愛知県では、「あいちビジョン2020」を14年3月に策定した。その中で尾張地域は海抜ゼロメートル地帯や大都市という地域特性を踏まえ災害に強く安心・安全に暮らせる地域づくり≠していく必要がある。また、14年12月には地震から県民の生命・財産を守る強靱(きょうじん)な県土づくり≠目標として「第3次あいち地震対策アクションプラン」が策定された。これを踏まえて愛知県尾張農林水産事務所では、15年度どのような整備を行っていくのか。足立哲也所長に事業概要を聞いた。
―15年度の予算状況について。
「当事務所の15年度県営事業費は、14年度からの繰越分を含め27億0283万円で、このうち農業農村整備事業費が25億4513万円、治山事業費が1億5770万円となっております。農業農村整備事業の主な内訳は、たん水防除事業などの防災関係が全体の78%、水環境整備事業などの土地改良関係が22%と防災のウエートが大きくなっております。また、治山事業費の主な内訳は、予防治山事業をはじめとする林野関係公共事業費が64%、小規模治山事業費などの県単独事業が36%となっております」
―15年度の主要事業の内容は。まず防災関係について。
「近年多発するゲリラ豪雨や地震などに備えた防災・減災のための農業用施設の耐震化・更新整備や治山事業が喫緊の課題であると考えております。たん水防除事業や地盤沈下対策事業、緊急農地防災事業により排水機場の新設又は改修を行っております。たん水防除事業では領内川城西地区はじめ6地区を実施しており、三宅川3期地区は、今年度完了予定で、二俣地区及び領内川右岸北部地区は、今年度から着手します。また農業用水利施設が致命的な損傷を被る前に機能保全対策を施し、施設の長寿命化を図るため、農業水利施設保全対策事業で名古屋地区はじめ9地区にて排水機の整備などを行っております。用排水施設整備事業萱津地区や畑地帯総合土地改良事業般若2期地区、国営附帯県営農地防災事業大江川上流2期地区、緊急農地防災事業千間堀川地区では排水路の改修を行っております」
「地震時の安定性が不足している農業用ため池については、耐震性の向上を図るために堤体補強などを行う防災ダム事業や緊急農地防災事業にて、築水池地区はじめ14地区を実施しております。また当管内には、瀬戸市始め8市1町において市街地に近接した森林が存在しております。こうした森林が台風や集中豪雨などの天然現象によって発生した崩壊地、荒廃渓流で、荒廃の拡大または土砂などの流出により、現に下流の住宅や道路等に被害を与え、または被害を与える恐れがある場所において、森林の復旧や森林の荒廃をあらかじめ予防するため、治山事業を実施しております。 今年度の当初予算では、公共事業6件、県単独事業4件の計10件の治山事業を実施する予定であります。この他にも、あいち森と緑づくり事業では、間伐の推進を図る人工林整備2件、放置されている里山の再生を図る里山林整備1件の計3件を実施し、森林の整備・保全に努めてまいります」
―土地改良関係は。
「特定農業用管水路特別対策事業扶桑地区では石綿セメント管を塩化ビニール管などに取り替えを行っております。また水質保全対策事業合瀬川地区では生活雑排水などの流入に伴う水質汚濁による農業被害を防止するために、用水路の新設を行っております。水環境整備事業岩藤新池1期地区はじめ8地区では、農業水利施設の有する水辺空間を利活用し、豊かで潤いのある快適な生活環境の整備を行っております」
―今後の事業展開は。
「尾張地域は都市近郊にため池が多くあるため、人家や公共施設への影響のあるため池から順次、耐震整備を進めてまいります。また排水機場についても耐震性能を持った構造に更新していく予定であります。今後とも地域住民の安全・安心の確保を図っていくために、施設の新設・改修に必要な予算を確保し、各種防災事業を着実に進めていく必要があると考えております」