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静岡県【中部地区】の事業展望


静岡県下15年度事業展望・中部地区


 



 静岡県中部地区の静岡市には、県の中心地区として県庁を始めとする行政機関や企業、商業施設が集積する。また、中部地区には静岡空港、清水港があり空と海の扉が世界に向けて開かれ、東名高速道路、新東名高速道路など、列島の東西を結ぶ主要幹線が走っているなど、今後のさらなる発展へそのポテンシャルは高い。一方で、南海トラフ地震や津波などへの災害対策、あらゆるインフラの老朽化対策、中山間地の活性化対策などの課題を抱えており、県市は2015年度も予算配分や実施事業に労苦をにじませる。

静岡県では、静岡土木事務所が三保松原の景観対策でL型突堤の設計・施工を一括発注する他、中部農林事務所で畑地帯総合整備事業の矢部・加瀬沢・茂畑地区で区画整理や舗装、志太榛原農林事務所では戦略畑地榛原地区整地1工事で9・6fの整地を行う。清水港管理局では、新興津国際海上コンテナターミナルの小型船溜まりに隣接した港湾関連施設用地造成に向け、防波護岸の本体となるケーソン製作・据え付け、消波工の製作を行う。

これらをはじめとした15年度事業について、静岡県の市川良輔静岡土木事務所長、藤浪哲也清水港管理局長、麻里均中部農林事務所長、天野弘志太榛原農林事務所長に聞いた。



 



静岡土木事務所




市川良輔



 ―2015年度予算額は

当初予算総額は約96億円で、内訳は交付金事業(国庫補助)が約69億円、県単独事業が約27億円、事業別の内訳は、河川約36億円、海岸約11億円、砂防約17億円、災害約11億円、そして建築が約21億円となる。



 ―三保松原の景観対策について

世界文化遺産「富士山」の構成遺産に登録され、ブロック消波堤の景観対策が課題となっている。13年度に設置された「三保松原白砂青松保全技術会議」では、景観改善と海岸保全が両立する工法の検討を行い、4基ある消波堤のうち、短期対策として南側の2基をL型突堤に置き換える方針が示された。民間の高度な技術力を活用するため、15年度は設計・施工一括発注方式によりL型突堤工事の契約を目指す。



 ―そのほかの海岸事業はどうか

15年度は、静岡海岸では耐震対策の詳細設計を、清水海岸では概略設計を予定している。また、清水海岸では、高潮対策事業で安倍川からサンドバイパスにより8万立方b、三保地先の堆積区域からサンドリサイクルにより14年度から1万立方b増の4万立方b、計年間12万立方bの養浜を行う計画である。



 ―砂防事業の計画は

砂防事業では、通常砂防事業により長尾南沢ほか5渓流で堰堤の整備を進める。15年度は山ノ神川の概成を目指し、榎木沢に新規着手する。県単独事業では、三角町西沢ほか3渓流で堰堤などの整備を進める。

急傾斜地崩壊対策事業では、関の沢など29カ所で斜面崩壊対策を進める。このうち、交付金事業では、奥ノ谷、有東坂、宮前町aの3カ所、県単事業では西河内下水神をはじめとする8カ所で新規に着手する。



 ―河川事業ついては

巴川総合治水対策事業では、巴川流域水害対策計画に基づき、残る麻機遊水地第2―1工区の早期供用開始を目指し、用地取得や土地収用法に基づく手続きを引き続き進めるとともに、安東川エリアで掘削工を、加藤島エリアで築堤工を実施する。

巴川流域では、14年の総雨量約400_の台風18号によって清水地区、麻機地区を中心に1000戸を超える甚大な浸水被害が発生した。今回の浸水被害を踏まえ、「巴川流域総合治水対策協議会」で作成された行動計画に基づき、現在進めている水害対策計画を着実に推進する。15年度は、巴川などの維持浚渫や巴川および大内遊水地の機能強化検討を行うとともに、防災体制などのソフト対策の強化も進め、浸水被害の軽減を図る。

