――『警備の日(11月1日)』が制定された。
「警備業法の制定から約40年、業の成立から約50年を迎えることなどを機に、記念日として正式に登録した。これによって、継続的に警備業の社会貢献などを広報し、社会の理解と信頼を高めていきたい」
――確かに、警備業に対する社会の理解は十分とはいえない。現状の課題は?
「国交省が公表する労務単価を見てもらえば明らかだが、51職種の中で常に最下位を占めており、これが警備料金の低さにつながっている。また、3Kという言葉に代表されるように、イメージも良いとはいえない。仕事内容も、誰でもできると誤解されているが、施設警備も交通誘導も現場に応じて、高度な技術や人間性が必要だ。本来は、生活安全産業としてやりがいのある仕事なのだが、それが伝わっていない」
――その影響か、人手不足が顕著だといわれる。
「人材確保は、本当に恒常的かつ深刻な課題だ。警備業は、契約料金や経費の大部分を人件費が占める労働集約型産業の典型だが、現状は必要な人員の確保もままならない。不況時に雇用の下支えの部分を担ってきた側面がある中で、本当に人員が必要なときに不足するとは皮肉な話だ。特に愛知県は、他産業の求人状況が良く、警備業の有効求人倍率が常に平均の6〜8倍と憂慮すべき状況が続いている」
――業界の対応策は?
「何よりも、まずは警備料金の向上による賃金アップに尽きる。もちろん、協会各社が経営努力を続けているが、併せて社会保険加入問題などを契機に適正料金を見直すことは必須だろう。また、業界内の問題でもあるが、ダンピングの抑制対策も重大な課題。入札制度の改善などをお願いしていくことも必要だ」
――建設関連産業を取材している立場から見ると、所管官庁の影響か、他の業種に比べて規制が多く、育成支援策が少なく感じる。
「われわれには、警察活動を補完する生活安全産業として、警察当局の指導の下で業務を行っていることに対するプライドや安心感がある。ただ、業法制定の経緯などから規制に対して受動的で、理想と現実が乖離(かいり)している面があることも事実だ。行政が行う事業などで、直接的な予算措置がないことも遠因だろう」
「実際に2号業務において、国土交通省が社会保険加入を提唱するなどの措置を講じてから、少しずつ警備料金が改善している。これまでは、支援策を求めるという発想が少なかったが、そういう活動も必要だろう」
――2016年度、法人化30周年を迎える。将来に向けた取り組みは?
「まずは、適正な警備料金確保に始まる好循環を生み出し、流れを作ること。賃金をはじめとする就労環境が向上すれば、さらに優秀な警備員を確保でき、業務への信頼や社会的地位も向上する―そういった流れを作り出していきたい」
――そのためには団体としての活動が不可欠では。
「個々の企業がこれまで以上に、業界全体の発展を考えていかなければならない。それを方向付け、まとめるのが協会の仕事だ。また、これからは、建設業界を中心とした業界団体間の連携も強めることも考えていきたい。建設関連団体の皆さまには、ご理解とご支援をいただきたい」