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三重県・事業展望


三重県・15年度事業展望



桑名建設事務所




真弓明光所長



 桑名市、いなべ市、木曽岬町、東員町の2市2町を管轄する三重県桑名建設事務所は、東海環状自動車道の整備に伴う道路改良、南海トラフを震源域とした地震に対する海岸部の耐震化や液状化対策、いなべ市内の山間部で整備を進める土石流対策を主要事業とし、バイパス整備や橋梁耐震補強、員弁川の河川改修などを継続して進めている。2015年度の主要事業を4月に就任した真弓明光所長に聞いた。



 ――道路関係の重点事業について。

「主な道路事業としては、桑名大安線道路改良事業、多度長島線(中須橋)、都市計画道路桑部播磨線事業、主要地方道四日市員弁線バイパス(BP)道路整備などを進める」

「桑名大安線道路改良は国土交通省が整備を進めている東海環状自動車道東員インターチェンジ(IC)へのアクセス向上と四日市東員線との交差点部の渋滞緩和を目的に、クランクの解消と念仏大橋拡幅(右折車線設置)を行う計画で、現在、東員橋の架設を進めている。東員ICから四日市北ジャンクションの開通が15年度末に予定されており、この供用開始に合わせて、東員橋前後の取り付け道路と舗装を行う。全体の完成時期は16年度の予定」

「多度長島線(中須橋)は、国道258号へのアクセス道路となるが幅員狭小区間の解消と老朽橋の架け替えが目的。すでに中須橋の新橋の架設が完了しており、旧橋の下部工撤去と護岸工、左岸側取り付け道路の整備を予定している」

「桑部播磨線は桑名市西南部と伊勢湾岸道路朝日ICの供用で市街地化が進む朝日町、四日市市臨海地域とを結ぶ路線として計画され、計画当初は桑名市事業として整備を進めていたが、県が桑名市から事業を引き継いだ。この区間の整備については、桑名大安線道路事業、員弁川河川改修事業、桑部播磨線街路事業、桑名大安線交通安全対策事業の4事業を一体的に進めることから、桑部播磨線整備事業と総称し、整備を進めている。桑部橋周辺について、15年度は引き続き用地買収を進めるとともに、交通安全対策として歩道整備に一部着手する」

「四日市員弁線BPは、非常に狭隘(きょうあい)である区間のBPとして、いなべ市大安町大井田(国道365号)を起点とし、いなべ市員弁町大泉新田(国道421号)を終点とする延長約2100bの区間を整備する。BP区間は、国道365号から員弁川を渡り、いなべ総合学園付近を経て、三岐鉄道を跨線、国道421号を結ぶもので、国道365号から市道西方上笠田線(いなべ総合学園付近)までの延長約900b(橋梁部192b)を第1工区、同市道から国道421号までの延長約1200bを第2工区として整備する。15年度は、第1工区と市道取り付け道路の整備を継続する」



 ――橋梁の耐震補強は。

「15年度は東福永橋(橋長168b)、鎌田大橋(橋長121b)、新嘉例川橋(橋長59b)の下部工を補強するほか、福吉橋(橋長150b)の耐震設計と下部工の補強を計画している」



 ――砂防・河川事業について。

「砂防事業は、いなべ市藤原町の西之貝戸川と小滝川で、土石流が近年多発しており、国補通常砂防事業、災害関連緊急砂防事業、特定緊急砂防事業、激甚災害特別緊急事業により砂防堰(えん)堤の設置などに取り組んでいる。15年度は西之貝戸川で尾根掘削を継続し、小滝川で管理用道路を進める予定。このほか、青川砂防では新設した堰堤に土砂が堆積しており、継続して撤去を行う」

「河川事業では、延長3万6700bの員弁川が主要事業となる。近年、ゲリラ豪雨が頻発する中で、甚大な被害の発生が予想されており、対策として、下流の日の出橋から大安町宇賀川合流点までの延長1万6400bで築堤、樋門、河床掘削などに着手している。15年度は、桑部橋周辺の用地買収などを道路事業と連携して進める」



 ――海岸事業については。

「長島地区海岸(桑名市長島町浦安)は、北側は木曽川、南側は揖斐川・長良川に挟まれた典型的な輪中地帯であり、延長約1400bの海岸保全施設となっている。背後にはゼロメートル地帯が広がり、人家密集地区や大型レジャー施設、主要な幹線道路の国道1号、23号がある。耐震調査の結果、地震時に堤防下の地盤が液状化することが判明したので、07年度から海岸高潮対策事業として堤防補強を継続している。15年度は堤防の堤内(陸)側の耐震対策を行う」

「城南第一地区海岸(桑名市福岡町)は、揖斐川と員弁川に囲まれた輪中地帯。背後にはゼロメートル地帯の干拓地平野が広がっている。耐震調査の結果、地震時の液状化に伴う堤体沈下により、津波や高潮に対しての防護機能が果たせていないことが分かった。15年度は、堤防延長790bのうち、堤外(海)側と堤内(陸)側の地盤改良工を進める」




 



桑名大安線道路改良(東員町中上)



 


 


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四日市建設事務所




吉田勇所長



 三重県四日市建設事務所は、自然災害に備えた河川・砂防および海岸の整備や、円滑な都市内道路交通網の確保に向けたバイパス道路事業や鉄道立体交差事業などの積極的な推進を図っている。中でも重点事業として、新名神高速道路の延伸に伴う四日市インターアクセス道路(国道477号四日市湯の山道路)の早期供用と、近鉄川原町駅周辺総合整備事業の早期完成を目指している。同事務所の吉田勇所長に2015年度の主要事業などを聞いた。