一方、庵原川総合流域防災事業については、支川である山切川の整備を推進し、15年度は護岸整備を実施する。



三保海岸





 ―建築関係の主な工事は

県営住宅については、麻機北団地1号棟(第2期)の建て替え事業および興津団地5号棟の全面的改善事業(トータルリモデル事業)を16年度末の完成を目指し着手する。また、県営住宅十二双団地ほか3団地で居住改善事業(リフレッシュ事業)を行う計画だ。

 




 


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清水港管理局




藤浪哲也



 ―2015年度の予算について。

当初予算の総額は、維持管理費も含め37億円余り。そのうち、整備費は起債事業も含め約27億円を予定している。



 ―主要事業について、まず新興津国際海上コンテナターミナル(CT)関連から

17年度の新興津コンテナターミナル全面供用開始に向け、起債事業で第2バース背後の残り4レーンに係る埠(ふ)頭用地埋め立てを早期に完成させ、地盤改良とコンテナ版の工場製作・据え付けを推進する。

また、小型船溜まりに隣接した港湾関連施設用地造成に向け、防波護岸の本体となるケーソン製作・据え付け、消波工の製作を行う。

小型船溜まりは、防波堤を先行整備しており、14年度繰り越し事業含め180bが完成。15年度は、14年度に製作したケーソン2函と、15年度に製作する2函の合わせて4函を据え付ける。これで、全延長300bのうち、240bが完成する予定。



 ―地震・津波対策について

清水港貝島・塚間地区を中心に、津波の浸入を防ぎ、防護ラインを構築する胸壁整備に向けた用地補償のほか、港内の就労者の津波避難対策として、江尻地区には津波避難タワーを整備する。

津波防護ラインが確定していない江尻地区から日の出地区は、14年度に学識経験者や港湾立地企業、住民の代表者からなる検討委員会を設置し、津波防災対策を検討してきた。引き続き委員会を開き、防護ラインを確定していく。

港湾施設の地震対策として、緊急輸送路として位置づけられている袖師臨港道路の祟徳橋に落橋防止装置を設置する。



 ―中長期的な観点での事業展望は

日の出地区のにぎわい交流拠点エリアとしての再編整備に向け、外貿機能の一部を興津第2埠頭にシフトする。第1段階は日の出4、5号上屋の代替として、興津第2埠頭に新上屋を整備することとなる。

代替機能を確保後は、日の出4、5号上屋を撤去し、にぎわい・交流拠点に資する跡地整備を実施する予定だ。

長期的には、新興津埠頭と興津第2埠頭の間を埋め立て、新たに2バースの岸壁を整備。大水深の連続4バースを備えた国際海上コンテナターミナルを造成していく。

現在、新興津と袖師の2地区に分散しているコンテナ取り扱い機能を集約させ、合わせて港内機能の再編を図り、効率的な荷役活動と空間利用を実現していきたいと考えている。




清水港湾事業展望










中部農林事務所




麻里均



 ―畑地帯総合整備事業について

農地関係予算の8割を占める畑地帯総合整備事業は、畑地のほ場条件の改善を図り、担い手農家への農地集積の促進、経営基盤の安定と生産効率の向上、農作物の高品質化などを目的として、葵区で1地区、清水区で5地区の計6地区で整備を進める。

現在、施工の中心となっているのは清水区の矢部、茂畑および加瀬沢地区の3地区で、早期の完成を目指し、引き続き基盤造成と区画整理を進めていく。

新丹谷地区、新間ほたる地区においては15年度の事業完了を目指し、17年度には茂畑、加瀬沢、矢部地区、18年度には矢部2期地区を完了する計画でいる。



 ―農地関係については

基幹農道整備事業は、2地区、約1億3000万円で農道の整備を進める。清水区の小島茂畑2・3期地区は早期の開通に向けて進める予定。

地すべり対策事業は、2地区で整備を進め、清水区由比の長野南2期地区では水抜きボーリング、西山寺2期地区は実施設計を行う。

河川応急対策事業については、駿河区の下川原地区において、約7000万円で樋管の整備を進める方針。



 ―治山事業について

15年度の公共分については8件の工事を予定している。事業費は全体で4億3000万円程度を見込んでおり、内訳は復旧治山4件、予防治山1件、保安林整備1件、水源地域整備1件、地すべり防止1件。清水区興津東町の本城工事や葵区崩野の崩野工事などを実施する。

