川事務所は、愛知県東三河を主な流域とする「豊川」と、同県西三河を主な流域とする「矢作川」の河川改修、維持管理、環境整備などを担当している。

豊川については、2001年に策定された「豊川水系河川整備計画」に基づき、戦後最大規模の1969年洪水を安全に流下させるため、堤防施設整備などの治水対策を推進する。牛川地区の築堤や護岸整備のほか、霞の対策として開口部および支川対策事業についての検討を進める。また、維持管理計画に基づいた着実な維持管理に努め、豊川放水路では老朽化した護岸の修繕・補修を実施する。さらに、上流部東城地区において、河道内の樹木を伐採。管内全域では堤防維持管理と老朽化した排水機場などの管理施設の修繕を実施する。

矢作川は、2009年に策定された「矢作川水系河川整備計画」に基づき、戦後最大規模の00年に発生した東海(恵南)豪雨時の洪水を安全に流下させるため、堤防施設整備などの治水対策を推進する。13年から工事に着手した「矢作古川分派施設」について、15年末の完成に向け事業の進捗を図るほか、これまでの堤防緊急点検により早急な対策が必要と判定された中流地区において堤防整備を実施する。また、県道高橋の架け替えに併せ堤防漏水対策を実施し、15年前半までに豊田地区一連区間の堤防整備を完了させる。

維持管理においては、維持管理計画に基づいた計画的な維持管理に努め、治水機能の確保と快適な河川空間確保のため、老朽化した施設の補修、修繕、河道内樹木伐採を中流部で実施するほか、管内全域での堤防維持管理を行う。






豊川の河口付近全景






 また、河口部においては、矢作川の多様な生態系、良好な河川環境の保全のため、ヨシ原再生事業を継続して実施し、良好な水辺環境の復元に努めていく。市民、識者、行政機関が連携協働し流域全体を向上させる「矢作川流域懇談会」と共に、地域のニーズの把握、活力ある地域づくりの推進を目指し連携強化を進めていく。

三河地域の安全安心の確保また、親しみを持たれ愛される河川環境の構築に向け、的確な河川状況の把握と治水事業の推進、有事を想定した危機管理に取り組んでいくので、ご理解ご協力をお願いする。

【主要事業の内訳】

15年度総事業費

豊川11億5000万円

矢作川20億6800万円

◆豊川◆

▽河川改修事業費4億1400万円▽河川維持修繕事業費5億7700万円

▽環境整備事業費4700万円▽直轄堰堤(えんてい)維持費6100万円

▽その他5000万円

◆矢作川◆

▽河川改修事業費11億6400万円▽河川維持修繕事業費5億4200万円

▽環境整備事業費3400万円▽その他3億2700万円





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神通川水系砂防事務所




高橋裕史



 国土交通省北陸地方整備局神通川水系砂防事務所は、岐阜県と富山県の両県にまたがって流れる一級河川神通川右支川高原川流域で砂防事業を展開する。管内は新猪谷ダム上流の面積761平方`。神通川の源流部は3000b級の山々が連なる北アルプス連峰。そのため植生が乏しく日本有数の山地荒廃地であり、下流域では流出土砂による幾多の災害が発生した。神通川上流域は中部山岳国立公園の一角をなす豊かな自然があり、多くの観光客が訪れる。そのため土砂災害防止と合わせ、一層の発展を支援する砂防事業の新たな取り組みが行われている。高橋裕史所長に2015年度の事業概要について聞いた。



 ――15年度の予算規模を伺いたい。

「業務取扱費を除き16億2900万円で前年度当初比で1・01倍。内訳は砂防事業費が8億4000万円、火山砂防事業費が7億8900万円となっている。砂防促進協力会や地域の皆さまのご理解とご支援で、14年度予算に上乗せした予算が確保されたことに感謝している」



 ――主要事業については。

「大規模事業として継続している『新穂高渓流保全工』では恵橋架け替えが完了し、15年度は仮設橋を撤去し、この区間で床固工や護岸の整備を促進する。同じく『平湯川砂防樹林帯』では、村上橋架け替えで下部工に着手したのに続き上部工を発注する」