 ――15年度に実施する主な事業の内容を聞きたい。重点事業である国道477号四日市湯の山道路改築事業と近鉄川原町駅周辺総合整備事業はどのように進めるのか。

「国道477号四日市湯の山道路は、東名阪自動車道の四日市インターチェンジ(IC)と新名神高速道路の菰野IC(仮称)を結ぶアクセス道路として、1997年度に事業着手し順次整備を進めてきている。事業効果を早期に発揮させるため、14年5月24日には高角ICから県道四日市菰野大安線の区間について暫定供用した。新名神高速道路の新四日市ジャンクション(JCT)から亀山西JCT(仮称)の間については、18年度までに供用することが決定している。今後は、県道四日市菰野大安線から新名神高速道路の菰野ICまで、新名神高速道路の事業進捗に合わせて整備していく」

「近鉄川原町駅周辺総合整備事業は、連続立体交差事業、三滝川河川改修事業、国道477号西浦バイパス(BP)道路改築事業の3事業を一体的に実施しているもので、07年11月に近鉄と協定を締結し、本格的な工事に着手した。14年3月には明治橋を、そして同年4月30日には近鉄との交差部分に当たる函渠前後の工事が完了したことから、国道477号西浦バイパスの暫定供用を図ったところ。また、連続立体交差事業としては、14年10月に中川方面の下り線を仮線から高架に切り替えた。16年前半の名古屋方面上り線の高架への切り替えに向け、引き続き線路・電線の敷設工事を近鉄に委託して進める予定だ」



 ――このほかの道路事業ではどのような計画があるか。

「県道四日市鈴鹿環状線は、四日市市北部と鈴鹿市中心部を結ぶ重要な幹線道路。四日市市の采女地区内は道路幅員が狭く、現状では十分な機能を発揮していないことからバイパスとして整備を進めている。この工区はオオタカの生息地でもあるため、猛きん類生息調査を行いながら工事用道路の整備を進めていく」



 ――河川・砂防・海岸関係事業はどのように進めるのか。

「河川事業では、激化する異常気象に備えるため、朝明川において、引き続き河川整備計画の策定作業を進める。また、三滝川においては、慈善橋付近の護岸工事を進める。このほか、河川に堆積した土砂の撤去を、市町と情報共有を図りながら実施する予定だ。砂防事業では、14年度に引き続き、かや落し谷川での工事用道路の工事を実施する。海岸事業では、磯津地区海岸での養浜工と、川越地区海岸での耐震対策工・老朽化対策工を進める予定だ。これらの事業により、住民の安全安心の確保に努めていく」






国道477号吉沢高架橋






 ――15年度に計画する特徴のある工事についてはどうか。

「特徴のある工事としては、県道湯の山温泉線の橋梁整備(仮称=湯の山大橋)が挙げられる。県道湯の山温泉線は、湯の山温泉の観光道路であり、災害時における住民や観光客の安全を確保する必要があることから、国道477号(鈴鹿スカイライン)から直接アクセスできる代替道路として橋梁整備を進めていく。14年度から下部工の整備を進めてきたが、15年度は上部工に着手する予定だ。湯の山大橋の橋長は269b、幅員9b。上部構造は3径間連続PCラーメン箱桁橋を予定している」



 ――建設業界に対し要望などあるか。

「事業の推進に当たっては、県民の皆さんの理解と協力はもちろん、建設業界の支援、協力が不可欠。建設業界が地域経済を支える企業として、また災害などの有事に速やかに対応できる機動力を持ち、地域に根付いた優良な企業として発展し続けること、そして若手技術者に技術力の継承が図られることが重要だと考えている」



 ――建設業界の健全な育成には行政の支援が必要不可欠。県として取り組んでいることは。

「建設工事の総合評価方式について、6月から工事種別の適用範囲、評価項目・配点の見直しを行うこととしている。また、14年度から実施している優良工事表彰は、受注者の意欲と技術力の向上を図ることを目的に引き続き実施していく。このほか、15年度から維持管理業務の一部について、地域維持型JVによる契約方式を試行導入している。これらの取り組みを通じて、建設業界の健全な育成に寄与していきたい」




 


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鈴鹿建設事務所




幸阪芳和所長



 鈴鹿市、亀山市を管轄する三重県鈴鹿建設事務所。管内では、台風被災箇所での対策事業や、建設が進む新名神高速道路などと連携した幹線道路ネットワークの整備が課題となっている。2015年度は、台風に起因する死亡事故が発生した県道平野亀山線の対策工事を進めるほか、新名神高速道路の関連事業として、主要地方道四日市関線などの整備に取り組む方針だ。幸阪芳和所長に15年度に実施する主要事業の内容などを聞いた。



 ――管内の整備課題について聞きたい。

「14年に発生した台風(11号、12号、19号)に伴う豪雨で、河川施設(28件)、道路施設(4件)が被災した。自然災害への緊急対応として、これらの復旧事業を早期に完成させることが急務となっている。また、鈴鹿亀山地域は自動車産業や電子機器産業を中心とした産業活動が活発な地域であり、県民の生活や経済活動を支えるための幹線道路整備を着実に進めていかなければならないと考えている」



