静岡県中部地区の静岡市には、県の中心地区として県庁を始めとする行政機関や企業、商業施設が集積する。また、中部地区には静岡空港、清水港があり空と海の扉が世界に向けて開かれ、東名高速道路、新東名高速道路など、列島の東西を結ぶ主要幹線が走っているなど、今後のさらなる発展へそのポテンシャルは高い。一方で、南海トラフ地震や津波などへの災害対策、あらゆるインフラの老朽化対策、中山間地の活性化対策などの課題を抱えており、県市は2015年度も予算配分や実施事業に労苦をにじませる。
静岡市は、本年度から第3次総合計画をスタートさせ、「集中と選択」により弾力的な予算配分を行っている。15年度から中日本高速道路と協定を結び東名新インターチェンジ整備に着手、その周辺の大谷地区の街づくりも具体化させる。世界文化遺産構成資産の三保では、(仮称)三保松原ビジターセンターの用地取得、実施設計を進める。山間部では、梅ケ島温泉昭和線で県初のニールセンローゼ橋を採用する大河内橋架け替えが上部工に入る。
これらをはじめとした15年度事業について、静岡市の塚本孝都市局長、山本祐司建設局長に聞いた。
―15年度予算について
政策の「選択と集中」を進め、「創造する力」による都市の発展、「つながる力」による暮らしの充実を目指す2つの政策群を設定している。その中で、「歴史」「文化」「中枢」「健康」「防災」「共生」というキーワードから、6つの重点プロジェクトを立案、優先的に取り組む重要政策に思い切った予算の重点配分を行った。
都市局の予算の代表的なものでは、東名新インターチェンジ整備事業10億1288万円、江尻ペデストリアンデッキ整備事業5億円、羽衣公園整備事業2億7420万円などが増額となっている。一方で、整備が進んだJR安倍川駅周辺整備事業、JR東静岡駅周辺の新都市拠点整備事業などの予算が減額となったことにより、総額で205億4000万円、前年比5・1%減の当初予算編成となっている。JR草薙駅周辺整備事業、日本平公園整備事業については、国の補助金や起債などで事業費を確保し、補正予算を組んで整備を加速させる方向で検討している。
―注目事業について
都市行政では、中部横断自動車道の開通や、東名新インターチェンジ(IC)の開設を見据えた三保松原や日本平、清水港ウォーターフロント、東名新IC周辺などの交流拠点の整備を進める。建築行政では、アセットマネジメントにより市営住宅の長寿命化、統廃合、計画的改修など効率的運営を図る。
清水港ウォーターフロント活性化では、官民一体での魅力創出を模索、15年度は景観・デザイン誘導を図るための方策検討調査を行う。JR清水駅と江尻漁港周辺を結ぶ江尻ペデストリアンデッキは、14年度設計分の工事を進め、15年度の完成を目指す。
三保松原が世界文化遺産の構成資産の一つとして登録されたことを受け、羽衣公園整備事業を進めるとともに、2億8100万円余の15年度予算で(仮称)三保松原ビジターセンターの用地取得、実施設計を進める。清水三保羽衣地区土地区画整理事業は、建物等移転補償や街路築造工事に対する助成を行う。また、三保半島地区の景観まちづくりを推進するためのワークショップなどを開催し、まちづくりの支援を進める。
駿府城公園エリアの整備では、駿府城再建を目指す中で、天守台跡地の発掘調査に向けた準備作業を行う。また、東海道随一の「桜の名所」を目指し、桜の植樹、ライトアップなどの整備を進める。
JR草薙駅周辺整備事業では、予算約12億1000万円で、橋上駅舎・南北自由通路などのJR委託工事、北口通り線に係る事業用地取得などを実施する予定で、16年度の供用開始を目指す。同駅の南口再開発事業は、予算10億6600万円で、地下1階、地上27階建て延べ2万3700平方bの再開発ビルが15年度末竣工する。
―臨時的な事業について
日本平ホテルで年度内に「日本スペインシンポジウム」が開催されることになったため、日本平公園整備については当初予算に加え補正予算でも事業費を確保、景観面に配慮した広場整備、アクセス道路や調整池の環境整備を行う。
東名新インターチェンジ整備関連では、17年度末供用開始へ向け、本年度からIC工事に着手する。市の負担分についても中日本高速道路と工事協定を締結して整備を行う予定でいる。これに伴いIC周辺地区の大谷・小鹿地区まちづくり計画を推進する。複数の土地区画整理事業を前提に検討しており、15年度は具体的な土地利用の基本設計、実施スケジュールなどを検討、優先整備地区の選定作業を急ぐ。
本年度で改訂が完了する「静岡市都市計画マスタープラン」に併せ、コンパクトシティの実現へ向けた「静岡市立地適正化計画」策定に着手、18年度公表を目指し着実に作業を進める。空き家バンク整備事業では、空き家情報をデータベース化し、宅建業者など民間との連携により、「空き家バンク」を構築する方針で、本年度内の運用開始を目標としている。
―魅力あるまちづくりについて
15年度は第3次総合計画のスタートの年。リーディングプロジェクトとして位置付けられている「歴史文化のまちづくり」「健康長寿のまちづくり」に積極的に取り組む。例えば、JR安倍川駅、草薙駅は橋上新駅舎を建設、バリアフリー化も行い、周辺の一体的整備も含め、地域の顔となるような拠点整備を進める。都市公園などの公共施設のトイレのリフレッシュなど、きめこまやかな事業にも取り組む。
また、静岡都心地区では、「歩いて楽しめる都市空間の創造」を計画、本年度は、その一環として地域関係者の皆さんと連携しながら社会実験を実施する予定で、まちのにぎわい創出にも官民一体となって取り組む。
人口減少社会を迎え、「成熟・持続可能」な都市経営が求められる中、人口70万人都市の受け皿となる魅力ある都市づくりを、ハード・ソフト両面で展開、「世界に輝く静岡」の実現を目指す。