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浜松市の事業展望


静岡県下15年度事業展望・浜松市


 



 県内西部地区の沿岸域では、浜松市の防潮堤整備をはじめ、県と各自治体が共同で津波対策を進めている。道路関連では、渋滞緩和を目的とする主要路線のバイパス化、農業生産力強化に向けた農道整備などを計画する。

また、高度経済成長期に整備し、一斉に更新時期を迎える道路や橋梁の長寿命化・耐震補強は、市民や県民の安全安心な生活を支えるうえで喫緊の課題となっている。

こうした中、ことし1月に浜松市天竜区の原田橋が落橋し、浜松市の職員2名が命を落とす痛ましい事故が発生した。今後、地域住民との意見交換を踏まえ、新たな橋の架設を慎重に進める考えだ。同橋とともに、緊急輸送路に架かる橋梁を優先した耐震補強などの対策を早急に行っていく。

西部地区のインフラ整備を担う県事務所と浜松市の事業内容などを紹介する。



 



土木部




朝倉義孝



―浜松市の課題と整備の考え方

浜松市は広域合併により、面積1558平方`bと全国第2位の広大な市域となり、そのうち7割を中山間地域が占める国土縮図型都市となりました。管理する道路延長は約8500`、それに架かる橋梁数も約6000橋と非常に多く、これらの維持管理は大きな課題です。中でも、高度経済成長期に整備された多くの橋梁の老朽化対策が喫緊の課題であることから、2012年度の吊橋事故などを踏まえ、土木部内に設置した橋梁安全対策委員会で点検の方針や計画を定めるなど、適切な維持管理と土木施設の長寿命化修繕計画の推進に努めていきます。

また、ことし1月に土砂崩れにより落橋した国道473号原田橋について、一刻も早い復旧に向けて全力で取り組んでまいります。

本市の土木行政は、安全で安心して利用できる道路や河川空間の創出と適正な維持管理、更には、南海トラフを震源域とする大規模地震に備え、災害に強いまちづくりも求められていることから、引き続き地域の実情を踏まえ、選択と集中で計画的な道路や河川の整備を推進するとともに、利便性の向上、産業・経済の活性化や観光交流を促進する広域ネットワーク網の構築を図ります。



―今年度の予算と重点戦略

浜松市の土木事業当初予算は約246億円で、依然として厳しい財政状況であるため、真に必要な事業の選択と集中を進めてまいります。本年度に浜松市が掲げる重点戦略のうち、「災害時における集落の孤立を防ぐための落石防止などや橋梁の耐震補強を進めることによる安全・安心な道路交通を確保」、「河川や排水路の整備及び適正な維持管理を行い、水害に強いまちづくりを目指す」、「市民の利便性の向上、産業・経済の活性化、観光交流を促進するために、高速道路と一般道路、地域間ネットワークを強化する」の3つを土木部の基本方針として定めています。



―8つの重点事業

【公共土木施設の長寿命化対策事業】

道路(橋梁・舗装)やポンプ場設備の点検を実施して、資産運用(アセットマネジメント)の考え方を取り入れた公共土木施設長寿命化修繕計画の策定に取り組むとともに、橋梁長寿命化修繕計画に基づき、重要な橋梁の計画的な修繕およびポンプ場の計画的な修繕工事のための詳細設計を進めます。



【橋梁耐震補強事業】

1996年度以前の道路橋示方書を適用した橋梁のうち、緊急輸送路上の橋長15b以上の橋梁、跨線橋、及び東名を跨ぐ跨道橋の耐震補強を進めます。



【交通安全施設等整備事業】

通学路等の歩道整備、生活道路における歩行者等の安全・快適な道路利用空間確保のための「ゾーン30」の推進・整備、自転車走行空間等の整備、既設道路照明灯のLED化への更新、交差点の平面横断化などの交通安全施設UD化の整備を進めます。



【高速道路と一般道路及び地域間ネットワークを構築する道路整備の推進】

主要道路浜松環状線、都市計画道路下石田細江線の事業推進を図るとともに、東名高速道路での舘山寺と三方原にスマートインターチェンジ設置に向け、早期供用を目標に掲げ、工事着手します。また、三遠南信自動車道路の現道改良区間(国道152号)の事業調整を進めます。




 


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南土木整備事務所




塚本光洋



―課題と事業体制

 <塚本> 南土木整備事務所は、中・西・南区内の国県道・市道及び河川の整備、維持管理を総勢82名の職員で取り組んでいます。また、ことし3月に事務所を現在の中区北寺島町へ移転しました。

当事務所の所管事業には、整備を促進すべき幹線道路や重要河川、また地元からの改築及び維持修繕の要望道路や排水路が数多くあります。しかし、厳しい予算状況の中、これらの整備事業が遅れる傾向にあるため、選択と集中による効率的な優先順位を設定した効果的な予算執行が課題となっています。