 ――15年度に実施する主な事業の内容について、道路改築事業では何を進めるのか。

「まず、鈴鹿市内の主要事業としては、県道平野亀山線の整備を進める。同線では12年9月の台風17号の豪雨により鈴鹿川本川と古川支川との合流部から水が逆流し、冠水に伴う死亡事故が発生した。このため、14年度から県道平野亀山線(平野町〜和泉町地内)の整備を、鈴鹿川堤防嵩上げ(三重河川国道事務所実施)と一体的に進めており、15年度に完成する予定だ。また、18年度供用予定の新名神高速道路(四日市〜亀山間)の関連事業として、主要地方道四日市関線(大久保町〜山本町地内)の整備、国道306号の交差点改良(山本町〜椿一宮町地内)、伊船バイパスの道路改良(伊船町〜長澤町地内)、主要地方道神戸長沢線の道路改良(伊船町〜長澤町地内)などに取り組んでいく」

「亀山市内では、橋梁の老朽化対策で進める県道亀山安濃線の鹿島橋の架け替え(北鹿島町〜阿野田町地内)を引き続き行う。15年度は橋梁下部工(橋脚3基)の完成と、橋梁上部工(橋長217b)の工事を促進する。橋梁関連の工事は全て発注済みとなっている」






架け替えを計画する椋川橋






 ――交通安全対策事業は。

「国道306号の交差点改良(亀山市長明寺町地内)と、県道稲生山線の歩道整備(鈴鹿市白子町地内)を進めて行く。このうち国道306号の交差点改良については、15年度の供用を目指している」



 ――河川・砂防事業は。

「管内の椋川、堀切川、芥川の3河川で改修事業を継続する。まず、椋川の改修事業では、浸水被害防止のため、鈴鹿市小田町〜亀山市椿世町間の延長約4・3`の改修を進める。15年度は、河川改修に伴い国道306号椋川橋を架け替えるため、詳細設計などを実施する予定だ。また、堀切川では高潮対策事業として、鈴鹿市白子町で防潮水門、排水機場、護岸などの整備を進めている。防潮水門と排水機場の整備については完了したため、下流部の引き堤工事のための用地買収、建物補償を継続する。15年度は堤防工事に着手する予定だ。このほか、鈴鹿市加佐登町を流れる芥川では、下流区間から順次護岸改修を進めている。15年度は、JR加佐登駅付近の右岸側の護岸工事を予定している」

「砂防事業では、亀山市関町坂下の河原谷川で砂防堰(えん)堤1基の整備を計画しており、15年度は付帯工事である林道の付け替え道路工事を予定している。また、従来のハード対策だけでなくソフト対策として、土砂災害防止法に基づく危険区域の指定に向けた基礎調査を10年度から実施している。15年度も引き続き土砂災害警戒区域等の指定を行っていく」



 ――海岸事業としては何を進めるのか。

「管内の海岸堤防の大部分は、伊勢湾台風後に整備され築後約50年が経過し老朽化が進行している。東海・東南海・南海地震対策や、それに伴う津波への対策も必要なことから、管内で早急に対策が必要な34カ所について14年度までに海岸堤防の対策工事を完了した。このほかの未対策箇所についても老朽化が進んでいることから、15年度以降も引き続き対策工事を進めて行く」



 ――建設業界に対してのメッセージは。

「災害時の緊急対応工事や維持的業務、雪氷対策などで尽力いただき大変感謝している。県民の生活や経済活動を支えるための公共事業を推進するパートナーとして、今後も協力をお願いしたい」




 


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松阪建設事務所




服部喜幸所長



 三重県松阪建設事務所は、土砂災害など自然災害の被害軽減や松阪公園大口線の立体交差化など住民が安全・安心・快適に暮らせるまちづくりに精力的に取り組んでいく。これらの事業について4月に着任した服部喜幸所長に2015年度の計画を聞いた。



 ――15年度の取り組みについて聞きたい。

「15年度当初予算は、骨格的予算とされているため、現時点では全体予算は未定であるが、15年度は「みえ県民力ビジョン・行動計画」の最終年度に当たることから、松阪建設事務所ではこれに基づく諸課題の解決を着実に推進していきたい」

「土砂災害、洪水、高潮、地震、津波などの自然災害からの被害の軽減のための施設整備や維持管理を行い安全・安心な社会づくりに取り組むとともに、「交流・地域連携の基盤整備」のための道路や港湾の社会資本の整備を推進し、利便性の向上や地域経済の活性化を目指していきたい」



 ――河川・砂防・急傾斜崩落対策事業についてはどうか。

「河川事業では、三渡川(松阪市小津町〜六軒町)の市道橋架け替えに向けた旧橋撤去、護岸工の整備を進め、百々川(松阪市松ケ島町〜松崎浦町)では、引き続き水門上流部の河道拡幅改修に必要な用地補償を進める。その他、津波浸水予測区間内の河川堤防の脆弱(ぜいじゃく)箇所対策として愛宕川ほか7カ所で補強対策を実施する」

「砂防事業では、恋ケ谷川(松阪市飯高町七日市)、山室―2(松阪市山室町)、島谷川(大台町大井)、薬王寺谷川(松阪市嬉野薬王寺町)、弁財谷(松阪市嬉野矢下町)の5カ所で堰(えん)堤工の整備などを進め、急傾斜地崩壊対策事業では、中村地区(松阪市柚原町)、森家野地区(松阪市飯高町森)、天ケ瀬地区(大台町天ケ瀬)の3カ所で整備を行う計画だ」

「また、ソフト対策として、15年度には土砂災害防止法に基づく基礎調査で櫛田川圏域の調査を引き続き進めるとともに、多気郡旧勢和村の同法に基づく土砂災害警戒区域等の指定を進め、土砂災害から地域住民の生命を守るための取り組みを推進する」



