7月第3月曜日に制定され、2015年は7月20日が「海の日」。7月の「海の月間」と合わせ、各地では記念行事が展開されている。また23日には、「海の日」清水港実行委員会が15年海事関係功労者等表彰を静岡市清水区内で開き、港湾事業の振興に尽力した人たちをたたえる。
国際拠点港湾・清水港、重要港湾・田子の浦港と御前崎港、地方港湾(避難港)・下田港の直轄整備にあたる国土交通省中部地方整備局清水港湾事務所の加賀谷俊和所長の寄稿文と、同事務所の15年度事業概要をまとめた。
国土交通省中部地方整備局清水港湾事務所は2015年度、三つの柱を立て、事業を推進している。
@大規模地震・津波に対する港湾の事前防災・減災対策推進
切迫する大規模地震・津波災害に対し、地震発生後の幹線物流機能を維持するとともに、津波災害を軽減するなど災害に強い港づくりを進める。
A地域経済を支える港湾インフラの整備
我が国の経済再生を加速させるため、地域の経済の活力を取り戻す基盤となる港湾インフラの整備を進める。
B港湾施設の老朽化対策推進
広域的な視点や老朽化の状況を踏まえ、ライフサイクル延命化とトータルライフサイクルコストの縮減を図るために、港湾施設の老朽化対策を進める。
事業費を見ると、15年度当初の国直轄事業(港湾)は、対前年度比1・12の約34億8000万円。各港の内訳は清水港17億0100万円、御前崎港7億9500万円、下田港5億4000万円、田子の浦港4億4900万円となっている。
各港の事業概要は次の通り。
■清水港
清水港は、興津地区・富士見地区の岸壁老朽化対策、新興津防波堤の延伸などの他、外港防波堤では継続して「粘り強い構造」への改良工事を実施する。
港湾施設の老朽化対策では、水深10bの興津地区岸壁、水深14bと水深9bの富士見地区岸壁の老朽化対策を推進する。興津岸壁と富士見の水深14b岸壁は、工事に着手予定。どちらも地盤改良となり、浸透固化処理を実施する。
富士見の水深9b岸壁は老朽化しており、施工検討や調査を実施する。
「粘り強い構造」への改良工事は、大規模地震・津波への対応力強化として、大規模地震発生時の津波により防波堤が倒壊し、その後の荷役活動への支障がないように行うもの。外港防波堤の改良工事を継続実施する。上部工は2.9b嵩上げするもので、施工延長200b程度になる。
新興津地区の国際海上コンテナターミナル整備事業は、防波堤延伸整備を進め、年度内に完了予定。
■御前崎港
女岩地区防波堤整備事業を継続実施する。
東防波堤は、消波ブロック80tの製作と据え付け。港内の静穏度を高めるため、延伸整備を継続する。被覆工事は延長135bで実施予定。
また、西防波堤は、津波に対し粘り強い構造とするための改良を継続実施する。上部工の50a嵩上げとなり、施工延長は450b。
その他、港内施設整備方策検討なども実施予定。
■下田港
船舶の避泊面積の拡大と津波防護のための防波堤整備を進めていく。防波堤(西)の先端部補強などが主なもの。本体はケーソン1函の製作、根固めブロックは7個の製作を予定している。
下田港は、古くから海の避難場所(避難港)として利用されているが、周辺海域が複雑な地形と厳しい海象条件のため海難事故が多発する海域でもある。
20年の整備完了を目指して進めている防波堤整備は、避泊船泊を守るためだけでなく、大規模地震による津波から背後の住民や財産を守る津波低減効果も見込んでいる。
業務委託では、防波堤沈下測量、潮位表作成、整備効果検討を予定。
■田子の浦港
水深12b航路泊地の水深確保のため、港口部で航路保全対策(しゅんせつ工事)を進める。大型船の入港が目的。
浚渫場所は現時点では未定だが、港口部その2として3万6000立方bの規模になる。
保全対策の検証、整備効果検討、整備方策検討の業務委託も実施する。