さらに、近い将来発生が予想される巨大地震に備え、橋梁の耐震対策等、海岸沿いの低地における津波対策を早急に推進することが重要課題となっています。



―2015年度の予算とその事業内容

予算額は約61億円で、舗装や橋梁の長寿命化、橋梁耐震化、国県道・市道及び都市計画道路、スマートIC関連、交通安全施設、河川等の整備、並びに道路・河川の維持修繕等土木事業全般にわたる業務を進めていきます。



―主な事業の進捗状況

幹線道路の整備としては、 都市計画道路(都)有玉南中田島線と(都)下石田細江線の整備を推進するとともに、 (都)植松和地線や(都)飯田鴨江線の整備を引き続き進めます。一方、国県道や幹線市道においては、舗装や橋梁の長寿命化計画に沿った老朽化対策を推進していきます。緊急的な地震対策として、白竜橋など緊急輸送路にある橋の耐震化や落橋防止対策等、震災時に地域住民の生命を守るための事業を推進していきます。

また、(仮称)舘山寺スマートICは、東名高速道路の「浜松西IC」と「三ヶ日IC」のほぼ中間に位置する舘山寺BS付近に整備を進めており、本年度からスマートインターチェンジ並びにその周辺アクセス道路の整備工事に着手します。



―今後の計画

(都)有玉南中田島線、(都)下石田細江線の整備を重点的に進めるとともに、国道257号の伝馬町から成子町までの区間延長600bについては、成子・旅籠各工区の用地買収を引き続き推進します。また、(都)植松和地線などの道路整備、九領川や東芳川の河川改良、高塚川流域の浸水対策など、計画的な整備を図っていきます。





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東・浜北土木整備事務所




宮野裕幸



―課題と事業体制は

東・浜北土木整備事務所は東区・浜北区2地区の面積約113平方`bの区内にある国県道・都市計画道路、市民に密着した生活道路や河川・排水路などの整備・修繕を総勢51名の職員で対応しています。財政状況の厳しい中、地域からは道路拡幅や側溝修繕など生活に密着した要望が多く寄せられ、その採択において限られた財源を効果的、効率的に執行するため、いかに事業を選択し集中するかが一番の課題です。



―本年度の事業概要は

当事務所の事業費は当初予算で約47億円です。道路関係が60路線、河川関係が20河川と1都市下水路の対象路線数となります。主要事業としては浜北区では国道362号(宮口BP)、(主)天竜浜松線などの国県道整備事業と市街地を縦断する市道浜北美薗線の整備や恒常的な水害の解消を目的に普通河川西中瀬川、西美薗都市下水路などの河川改修事業を実施します。また東区では(主)浜松環状線の中郡地区の整備、市道小池52号線などの道路整備事業と都市計画道路事業として(都)高林芳川線と天竜川駅周辺整備事業を継続して実施します。また、河川改修事業として県が整備する安間川遊水地整備事業に関連する安間川左岸第二排水区内水対策事業を実施します。



―主な事業の進捗は

浜北区の国道362号(宮口BP)は、宮口地区の狭隘(きょうあい)区間の埋蔵文化財調査を実施し、早期整備に努めます。また、(主)天竜浜松線も用地買収を継続し、事業区間の早期供用を目指します。

東区の(主)浜松環状線については、中郡地区の用地買収と整備工事を進めていきます。(都)高林芳川線は昨年度と同様、用地買収と埋蔵文化財調査などを実施します。また、天竜川駅周辺整備事業は、JR東海との工事協定による仮駅舎工事、安間川左岸第二排水区内水対策事業は雨水ポンプ場のポンプ施設と流入水路工事、三方原PAのスマートIC関連事業では用地買収とともに本年度から整備工事に着手します。



―今後の計画は

北区の都田工区で進む企業誘致に合わせた国道362号(宮口BP)の早期供用を目指すとともに、(主)天竜浜松線や(主)浜松環状線などの浜北区、東区の主要幹線道路の計画的な事業推進を図るとともに、水害や土砂災害の防止に向けた河川・排水路の整備も計画的に進めていきます。さらに、現東名高速道路・三方原PAのスマートICとアクセス道路の早期整備行い、16年度の供用を目指します。