 ――橋梁耐震・道路防災対策を含めた道路事業について聞きたい。

「道路事業については、国道166号田引バイパス(松阪市飯高町富永〜田引)、国道368号仁柿峠バイパス(松阪市飯南町峠〜飯南町上仁柿)、蓮峡線(松阪市飯高町森〜富永)など地域間連携を促進する道路をはじめ国道422号八知山拡幅、大熊拡幅(大台町滝谷)、六軒鎌田線(松阪市大平尾町〜大塚町)、大台宮川線(大台町天ケ瀬)などの整備を進めるほか、15年度から勢和兄国松阪線(多気町牧〜鍬形)で新規に事業着手し、引き続き生活の利便性向上や産業活動、観光面での交流連携を促進させる」

「街路事業では、松阪公園大口線(松阪市本町〜鎌田町)と鉄道(JR線・近鉄線)の踏切付近で慢性的な渋滞が発生し、松阪市中心部の円滑な通行に支障を来たしていたことから、08年度に同踏切の立体交差化工事に着手し、13年度には鉄道軌道下の函体が完成しており、15年度内に立体交差部の供用を予定している。19年度には周辺道路整備などを含めた全ての工事が完了する計画だ」

「また、地震などに備えた安全・安心の確保として、緊急輸送道路である国道368号桜橋(松阪市飯南町粥見)、大台宮川線新園井橋(大台町弥起井)多度橋(大台町下真手)で橋梁耐震対策を行い、国道166号(松阪市飯高町〜丹生寺町・飯南町粥見)、国道422号(大台町栗谷)では災害防除事業を進める」



 ――松阪港の整備についてはどうか。

「津松阪港は大型貨物船が出入りし、中南勢地域産業を支援する総合物流拠点であり、中部国際空港への海上アクセス港として交流拠点の役割も担っている。津松阪港(大口地区)では、老朽化した大口埠頭の岸壁修繕などを引き続き進め港湾機能の強化を図る」



整備が進む松阪公園大口線立体交差





 ――災害復旧の取り組みはどうか。

「14年度に発生した公共土木施設災害22件のうち、11件については復旧工事が完了している。未工事箇所の11件については引き続き復旧工事を進める」



 ――最後に関係機関や建設業界との連携についてはどう考えているか。

「事業の計画・実施に当たっては地域のニーズを十分に把握することが非常に重要であり、そのためには、市町や地元関係者との意思疎通が必要である。このため、日頃から情報共有や意見交換を行い、円滑で効果的な事業の推進を図りたい」

「また、地域の安全安心や雇用を支える産業として重要な役割を担っている建設産業では、依然として、厳しい経営環境に置かれている。12年3月に策定された「三重県建設産業活性化プラン」に基づき建設産業の活性化に向けた取り組みを行っていく中で、本取り組みの最終年である15年度は、地域の実情に応じた包括的な発注である地域維持型の契約方式を下半期から導入する予定でいる」

「引き続きこれらの取り組みを通じ、地域に根差した建設企業がしっかりと自立できる、活性化が図れるような環境づくりに努め、パートナーとしてともに連携して地域の社会資本整備を進めていきたい」

 




 


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伊勢建設事務所




中瀬和人所長



 三重県伊勢建設事務所では、近い将来、南海トラフ地震などの大規模地震の発生が危ぶまれるほか、近年、多発している異常気象に伴う風水害に備え、基盤施設の整備などを推進する。また、伊勢神宮などの観光地で交通渋滞が発生していることや、2021年に三重県で開催される国民体育大会における利便性、安全性の向上を図る必要から、道路網の整備を推進する。これらの状況を踏まえ県民の安全・安心の確保に向けて地震、津波、洪水、土砂災害などの対策を進め、土砂災害に備えた対策として、土砂災害警戒区域の指定に向けた基礎調査を進めるとともに、命と地域を支える道路網の整備などに取り組みたいと話す中瀬和人所長に15年度事業計画を聞いた。



 ――15年度に実施する主な事業のうち、まず道路関係事業では何を進めるのか。

「南海トラフを震源とする巨大地震の発生が危ぶまれる中で、地域住民の安全で安心、快適な生活を確保するため、熊野灘沿岸地域の幹線道路である国道260号について、南伊勢町地内の南島バイパス(BP)工区(南伊勢町道方〜東宮)、木谷拡幅工区(南伊勢町木谷)、南伊勢町と志摩市を結ぶ木谷BP工区(志摩市浜島町南張〜南伊勢町木谷)の3工区で道路改良工事を継続するとともに、船越工区では工事着手に向けて調査、設計などを進める。木谷BP工区では、14年度に着手した木谷トンネル(仮称)が4月に貫通したところであり、早期完成に向け努力する。また、巨大地震の発生時においても緊急輸送道路の機能を確保できるよう、鳥羽松阪線(大野橋)の橋梁耐震対策事業を進める」

「道路改良事業では、21年に三重県で開催される第76回国民体育大会の会場となる県営総合競技場へのアクセス道路として、館町通線(御側橋)の道路改良工事の着手に向けて延長約1200bを対象に調査、設計を進め、来年度以降にも工事に着手する。また、大紀町の檜原大内山線の道路工事を継続する」

「災害防除事業では、南伊勢町と大紀町の国道260号、度会町栗原の伊勢南島線などで法面工事を実施する。また、外宮度会橋線(伊勢南島線)の電線類地中化事業については、工事着手に向けて設計を進める」



 ――河川整備事業について聞きたい。

「五十鈴川では、伊勢市楠部町で進めている鳥羽松阪線の旧橋撤去部の取り付け護岸工事を完成させるとともに、下流部の護岸工事着手に向けて用地買収を進める。桧尻川では、伊勢市船江で桧尻橋の上流部の整備を進めるための用地補償などを行う。また、大内山川では、大紀町崎工区での工事着手に向けて用地買収を行う」



