設計者の目線 日企設計・玉岡社長
2017/10/17 大阪
―民間物件で特に力を入れている分野は。
「特定の分野を専門にするのではなく、全てのジャンルの設計ができるのが建築家だと考えている。仕事量のバランスは時流に従って変わる。バブル期までは、学校や寺院、病院、銀行、スポーツ施設、工場、事務所ビル、ホテル、レジャービル、集合住宅、商業施設、福祉施設など幅広く手掛けていたが、バブル期以降はこれらの分野への投資が減ったため、マンション分野の仕事を一気に伸ばした。今はマンションやホテルが主流。これからは福祉施設、商業施設、再開発事業にも力を入れていく」
―現在の民間市場の特徴をどう見ているか。
「ホテルの建設ラッシュでマンションが押されている状況だ。土地の価格がとても高く、マンションの建設では収支が合いにくい。土地代に加え、建築費も高いとなると、マンション用地としての取得は厳しい」
―ホテルの勢いはまだまだ衰えない。
「いや、明らかに先が見え始めている。表面上は浮上していないが、そろそろ『オーバーホテル現象』が表面化してくる。本来のホテル事業者でないマンションデベロッパーなどが今、開発も手掛けているが、オーバーホテルになれば宿泊価格が低下し、経営がうまくいかないホテルも出てくる。ホテル物件は急降下するようになると思われる」
―マンションデベロッパーの開発意欲についてはどう見るか。
「基本的に大阪でも東京でも低迷気味という印象だ。土地代と建築費が高いから事業が成り立たない。金融庁も銀行に融資のブレーキを掛け始めていると聞く。契約率にはまだ現れていないが、水面下ではマンション販売が厳しいという動きが出ている。広島や福岡といった地方の主要都市に目を向けているデベロッパーが増えているが、こうした新たな一手を打つ必要があると思う」
―関西圏ではビッグプロジェクトがある。
「大型プロジェクトは今後も続くだろうが、一般の建設会社には入り込む余地が少なく、利益に結び付かない。将来に不安を感じている人が多いのは、消費性向や可処分所得にも現れている。良い時代の次には悪い時代が来るということを本能的に覚悟しておかないといけない。分岐点は東京五輪・パラリンピックだと考える。一方で、生産緑地の指定解除(2022年)、団塊の世代の後期高齢者入り、所有者不明土地の増殖などを考えると、次に起きる動きを予測するのは難しい。ニューヨークでは、レストランが昼間の時間帯の店内をオフィスとして安い値段で貸し出しているという。オフィスビルを代替するような動きが日本の都市にもいずれ来るだろう」
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