 ――基本方針については。

「『土砂流出対策』『流木対策』『大規模土砂災害等対策』『火山噴火減災対策』を柱に円滑な事業推進に取り組んでいく。土砂流出対策としては、高原川の上流域は北アルプスに代表される高山性の地形地質、焼岳をはじめとする火山の噴出物が堆積し土砂流出が著しい。新穂高渓流保全工や小鍋谷第11号上流砂防堰堤(えんてい)、江馬東町砂防堰堤群など、住民の資産などが集中する地域で事業を推進する。また、施設の長寿命化などを目的とした改築を進めるほか、施設に変状が出ている黒谷第1号砂防堰堤の左岸地滑りの調査などを進める。高原川流域砂防施設改築では、新規に中尾第4号砂防堰堤改築工事に着手する。流木対策としては、神通川下流域の被害軽減に向け、引き続き跡津川砂防堰堤群(コンクリートスリットタイプ)、高原川流木対策工などを推進する。大規模土砂災害等対策では、跡津川上流砂防堰堤など砂防設備の整備促進や、大規模土砂災害対策連絡協議会による情報共有など、広域かつ他機関との連携を強化することで住民の生命・財産を守る。火山噴火減災対策としては、火山噴火対策協議会を通じて効果的な緊急減災対策を検討・推進していく」



 ――課題解決に向けた事務所の取り組みについて。

「大規模な土砂災害などが発生した場合、人命を守ることや速やかな復興が重要だ。焼岳の火山噴火対策として火山噴火対策協議会が以前より活動しており、当事務所では火山泥流や火砕流のシミュレーション結果などを提供してきた。また、乗鞍岳や白山などの火山噴火対策協議会にも参加し、支援体制を検討していきたいと考えている。土砂災害に関しては、災害の発生とその状況に係る情報や交通規制の情報、災害対応状況などの情報を共有することで、各機関がさらに円滑な災害対応・支援が可能となる」

「各機関がどの時点でどこからどのような情報を入手するか、またどのような情報が必要かなどを話し合い、その情報をいかに迅速に共有するかなどを検討するため、14年12月に『大規模土砂災害対策連絡協議会(会長・高山市長)』が設立された。なんとしても人命を守ること、被害を最小限にとどめること。速やかな復興に向けて役立つ仕組みとして期待している」

「適正・健全な建設業の育成、工事の生産性向上に向けた環境整備は発注者の責務。現場の課題を把握し問題点を早期に解決するためには、現場の声を幹部職員が直接把握する取り組みが必要だ。受注者は経営者としての立場と現場技術者の立場がある。それぞれから声を聞くため、受発注者懇談会や安全研究発表会、砂防施工研究会などを開催してきた。それらを踏まえて、砂防工事を取り巻くさまざまな課題や問題点が抽出された。事務所としての課題の対応に加えて砂防工事の全国的な課題などを機会を捉えて指摘していきたい」



 ――神通川上流において社会資本がもたらしてきた効果は。

「1947年の米軍撮影の航空写真と10年撮影の航空写真を比較してみると、地域経済の発展が一目で理解できる。砂防・河川・道路など社会資本の整備が地域経済に果たしてきた役割、効果の一つとして地域の皆さまに説明していきたい」

「地域の現状としては、ピーク時に比べて温泉宿泊客数は半減し60万人で横ばいから、やや下降気味である。そうした中で、安房トンネルの車両通過台数は100万台前後で開通以来横ばいをキープしている。地域への入り込み客数は宿泊客数の2倍以上と考えられ、いかに地域に滞在してもらうかが課題ではないか。そのため地域では、砂防施設を活用し四季を通じたイベントを開催するなど、さまざまな工夫をしている。利用者の安全確保も重要な課題で、地域の皆さまや行政機関で安全利用に関する連絡会が設立した。日常の施設点検や利用者への声掛けなどそれぞれの役割などの議論を進め、より安全な施設利用に向け、できることから行動する」

「業務取扱費を除き16億2900万円で前年度当初比で1・01倍。内訳は砂防事業費が8億4000万円、火山砂防事業費が7億8900万円となっている。砂防促進協力会や地域の皆さまのご理解とご支援で、14年度予算に上乗せした予算が確保されたことに感謝している」