 ――砂防事業、急傾斜地崩壊対策事業はどのような整備を行うのか。

「通常砂防事業では、土砂災害対策として伊勢市の中の谷川、大紀町の佐田谷川で砂防堰(えん)堤などの整備を行い、大紀町の小平谷で工事着手に向けて調査、設計を進める。急傾斜地崩壊対策事業では、大紀町の浅ケ谷2地区、南伊勢町の阿曽浦1地区で擁壁工や法面工などを進め、南伊勢町の迫間浦5地区、神前浦1地区で工事着手に向けて調査、設計を進める。また、土砂災害に備えた対策として、土砂災害警戒区域の指定に向けた基礎調査(土石流調査113カ所、急傾斜調査159カ所)を推進する」



 ――港湾、海岸事業はどうか。

「海岸事業では海岸侵食対策として、伊勢市二見町の宇治山田港二見地区海岸で護岸工、突堤工などを進める。また、海岸高潮対策として南伊勢町の相賀浦東地先海岸で離岸堤工を進めるほか、港湾改修事業では伊勢市大湊町の宇治山田港で護岸工を継続する」



 ――宮川流域下水道事業の状況は。

「伊勢市、玉城町、明和町の1市2町を対象に事業を進めており、全体計画に対する13年度末の整備率は36%となっている。第4期事業計画に基づいて内宮幹線、明和幹線の延伸を進める」



 ――災害復旧事業については。

「14年度に発生した台風により被害を受けた管内18カ所の災害復旧事業については、15年度内の完成を目指して事業を進めている」



 ――最後に一言。

「管内では東海・東南海・南海の3連動地震により大きな津波被害が想定され、特に熊野灘沿岸の南伊勢町、大紀町では集落の孤立化が懸念される。震災などの災害発生時には、孤立集落の解消を図り、物資や支援の基本となる輸送ルートを確保するため、迅速な道路啓開が重要である。このことからハード対策として、国道260号で道路強化や啓開基地の整備を継続するとともに、ソフト対策として、昨年度に引き続き、市町や三重県建設業協会などと連携して訓練などを実施し、地域の住民の安心、安全のため尽力したいと考えている」




 



木谷拡幅工区完成法面と拡幅予定の現場



 


 


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志摩建設事務所




立花充所長



 三重県志摩建設事務所は、2015年度の主な事業概要として、地域の背骨となる国道167号とともに、それらとネットワークを形成する道路の整備や大規模地震などに備えた海岸保全施設の整備などを推進している。自然災害から県民の安全・安心を確保する施設の着実な整備、生活はもとより産業・観光など地域を支える幹線道路などの整備、既存施設の適切な維持管理を通して安全・安心な地域づくりを目指す。4月に着任した立花充所長に15年度事業計画を聞いた。



 ――15年度に実施する主な事業のうち、道路関係事業では何を進めるのか。

「国道167号は、伊勢、鳥羽地域と志摩地域の連絡強化と社会経済活動を支援する重要な道路であるとともに、災害時の緊急輸送路や救急医療を担う幹線道路だ。このため、バイパス(BP)を整備することにより地域間の連携強化や渋滞緩和を図る。鵜方磯部BP(志摩市阿児町鵜方〜磯部町穴川)においては、鵜方駅周辺の交通渋滞の緩和を目的として、工区全域を対象とした道路工や後沖川橋梁上部工を14年度に引き続き進める。12年度に地域高規格道路の新規事業箇所として採択された磯部BP(志摩市磯部町恵利原〜五知)では、引き続き測量・設計・用地買収を進める」

「鳥羽市の国道167号からパールロードを経て、観光地である相差、石鏡、国崎などに向かう連絡道路として利用されている鳥羽磯部線では松尾工区(鳥羽市松尾町)、逢坂峠工区(鳥羽市相差町〜畔蛸町)において、昨年に引き続き幅員狭小区間の道路拡幅工を実施し観光ルートの充実を図りたい。磯部大王線志島BP(志摩市阿児町甲賀〜大王町畔名)は、現道が小中学生の通学路として利用されているが、幅員が狭く見通しが悪いため、道路工を継続し交通安全の確保を目指す」

「南勢磯部線(志摩市磯部町下之郷〜飯浜)は観光バスなどの利用が多い幹線道路であるが、幅員の狭い区間であり降雨時には冠水することもあるため、早期改良を目指す。15年度も引き続き拡幅工などの整備を進める」



 ――交通安全事業・橋梁耐震対策はどうか。

「交通安全事業では、安乗港線(志摩市阿児町鵜方〜国府)、阿児磯部鳥羽線(鳥羽市安楽島町)で歩道工の施工、用地買収を進める。橋梁耐震対策では、鳥羽阿児線の麻生の浦大橋や阿児磯部鳥羽線の安楽島大橋で支承の改良などの橋梁耐震対策を行う」



 ――海岸・湾岸事業の計画を聞きたい。

「海岸高潮対策事業では、的矢港海岸(志摩市磯部町的矢)の護岸で老朽化が進んでいるため、既設護岸を残し安全を図りつつ、護岸の新設を行う。津波・高潮危機管理緊急事業では鵜方浦地区海岸(志摩市阿児町鵜方)の護岸について背後地が県道浜島阿児線で重要な路線であることから、護岸補強を進めている」

「耐震対策緊急事業では南張地区海岸(志摩市浜島町南張)の、耐震調査の結果、地盤の一部が液状化する恐れがあることが判明した。地震により海岸堤防が被災すれば、住宅や避難所が浸水などの被害に見舞われることに加え、災害応急対策時の緊急輸送路に指定されている国道260号も被災することになり、地域に多大な影響を及ぼす。このため海岸堤防の耐震対策工を行い、背後地の安全度を向上させる」