県単独事業は9200万円程度を見込み11件の工事を予定。内訳は県営治山4件、豪雨対策緊急整備2件、保安林機能強化1件、治山応急復旧2件、治山施設等管理2件を計画している。すでに発注済みの緊急治山事業5件、3億8300万円と併せ、昨年の台風18号などによる山地災害発生箇所の早期復旧を図る。

また、森の力再生事業は最終の10年目を迎え、管内では14年度までに累計2078fの森林整備を実施した。15年度は事業費約1億7000万円で206fの荒廃森林の整備を進め、さらに伐採した材の活用を図る管理用作業路を整備し、森の力の回復に取り組んでいく。



畑地帯総合整備事業矢部地区の事業区域





 ―林道事業について

道整備交付金を活用し、幹線となる林道として権七峠線、俵峰門屋線、竹ノ沢線の3路線について、2億6000万円(繰り越し分の発注を含む)で開設、改良工事を6工区、測量設計委託など3件を予定している。



 ―建設業界に期待することは

治山工事や林道工事などの施工地は山間部の急峻(きゅうしゅん)な箇所が多く、近年は局所的な豪雨に起因する崩落も発生するなど、受注者の方々には工事、委託ともに労働災害の防止に万全の注意を払うようお願いしたい。

建設業界は、中山間地域のインフラの整備・保全・管理や、害発生時になくてはならない力です。今後も若手に厳しい自然条件に対応した土木技術を伝承していただきたい。

 










志太榛原農林




天野弘



 ―管内の農林業について

管内は、島田市・焼津市・藤枝市・牧之原市・吉田町・川根本町の4市2町で構成されている。農業では、中山間地域や牧之原台地を主体に管内全域にわたり茶の栽培が盛んで、生産量・額ともに県内全体の4割を占めている。林業は北部地域でスギ・ヒノキの人工林、南部ではマツや広葉樹が主体で、防災や保養などの公的機能の役割を果たしている。



 ―15年度の農地、林業の事業費について

本年度は、昨年度末の補正予算を含めて農業農村整備事業10億0250万円と森林整備事業8億5000万円の計18億5250万円の事業を予定している。



 ―農地関係事業の概要について

農業農村整備では、良好な農地と安定した用水の確保により生産性の向上を図る基盤整備や農地の防災保全、土地改良施設の適正管理を目的とした各種事業を実施する。特に大井川用水や牧之原用水は、地域農業の振興に向けた用水の安定的な供給が不可欠であるため、施設の長寿命化を図るストックマネジメント事業を推進する。



 ―農業農村整備事業の15年度計画について

中山間地域総合整備事業では、志太北部で6000万円の事業により地域活性化を図る。農道整備は1億6000万円の事業を計画しており、実施により農産物輸送や通作条件を改善する。また、防災関係事業では、既設の排水機場の更新に1200万円、用排水施設整備などに1億4000万円、大井川用水の親水施設等の整備や地域用水環境整備に約1億9500万円、ため池の改修に5500万円の事業を実施する。



H26本城下泉1工区





 ―森林・林業関係事業の概要について

管内の森林面積は8万0473fで、管内面積の66%を占めている。森林(もり)づくり県民税を財源とした「森の力再生事業」は、15年度は279fの実施を予定。県民との協働・連携により荒廃森林を整備し、土砂災害防止などの「森の力」を回復していく。事業の最終年度を迎え、継続なども視野に入れた事業の在り方を検討する「未来への森づくりタウンミーティング」を開催し、意見聴取を行っている。また、「ふじのくに森林・林業再生プロジェクト」として、大井川流域では県産材生産量7万立方bを目標に、森林の集約化や林道などの路網整備推進、高性能林業機械の導入を促進して木材の安定供給を進める。



 ―治山・林道関係事業の15年度計画について

治山事業は山地災害の未然防止や災害復旧を目的に、公共治山と県単独治山で42件、約5億0900万円の事業を予定。林道事業では、智者山線をはじめとする5路線で約2億4000万円の事業を見込んでおり、実施に際しては、工法の検討等によりコスト縮減に努めるほか、木材を利用した工法を積極的に採用し、森林資源の利用促進を進める。また、補助営の林道工事で、14路線1億0100万円で開設・改良・舗装等を実施する計画だ。

 










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