―新団体の設立経緯は。
「マンションの新規開発が踊り場にきている反面、中古流通市場は徐々に拡大している。スクラップ&ビルド≠ゥらストック&リニューアル≠ヨとトレンドが移行している。業界は建物目線≠ナ進めていた改修事業を、居住者目線≠ヨとシフトしなければならない時期を迎えていると考えている」
「こうした状況下にあって、十数年に1回しか実施しない大規模修繕工事の獲得に執着し過ぎるあまり、居住者にとっての終の棲家(すみか)≠ナあるという視点を忘れがちである。『将来の住まい方』について、居住者目線で考える役割を共有しようという理念に賛同した企業が集結し、この団体が生まれることになった」
―当面の具体的な取り組みとしてはどのように考えていますか。
「関連会社がデイサービスを展開している中で、『ユニバーサルデザインを掲げてはいるものの、目線や視点の違いから有効に機能していない場合がある』という指摘を受けたことがある。これは、供給者側と需要者側の認識の相違から生じているように思う。こうした違いは、マンションにおいても需要者側の年齢や住まい方によっても生まれる。例えば、専有部の将来を想像するとき、60代と30代では思い描く将来像が異なるのは自然である」
「こうした居住者それぞれの住まい方に合わせたニーズを拾い上げ、一つの方向性にまとめあげるのはそう簡単ではない。
しかし、だからこそ固有の『専門知』と経験的な『集合知』を融合する意義があるともいえる。横断的視座≠ナ『コストの抑制』と『品質の維持・管理』の両輪を滑らかに回転させ、居住者の満足に結び付けていきたい」
―業界の課題を挙げてください。
「実際には、新築工事の際の施工不良が原因で長期修繕計画では想定していない劣化が認められる事態もある。これはこれとして、新築工事の施工者にフィードバックすべきだ。一方で、新築工事の施工の良しあしとは無関係だが、想定外の劣化が発覚するケースもある。どのような場合であれ、われわれは、原因を究明すると同時に、目の前にある状況を見極め、最適解を求め、善処しなければならない立場にある」
「大事なのは、現場で起こった不測の事態を全て現場で解決し、お客様の満足度を向上させなければならない点だ。現場では、国交省などが作成したマンション改修に関する仕様書で対応しきれない事象が起こるケースは少なくない。そこでまずは、施工者やメーカーなどが持っている事例を集約し、より効果的に機能の回復と保全を実現するための道筋を探る方向を提唱したい。産官学が連携して改修手法を確立すれば、建物の資産価値を損ねないための一助となるはずだ」