 ――河川・砂防事業の計画はどうか。

「鳥羽河内ダム(鳥羽市河内町)は、幾度となく氾濫を繰り返してきた二級河川加茂川沿川の洪水被害を軽減するため、鳥羽市河内町地内に建設を進めている治水ダムだ。14年度に引き続き、今年度もダム本体の配置設計、工事用道路の詳細設計などを進めるとともに、用地買収へ向けた測量・調査を実施する」

「砂防事業では、宮谷川水系宮谷(鳥羽市桃取町)において砂防堰(えん)堤の管理用道路施工を行う。また、土砂災害に対するソフト対策として、土砂災害防止法に基づく基礎調査を進める」



 ――道路啓開対策事業の内容は。

「継続して国道167号(鳥羽市堅神町)、国道260号(志摩市阿児町立神)において啓開基地整備を行う。また、国道260号(志摩市大王町船越、浜島町浜島)においては道路構造強化を進めていく」



 ――維持管理事業について聞きたい。

「国道167号(志摩市阿児町鵜方)において舗装修繕を行うほか、国道167号の田城橋、磯部大王自転車道線の三柳橋で橋梁修繕に取り組む。また、道路付属物施設の緊急点検で早急に修繕が必要とされた箇所の修繕工事を実施する。そのほか道路・河川・砂防・港湾・海岸などの公共土木施設の老朽箇所や損傷個所の修繕、道路や河川の除草などを随時実施していく」



 ――各事業の執行方針について。

「公共事業は地域経済活動を下支えするものでもあり、現下の厳しい経済状況の中、迅速な発注に努めたい。また、各事業の実施に当たっては、地域の安全・安心を確保するとともに、多様な交流・連携活動を通じて、活力ある地域を創造するため市や地域のかたがたと連携し社会資本の整備を進めていきたいと考えている」




 



国道167号号鵜方磯部バイパス



 


 


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伊賀建設事務所




片山靖浩



 三重県の北西部、関西圏と中部圏のほぼ中間に位置しており、京都府、滋賀県、奈良県の1府2県に接し、経済や文化において関西圏との交流・連携が盛んな伊賀地域。他地域との交流・連携を広げ、社会を支える基盤を整備する三重県伊賀建設事務所の所長として本年度就任した片山靖浩所長に2015年度事業などを聞いた。



 ――15年度の主要事業から伺いたい。

「幹線道路の整備のうち、国道368号では06年度から伊賀市大内地内から菖蒲池地内の4車線化の道路改築事業(大内拡幅工区延長5100b)に事業着手し、本年度も引き続き道路工を実施する予定だ。特に金坪地内から菖蒲池地内までを重点的に進め、4車線の早期供用開始を目指す。大内拡幅工区に引き続き、09年度に着手した伊賀名張拡幅工区(伊賀市菖蒲池地内から名張市蔵持原出地内の区間延長9100b)では、名張市側の渋滞箇所の解消を当面の目標とし、安場交差点の左折レーンの供用開始を3月13日に行った。さらに、桔梗が丘駅口交差点の渋滞解消のため、桔梗が丘跨線橋の4車線化に向けた耐震工事を継続して進めていく」

「また、07年度から事業着手した名張市上長瀬地内の道路改築事業(上長瀬拡幅工区延長2000b)については、現在工事中の橋梁を含む前後の区間の供用開始を目指す。国道422号道路改築事業の三田坂バイパス(全体延長5100b、うちトンネル延長1528b)は、09年度に三田地区側から着手し、昨年9月に貫通した。本年度はトンネル本体の完成を目指している。橋梁の下部工、上部工など本年度も引き続き実施する予定だ」

「県道上野名張線道路整備事業については、国道422号から市道出屋敷伊賀神戸停車場線との交差点まで(伊賀神戸大橋含む)の延長400bを3月に供用開始した。今後はこの交差点から県道上野名張線と市道花之木古山神戸線の交差点(近鉄アンダーボックスカルバート付近)までの延長約400bの道路工を進めていく」



 ――交通安全対策事業ではどうか。

「交通安全事業としては、国道25号の伊賀市東条地内で交差点改良を予定しており、本年度から工事に着手する。同じく国道25号の伊賀市佐那具地内では『あんしん路肩整備事業』を行っており、本年度も引き続き進めて行く」



 ――防災対策関連ではどうか。

「橋梁耐震対策事業として、緊急輸送道路に指定された路線において順次計画的に橋梁耐震対策工事を実施していく。災害防除事業については、名張曽爾線で、以前より法面対策工事を進めているが、この路線には、まだ危険な箇所が多く残っており、今後も計画的に災害防除施設工事を進めて行く予定だ。また、その他の路線の危険箇所についても計画的に災害防除施設工事を進める予定だ」



 ――河川・砂防事業ではどうか。

「河川事業の主なものとして、木津川河川改修事業(改修延長1万1400b)がある。13年度から伊賀市下神戸地内で、河川改修事業に関連して松之本井堰(せき)(4門は上部工…ゴム製、1門は土砂吐ゲート…鋼製)を下神戸橋上流部に改築する工事を実施しており、本年度中の完成を目指し、引き続き進めていく。砂防事業では、伊賀市西山地内の河内谷川で堰(えん)堤工事を継続しており本年度中の完成を目指す」

「昨年度、広島県において大規模な土砂災害が発生したことから、県民の方々の安全・安心を確保するためのソフト事業として土砂災害防止法に基づき、基礎調査の完了した地区で、土砂災害警戒区域(特別警戒区域)指定を積極的に進める。また、今後の着実な指定に向け、計画的に基礎調査を進めていく予定だ」






