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マンション管理 実態と問題点

建通新聞東京版 2011/10/56掲載
※本文とトップページ写真は関係ありません。
 
 

ある管理組合理事長の活動記録

 

マンション管理の実態と問題点 管理費滞納、管理会社交代・・・悩みは尽きず
都内某所にある築10年、総戸数約150戸のマンション。輪番制で管理組合の理事になり、理事の互選で理事長に選ばれたA氏は、マンション市場調査会社トータルブレイン・久光龍彦社長の長年の友人。昨年、理事長就任を機に管理組合の活動の日々を記録した。以下はその抜粋で、管理費滞納などさまざまな問題に直面し、管理会社交代に奮闘した跡がうかがえる。

■運営は管理会社任せ
「理事長になって管理規約をじっくり読んでみると、微妙に管理会社に都合の良い内容になっていると感じた。例えば機械式駐車装置の点検などは毎月の負担が定額で精算を必要としない定額委託業務の中に入っている。点検施工業者には管理会社を通して費用が支払われるため、実際にはいくらで業者が請け負うのか管理組合には分からない。しかし、面倒なことは全て管理会社に任せる管理組合の運営にも原因がある。管理会社を一方的に批判するのは本末転倒かもしれない」

■管理費の滞納
「管理費の支払いが遅れると、管理会社は督促を実施するがそれで終わりだ。でも管理組合が困るのはここから先である。法的手続きに訴えようにも、素人集団の集まりでは苦労が多い」
「フロントマンのアドバイスに従って滞納金額の一部について少額訴訟を起こした。しかし今では全額を対象に通常の裁判にすればよかったと思う。私たちの知識不足な面も否めないが、管理会社に裁判へ対応する体制が整っているかどうかでこちらの精神的な負担は変わる」

■管理会社交代
「管理会社に何かの資料を求めても2週間ほどかかる。資料をテーマ別に保管し、翌日にはメールで手元に届くと思っていたが、時間がかかると印象が悪くなる。こんな時他の管理会社ならどうしてくれるのかと、つい思ってしまう」
「管理会社を代えるのは難しい。何から始めたらよいのか分からない。しかし、最大の支出先である管理会社を10年も査定しないのは理事会の怠慢と考え、5社から見積もりをとった。金額の低い2社に絞り、1週間後、理事10人が出席してプレゼンを受けた。検討から決定まで1カ月ほどだった。比較的、理事の時間の都合がついたのでスムーズに進んだように思う。理事には時間的に自由に動ける人が必要と実感した。管理費の詳細やサービスの内容を比較できるので、面倒でもおよそ5年に一度は管理会社の査定を行うことで管理組合の運営を改善できることも確かだ」
「交代を機に、定額委託業務も見直した。設備総合点検など年4回実施する作業の支払いは、作業後にその都度支払うことに。管理会社にとっては事務処理が増えて大変だろうが、管理組合にはお金の動きが理解でき安心だ」
「交代させられた会社は、業務を引き継ぐ次の会社に対し素直にデータを引き渡すとは限らない。引き継ぎを容易にできるよう基本情報の『カルテ化』をすべきではないだろうか。管理組合が安心できる業界であってほしいと願う」

■管理会社に望むこと
「共用部や専有部のアフターサービスでは、その期間をめぐって区分所有者と売主、管理会社の間でトラブルに発展するケースが多い。管理会社には早めにアドバイスを仰ぎたい。東日本大震災では住民の絆が強いところほど混乱が少なかったと聞く。地域交流が重要で、管理会社には交流の手伝いをしてほしいのが本音だ」

◇ ◇ ◇

永住意識の高まりを背景に、望ましい管理の在り方を模索する管理組合の動きが加速している。一方で運営の知識や経験に乏しいため、理事長の悩みは尽きない。管理組合が抱える問題に迅速、的確に応え得る能力が管理業者には求められている。

 

トータルブレイン代表取締役社長 久光龍彦(ひさみつ・たつひこ)氏に聞く 


マンション管理の実態と問題点 積立金は目安額と実態の開き大きい デベロッパーは問題を先送りするな
全国のマンションストック数は560万戸を超え、居住人口は約1400万人に上る。「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」施行から10年。ことし4月には修繕積立金に関するガイドラインを国が公表した。管理適正化の流れは管理業者にどのような影響を与えているのか。また、管理組合と区分所有者の住まいに対する意識や行動はどう変化しているのか。『マンションは管理を買え!』が持論の久光氏に管理業の実態と問題点を聞いた。

――適正化法の施行から10年が経過しました。
「適正化法は、管理の主体である区分所有者に対しては『自分たちの資産は自分たちで守る』当事者意識の形成を促している。一方、管理業者には重要事項説明の実施や管理事務報告書の交付といった管理体制の整備を求めて義務と罰則を規定した。マンション居住者の永住意識が高まり、マンションを社会資本として適切に維持することが求められる中で、管理業者を選別する管理組合と区分所有者の姿勢も厳しくなっていると感じる」

――管理の重要性が高まっていると。
「かつて『住宅すごろく』という言葉があったように、住宅は家族構成や収入の変化に伴い替えるものだった。近年は所得や雇用に対する不安を抱えマンションも『終の住み家』となり、資産との見方が一般化した。資産価値を守るには管理が重要だと思う」
「管理組合は委託費用と業務品質のバランスを検証している。管理業者を選択する際には、費用も含め信頼できるサービスの受託が鍵となる。管理業者は顧客の要望に応え得る能力を備えなければ生き残れない時代だ」

――修繕積立金に関して国がガイドラインを公表しました。
「かねてから初期設定額が安すぎるとの指摘はあった。ガイドラインでは、長期修繕計画期間の修繕費用を均等に積み立てる『均等積立方式』が望ましいと判断している。国が試算した積立金の目安金額を見ると、15階未満の1平方b当たりの月額積立金は50戸未満の規模で平均218円。これは首都圏の新築マンション積立金の2倍強で、目安と実態との開きが大きい。積立金は管理費や住宅ローンのように負担と捉えられているので、引き上げるとデベロッパーの販売に影響する。しかし問題を先送りせずに、しっかり取り組むべきだ」

――区分所有者の高齢化が進行しています。
「世帯主の年齢構成を見ると、60歳以上の割合が4割を占める。築30年を超えるストックは全国で100万戸に達する。劣化に伴い修繕など問題は増えるのに、管理組合の役員は高齢化で成り手が減る事態に直面している」
「担い手不足に対する第3者管理方式、安全性や利便性を高める専有部サービスの充実など、管理業者には管理組合が抱える問題に対応する能力が問われていると思う」

――業界が進むべき方向性は。
「顧客は安くて良い管理を求めている。業界では管理物件の量を確保するため、物件を取り合うリプレイスの動きが活発だ。親会社のデベロッパーは新規供給に目が向き、管理業務はほとんどを子会社に任せており、管理に対する関心が高いとはいえない。供給(フロー)と管理(ストック)は車に例えるなら両輪。デベロッパーはストックビジネスと真剣に向き合い、管理業者の生き残り策を考えるべきだろう」

略歴 1940年6月生まれ。64年3月中央大卒、長谷川工務店(現長谷工コーポレーション)入社、83年2月同社専務取締役、98年6月長谷工コミュニティ代表取締役社長を経て99年10月トータルブレイン代表取締役社長。

 

 

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