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北土木整備事務所




渥美忠之



―事業体制と課題は

<渥美> 北土木整備事務所は、浜松市の北区全域(区域面積295.59平方`b)を管轄区域とし、管内の国県市道及び河川の整備、維持管理業務を総勢35人の職員で取り組んでいます。一方、課題としては新東名高速道路浜松SAスマ−トICの開通により、工場用地への需要が大幅に増えることから「新・ものづくり」特区の認定を受け、新産業の創出に向けた戦力的な企業誘致を含めた地域づくりが求められています。そこで、接続するアクセス道路として位置付けられた市道沢上灰の木原線及び国道362号宮口BPの改良事業、さらには市街地と浜松いなさICを結ぶ国道257号のミニバイパス整備事業の早急な整備が求められています。



―本年度の事業概要は

本年度の当初予算額は約24億円で、事業内容は道路維持修繕事業(国県道・市道)、道路防災事業、橋りょう耐震補強事業、交通安全施設等整備・維持修繕事業(国県道・市道)、市道整備事業、国県道整備事業、スマ−トIC関連事業、河川改良事業、河川維持修繕事業を予定しています。



―主な事業の進捗は

道路整備事業においては、「新・ものづくり」特区に関連した市道沢上灰の木原線への事業及び国道362号宮口BPの2016年度の完了を目指した事業推進を図っています。また、幹線道路に架かる橋りょうの長寿命化対策事業及び耐震補強事業として6橋の整備に伴う設計業務を実施します。さらに、災害に強いみちづくりとして道路防災事業(主要地方道引佐六郎沢線)について事業を実施していきます。

河川改良事業においては、(準)神明川の排水対策事業を15年度の完成、さらに、(普)三方原9号排水路に事業着手し、17年度の完成に向けて事業実施しています。



―今後の計画は

新東名高速道路の浜松いなさICから浜松市中心部への主要幹線道路として国道257号ミニバイパスの整備や、「新・ものづくり」特区内の幹線道路として、国道362号宮口バイパス及び市道沢上灰の木原線の事業推進、また、通勤時の渋滞解消を目的とした、幹線道路の交差点改良事業を計画的に進めていきます。

このほか、東名高速道路の三方原パーキングエリアに設置されるスマートICへのアクセス道路としての都市計画道路有玉南初生線や、11年度に完成した浜北新都市地区へアクセスする市道大原2号線の第2工区の事業促進を図って行きます。また、公共施設である橋りょうの長寿命化対策事業及び耐震補強事業の計画的な事業推進や災害に強いみちづくりとして、道路防災事業を計画的に進めていきます。さらに、三ヶ日地区をはじめとした浸水対策を含めた河川改良事業を計画的に推進していきます。





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天竜土木整備事務所




山村宜之



―最初に

ご存知のとおり、ことし1月31日に大規模斜面崩壊が発生し、原田橋が落橋、天竜土木整備事務所の職員2名がこれに巻き込まれ死亡するという、痛ましい事故が発生しました。現在、河川内に仮設道路を設置し、国道473号の代替道路として供用していいますが、佐久間ダム放流時には通行止めとなり、地域の方々にご不便をお掛けしております。今後、早急に新橋を架設することが、最重要課題と考えてはおりますが、早さと安全性確保を両立させつつ、地域の方々と意見交換をしながら事業を進めていく所存です。



―課題と事業・体制

 <山村> 管内は天竜・春野・佐久間・水窪・龍山地域から成り(市域面積の62%)、この広大な範囲を総勢49人の職員でカバーしております。管内の国県道は31路線、市道は2412路線、道路延長は1621`に及び、地域産業、生活道路として重要な役割を担っております。

これら道路は、急しゅんな地形により、幹線道路である国県道においても未改良区間が多く、中央構造線の影響を受けたぜい弱な地質やせん断力を多く受けた付加体地質であるため、災害の発生は非常に多く、他の市域と比較して独特な性格を有しています。

また、管理する橋梁は、佐久間ダムや秋葉ダム施工に伴い架設されたものも多く、その長寿命化や耐震化を進める必要があります。



―15年度予算とその事業内容

<山村> 本年度当初予算は約34億円で、管内国県道・市道の整備や橋梁の長寿命化と耐震補強事業・交通安全施設等整備・道路防災事業・河川整備・災害復旧事業など、土木事業全般にわたる事業を実施します。



―主な事業の進捗状況

<山村> 国県道整備事業においては、原田橋新橋架け替えに係る事業の他、国道152号浜北天竜BPの阿蔵高架橋工事を進めます。耐震補強事業では、国道152号の横山橋や相津桟道橋等の工事を行い、また国県道幹線道路で耐震化未着手橋梁についても耐震化設計を進めます。

道路防災事業においては、国道152号の龍山・佐久間地内で3箇所の防災工事を行ないます。

また、三遠南信自動車道の水窪インターから水窪北インター間約7`の現道改良に向けて、本年度は測量や調査を進めます。これらの主要な事業と同時に、地域からの要望に答える小規模修繕事業を随時行っていきます。





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