国道422号三田坂バイパスのトンネル工事現場






 ――川上ダム関連ではどうか。

「現在国交省で事業中の上野遊水地事業に伴い、現橋が潜水橋である新居橋(県道信楽上野線)の架け替えを近畿地方整備局に委託しているほか、川上ダム関連事業として、県道青山美杉線の付け替え道路整備を水資源機構に委託している」



 ――管内における整備方針について。

「産業や観光など地域を支える幹線道路の整備とともに、自然災害から県民の方々の生命・財産を守るため、河川改修事業、砂防事業などのハード対策や、土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域の指定などのソフト対策を実施し、防災、減災など災害に強い県土づくりを進めていきたい」



 ――公共事業執行に臨む姿勢などについて。

「公共事業については、まず、公平性や公正性、透明性が求められている。このため、引き続き、入札・契約制度の適切な運用に取り組んでいく。こうした取り組みは、県民の方々の社会資本整備に対する信頼につながるものだ。発注者や受注者の立場として、互いの責任と役割分担を明確にし、互いに良きパートナーであることを認識しつつ事業の執行に努めていきたい」




 


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尾鷲建設事務所




柘植武志所長



 紀伊半島では着実にミッシングリンクの解消が進んでおり、首都圏や関西圏、中京圏などから尾鷲市までが高速道路で結ばれ、観光客増加による地域の活性化だけでなく、“尾鷲のさかな”など地域の主要産業の安定供給、地域医療の変化による安全安心の確保に効果を発揮している。しかし、その反面、尾鷲建設事務所管内では、公共事業量が激減し、地域雇用を支える基幹産業である建設業が存続の危機に立たされている。そこで、「地域の建設業は最重要視すべき業界」との認識を持つ三重県尾鷲建設事務所の柘植武志所長に事業量の確保に対する考え方や2015年度の事業展望などを聞いた。



 ――まずは、事業量の減少をどのように捉えているか。

「4月に当事務所に赴任して感じたことは、建設業界の活気が少ないということだ。これは誰が良い悪いという問題ではなく、事業量が少ないことが一つの要因ではないかと思う。災害や高速道路、公園関連事業が一区切りしたため、ここ2、3年事業量が減少していることは事実である。就任して2カ月余り経つが、新規事業の立ち上げを考えた時に必ず課題として浮き上がってくるのが、公図混乱やそもそも公図がないといった用地問題である。このような用地問題があるから、事業化はできないと考えてしまうと、それ以上前には進まない。事業量が少ないと、当然、工事の発注量が少なくなり、建設業界も活気がなくなり、地域の活性化がなくなっていくように思える」



 ――事業量確保に対する考え方を伺いたい。

「用地問題を解決し、少しでも事業量を確保するためには、建設事務所内の職員の意識向上は言うまでもないが、対外関係との連携強化が必要だ。具体的には、市町と建設業界との連携である。市町は地域に密着した行政体であり、事業化に必要なさまざまな情報を有している。また、建設業界は日々の現場周辺で、既設公共施設の状況を常に専門的技術的な目で、施設の異常の有無を把握している。これら2者との連携を図り、互いの情報共有を行うことが、まず、第一歩だと思う」



 ――事業量の減少により存続の危機にある建設業界については。

「地域の建設業は、最重要視すべき業界である。なぜなら、地域の災害時などの安全・安心の確保や地域雇用を支える産業として重要な役割を担っているからである。特に当管内は日本でも有数の豪雨地域であり、過去に起こった幾つかの風水害の時でも、建設業者の緊急対応により早期の災害復旧が可能になった。建設業界が損得勘定なしに、道路・河川などの応急復旧や河川堆積土砂の撤去など、復旧に努めた結果だ。地域を救ってくれた建設業を衰退させてはならないという強い思いを持っている」



 ――では、15年度の事業について聞きたい。道路事業から。

「道路改良関係では、紀北町紀伊長島区の県道長島港古里線で継続して工事を推進する。同町同区の国道422号と同町海山区の県道矢口浦上里線で事業推進を図る。橋梁関係では、尾鷲市内の国道311号で古川橋架け替えに向けた事業を進めるため、測量・設計に取り組む。また、紀北町海山区の相賀と引本地区において、災害時に孤立化の防止および物資輸送面から重要な橋梁である県道須賀利港相賀停車場線の相賀橋(橋長132b)の改築事業に向け、測量・設計を実施する予定だ。街路関係では、重要港湾の尾鷲港と国道42号および東紀州広域防災拠点を結ぶ都市計画道路・尾鷲港新田線の新規事業化に取り組む」



 ――河川、海岸、公園事業は。

「河川関係では、銚子川・船津川の河口閉塞(へいそく)対策として、継続して河口掘削を行うとともに、効果的な対策を検討すべく本年度は、地形測量などの現況調査を実施していく。海岸関係では、紀北町の長島港海岸の中の島地区で継続して堤防の整備を進め、公園関係では、紀北町の熊野灘臨海公園の城の浜地区でテニスコートの改築と長寿命化計画に基づいて施設の更新を行う」



 ――砂防事業を。

「砂防関係では、尾鷲市の向山谷川と紀北町紀伊長島区の楠木谷川で継続して事業を進める。昨年度、新規事業化した紀北町海山区の寺の谷で工事着手を目指す。急傾斜地崩壊対策関係では、尾鷲市の中井浦2地区と紀北町紀伊長島区の長島地区で継続して事業を進める。尾鷲市の宮ノ上地区と紀北町紀伊長島区の西町地区においては、測量・設計などを行い、今後の新規事業化に向けた準備を進める」