 ――主要事業については。

「大規模事業として継続している『新穂高渓流保全工』では恵橋架け替えが完了し、15年度は仮設橋を撤去し、この区間で床固工や護岸の整備を促進する。同じく『平湯川砂防樹林帯』では、村上橋架け替えで下部工に着手したのに続き上部工を発注する」



 ――基本方針については。

「『土砂流出対策』『流木対策』『大規模土砂災害等対策』『火山噴火減災対策』を柱に円滑な事業推進に取り組んでいく。土砂流出対策としては、高原川の上流域は北アルプスに代表される高山性の地形地質、焼岳をはじめとする火山の噴出物が堆積し土砂流出が著しい。新穂高渓流保全工や小鍋谷第11号上流砂防堰堤(えんてい)、江馬東町砂防堰堤群など、住民の資産などが集中する地域で事業を推進する。また、施設の長寿命化などを目的とした改築を進めるほか、施設に変状が出ている黒谷第1号砂防堰堤の左岸地滑りの調査などを進める。高原川流域砂防施設改築では、新規に中尾第4号砂防堰堤改築工事に着手する。流木対策としては、神通川下流域の被害軽減に向け、引き続き跡津川砂防堰堤群(コンクリートスリットタイプ)、高原川流木対策工などを推進する。大規模土砂災害等対策では、跡津川上流砂防堰堤など砂防設備の整備促進や、大規模土砂災害対策連絡協議会による情報共有など、広域かつ他機関との連携を強化することで住民の生命・財産を守る。火山噴火減災対策としては、火山噴火対策協議会を通じて効果的な緊急減災対策を検討・推進していく」



 ――課題解決に向けた事務所の取り組みについて。

「大規模な土砂災害などが発生した場合、人命を守ることや速やかな復興が重要だ。焼岳の火山噴火対策として火山噴火対策協議会が以前より活動しており、当事務所では火山泥流や火砕流のシミュレーション結果などを提供してきた。また、乗鞍岳や白山などの火山噴火対策協議会にも参加し、支援体制を検討していきたいと考えている。土砂災害に関しては、災害の発生とその状況に係る情報や交通規制の情報、災害対応状況などの情報を共有することで、各機関がさらに円滑な災害対応・支援が可能となる」

「各機関がどの時点でどこからどのような情報を入手するか、またどのような情報が必要かなどを話し合い、その情報をいかに迅速に共有するかなどを検討するため、14年12月に『大規模土砂災害対策連絡協議会(会長・高山市長)』が設立された。なんとしても人命を守ること、被害を最小限にとどめること。速やかな復興に向けて役立つ仕組みとして期待している」

「適正・健全な建設業の育成、工事の生産性向上に向けた環境整備は発注者の責務。現場の課題を把握し問題点を早期に解決するためには、現場の声を幹部職員が直接把握する取り組みが必要だ。受注者は経営者としての立場と現場技術者の立場がある。それぞれから声を聞くため、受発注者懇談会や安全研究発表会、砂防施工研究会などを開催してきた。それらを踏まえて、砂防工事を取り巻くさまざまな課題や問題点が抽出された。事務所としての課題の対応に加えて砂防工事の全国的な課題などを機会を捉えて指摘していきたい」



 ――神通川上流において社会資本がもたらしてきた効果は。

「1947年の米軍撮影の航空写真と10年撮影の航空写真を比較してみると、地域経済の発展が一目で理解できる。砂防・河川・道路など社会資本の整備が地域経済に果たしてきた役割、効果の一つとして地域の皆さまに説明していきたい」

「地域の現状としては、ピーク時に比べて温泉宿泊客数は半減し60万人で横ばいから、やや下降気味である。そうした中で、安房トンネルの車両通過台数は100万台前後で開通以来横ばいをキープしている。地域への入り込み客数は宿泊客数の2倍以上と考えられ、いかに地域に滞在してもらうかが課題ではないか。そのため地域では、砂防施設を活用し四季を通じたイベントを開催するなど、さまざまな工夫をしている。利用者の安全確保も重要な課題で、地域の皆さまや行政機関で安全利用に関する連絡会が設立した。日常の施設点検や利用者への声掛けなどそれぞれの役割などの議論を進め、より安全な施設利用に向け、できることから行動する」



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