静岡県は、災害発生時、海上輸送される緊急物資を優先的に受け入れる港湾を「防災拠点港湾」、防災拠点港湾の機能を補完する港湾・漁港を「防災港湾」と位置付け、想定される被害規模や緊急物資の需要予測に基づいて、各港の緊急輸送岸壁などの配置計画を定め、整備してきた。
●耐震強化岸壁
防災拠点港湾、防災港湾に位置付けられた県内各港の緊急輸送岸壁に加えて、清水港、田子の浦港、御前崎港では、基幹物流機能の維持のため岸壁を耐震化している。
合わせてコンテナクレーンの耐震・免震化で地震発生後の早期荷役再開を目指している。
●津波避難対策
駿河トラフに近い静岡県では、到達時間の早い津波による浸水が想定され、清水港では確実な避難のための避難ルートや避難場所を定めた津波避難計画を作成するとともに、照明塔への梯子、踊り場の設置や、受変電施設への外階段の設置など各施設に津波に対する緊急避難機能を加える工夫も実施してきた。
○新たな想定に対応した津波防災対策
県は、ことし6月、内閣府と協議の上、駿河トラフ・南海トラフ沿いで発生した宝永地震や安政東海地震など過去に発生した五つの大地震に関する最新の知見に基づきレベル1の津波想定高を見直した。また、想定される被害をできる限り軽減する「減災」を目指し、地震・津波対策の行動目標として「アクションプログラム2013」を定めており、港湾でもこれまで実施してきた地震・津波対策の見直しや新たな対策を進めている。
●静岡県みなと機能継続計画(みなとBCP)
東日本大震災による港湾・漁港の甚大な被災を受け、地震災害対策マニュアルの内容を見直すとともに、県の管理する港湾・漁港を対象とした「静岡県みなと機能継続計画(みなとBCP)」を2015年3月までに全港で策定した。
みなとBCPは、大規模災害に対して、人的被害をなくし、港の機能を早期に復旧させるため、事前にするべきことや、被災後の対応を港別に整理した計画。港の規模などに応じて内容を整理した。
@津波避難誘導計画(全港湾・漁港)−港湾関係者・漁港関係者等を対象としたレベル2地震・津波に対応した避難計画。
A緊急物資対応強化(防災拠点港湾・防災港湾)−各種災害協定に基づく被災調査、応急復旧、緊急物資荷役等の連絡体制と協力体制の強化。
B通常港湾機能(基幹貨物の輸送)の早期復旧(清水港・田子の浦港・御前崎港 ※重要港湾以上)−各港BCP協議会で背後地の経済への影響を考慮した復旧目標の設定と、各関係者の事前対策の検討。
静岡県は「みなとBCPは、策定して終わりではなく、今後も訓練などにより点検・更新を繰り返すことで、より熟度の高い計画を目指していく」としている。
豊かで安全・安心な沿岸域形成が必要
我が国は、海を介して世界や他の地域と直接つながっています。当事務所の管内の静岡県内も、延長にして519`にも及ぶ表情豊かな海岸線を有しています。古くから、生活・産業活動を支える拠点としての港を通じて、人、物、情報が盛んに交流して参りました。
そして、地域間の人流、商流、物流等のさまざまな流れが交わる港で、地域の発展を願う先人たちが、自然・歴史、水産等の資源との折り合いをつけながら、ストックを築き上げ、付加価値を創出してきたことも忘れてはいけません。
この貴重な試算を受け継いだ私たちは、これを大切に使い続けることを前提としつつ、海洋と地域を取り巻く情勢変化をいち早く捉えて、更なる付加価値創出に挑戦し、豊かで安全・安心な沿岸域を形成していく必要があります。
また、その資産を地域の発展を夢見る世代に健全な形で継承していく責務があります。その取り組みを円滑に進めていくためには、地域の皆さまひとりひとりのご理解とご協力が欠かせません。
私は「海の日」が地域の皆さまにとって、海や港に親しみ、その恵みや役割を理解し、地域の発展に思いを馳せる機会となることを希望いたします。
【寄稿】