 ――最後に管内の課題は。

「既設県管理施設の老朽化対策や災害に備えたインフラ整備が急がれている。昨年度、管内全域で土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域の指定は完了したものの、土砂災害危険箇所における避難路などを保全するための急傾斜施設の整備、土石流から人命や財産を守るための砂防ダムの整備、豪雨などによる洪水被害の防止・軽減のための河川堆積土砂の撤去が課題である」




 



楠木谷川砂防工事



 


 


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熊野建設事務所




井戸坂威所長



 ことし3月末に県道七色峡線と県道小船紀宝線の通行止めが解除されるなど、熊野建設事務所の最優先課題だった紀伊半島大水害からの災害復旧は概成した。しかし、近年、頻発して起こる異常気象による集中豪雨などから住民の暮らしを守るための社会基盤整備が遅れている地域であることは否めない。また、海岸線が長く、大規模地震発生時には津波による大きな被害が想定されている地域でもある。最優先課題が解決しつつあるいま、自然災害に対する備えを着実に進めていくことが求められている。そこで、紀南地域には「20年ぶりの勤務」となった三重県熊野建設事務所の井戸坂威所長に管内の整備課題や2015年度の展望などを聞いた。



 ――まずは、所長就任に当たっての抱負を伺いたい。

「当事務所へは20年ぶりの勤務となり、懐かしい気持ちで業務に取り組んでいる。11年災害の復旧工事もひと段落のところまできたが、異常気象による被害が全国で頻発しており、予防防災として引き続き、地震、津波、洪水、土砂災害などの自然災害に対する備えを進めていくとともに、既存施設の適切な維持管理を行っていくことが必要であると考えている。また、紀勢自動車道と熊野尾鷲道路の整備により、熊野古道などへの観光をはじめ、産業・経済の面でも発展が期待されており、紀南地域の活性化や安全・安心で住みやすい街づくりにしっかりと取り組んでいきたい」



 ――管内の課題をどのように捉えているか。

「熊野地域は山と海に囲まれた風光明媚(めいび)な土地柄であるが、道路をはじめさまざまな社会基盤施設の整備がまだまだ遅れており、ひとたび、異常気象が発生すると、道路の寸断や土砂災害などにより住民の生活が脅かされる環境にある。このため、有事における孤立解消のための道路啓開基地の整備を図るとともに、住民生活を支える道路整備を進める必要がある。また、大規模地震発生時には津波がいち早く到達し、甚大な被害を及ぼすことが懸念されていることから、安全・安心に暮らせるよう、異常気象発生時の被害を防止・軽減するための河川や海岸、砂防、急傾斜などの整備を進めていく必要があると考えている」



 ――建設業界についての考えを。

「紀伊半島大水害では発災時から復旧工事まで最大限の協力と対応をいただき感謝している。今後とも、紀南地域の安全・安心や活性化に寄与するパートナーとしての関係を維持していくことが大事であると考えている」



 ――それでは、15年度の事業について、道路事業から教えてほしい。

「国道169号土場バイパスでは橋梁下部工を発注し現場に着手したところで、15年度は引き続き、下部工工事を進めるとともに、橋梁上部工の発注を予定している。国道311号は唯一の生活道路であるにもかかわらず未改良区間があることから、解消に向けて順次整備を進めており、15年度は熊野市甫母町で道路設計を実施する。紀宝町高岡の県道紀宝川瀬線では異常気象時における住民の避難時間を確保するため、道路の嵩上げに着手する。また、これら抜本的な道路整備に加え、早期に事業効果が発現できる局所的な改良などの柔軟整備を進めるとともに、熊野市飛鳥町の国道309号や紀宝町神内の鵜殿熊野線などで歩行者の安全・安心な通行を確保する歩道整備を進める」



 ――次に河川、海岸事業について。

「河川では、御浜町志原の志原川や御浜町阿田和の尾呂志川、紀宝町井田の井田川で護岸整備や用地買収を実施する。地元要望の強い河川堆積土砂の撤去は、河川の適正な管理と流下能力を確保するため、計画的に実施していく」

「海岸では、熊野市有馬の有馬地区海岸と御浜町萩内の阿田和地区海岸の無堤区間で堤防の整備を進め、紀宝町井田の井田地区海岸では、海岸の侵食を防止するための人工リーフの設置を継続するとともに、国土交通省から熊野川の浚渫砂利の提供を受け養浜を進める」



 ――砂防事業では。

「熊野市新鹿町の奥西谷川や紀宝町浅里の大和谷川で砂防堰(えん)堤工事を継続するとともに、熊野市五郷町の桑谷川では、砂防施設の設計や用地測量を実施する。また、御浜町阿田和の阿田和地区や熊野市木本町の馬留地区などの急傾斜地区で法枠などの整備と用地買収を進める」

「土砂災害防止法に基づく土砂災害危険箇所の基礎調査を熊野市、紀宝町で計画的に進めており、新たに御浜町内の危険箇所の調査に着手する」



 ――最後に、紀伊半島大水害の復旧状況について聞きたい。

「紀宝町浅里から熊野市紀和町和気の間で長期間にわたり通行止めとなり、ご迷惑をお掛けした県道小船紀宝線は、15年3月に小鹿橋の復旧工事が完了したことから、3月31日に通行止めを解除させていただいた。災害復旧事業については昨年度に概成したところであるが、残る熊野市井戸町の井戸川流域における工事中の箇所は早期の復旧完了に向け整備を進めていく」




 



県道小船紀宝



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