賃貸管理には戦略構築とマネジメントが不可欠|建設ニュース 入札情報、落札情報、建設会社の情報は建通新聞社 中央

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レント

中城康彦


■住宅を中心としたわが国の賃貸市場は、どのように変化しようとしているのでしょうか。
「高度成長期以後、賃貸住宅を取り巻く環境として『建設すれば借り手がくっついてくる』という状況が続いたものの、バブル経済の崩壊によって、その構図も少しずつ崩れてきた。その反面、賃貸住宅のオーナーや管理業に携わる人々の意識はなかなか変わらず、単に『住宅という箱を貸す』という旧態依然とした考えから脱皮できない企業も少なくない。1日も早く、建設事業に比重を置き過ぎるのではなく、賃貸住宅の管理にも『高水準のサービスを提供する』という意識に切り替えるべきだ。ここ数年、空室率に改善の兆しが見えない状況の中で、自立的に賃貸管理の在り方を見直すべき時が迫っていることを自覚しなければならない」


■分譲マンションでは「管理を買え」という言葉があります。賃貸住宅における管理とは、どのような点に配慮すべきなのでしょうか。
「わが国は建設分野などのものづくりの面では、世界に誇れるだけの技術力を有している。建物の機能・性能のみを順位付けすれば、日本の賃貸住宅は世界トップクラスだろう。今後も建物の安全性や耐久性など施工技術で、世界をリードしていく存在となるべきなのは間違いない」
「ただ、賃貸住宅のオーナーサイドの目線から見れば、物件に最新鋭の設備や装置などを導入したとしても、いずれ時間が経過すればさらに新しい技術が開発され、その物件の目新しさは薄れてしまう。供用開始から一定期間経過した賃貸住宅は、新築物件と比較すれば、どうしても設備や機能面で見劣る部分が出てくる。このような築年が経過した物件でも、適切な管理に基づく追加投資によって修繕や機能を補完すれば、入居者の定着率を安定させマーケットで競争力を維持することが可能となるだろう」
「家賃や入居率の維持、管理コストの抑制など、管理会社に課せられる評価項目はいくつかある。ただ、これからの管理業務には、入居者に快適な居住空間を提供し続けるために『何を加えればいいのか』『何を持続的に進めればいいのか』を明確にし、実行することがより一層求められるはずだ」


■賃貸不動産経営管理士(※注1)の国家資格化に向けた検討会の座長も務められていますが。
「『賃貸不動産経営管理士』とは、入居者やテナントに対して管理受託契約時や賃貸借契約の更新・終了時に、重要事項の説明や情報の提供・提案などを担う資格者を指す。国土交通省が2011年に賃貸住宅管理業者登録制度を施行後、同資格の申込者が急増している」
「わが国では建設・製造・サービスなど多くの分野で、法に基づく資格の有無が重視される傾向にある。有資格者が従事することによって業務やサービスのクオリティーが保たれ、消費者も安心・納得するという構図が構築されている。日本では全人口の約40%が賃貸住宅に居住しているとの推計がある。少子高齢社会の中で、今後の賃貸管理業は、国民の安心・安全で豊かな暮らしの根幹に携わる業務であるとの見方もできるだろう」
「『フロービジネス』と言われる不動産流通業については、宅建業法の下で、宅地建物取引士の免許を持った国家資格者が携わっている。宅建業法に基づく企業の免許と個人の国家資格がそれぞれ確立された中で、取引の安心・安全が担保されている」
「一方、建てた後に適切な維持管理を図り、安全に使い続ける『ストックビジネス』である管理業について、賃貸住宅の適正管理に関連した法律は、現時点で整備されていない。管理資格の国家資格化がなされていない状況下では、会社であろうと個人であろうと賃貸住宅管理を担うことができる。能力や実績などの面でさまざまな企業が参入し、玉石混合していると言わざるを得ない。今後を見据えるならば、法制化された管理業法に沿って、一定の要件や水準を満たした企業・個人が管理業務を担うことは当然の流れだと考える」


■今後の賃貸管理業を見据えると、どのような能力を備えた企業や人材が求められるのでしょうか。
「日本では分譲マンション管理と賃貸住宅管理とでは別業態だが、米国では多くのケースで同一の管理会社やマネジメント企業が担っている。マネジメント企業はオーナーと一緒になって物件の経営戦略を立てて、専門家として管理や投資を実行する業務を担う。物件の購入・入れ替えや、購入検討時の調査業務などに携わることもある。必ずしも賃貸経営の専門家ばかりでないオーナーにとって、経営のパートナーでありサポーターでもある存在だ」
「わが国の経済環境や社会情勢、人口動態を踏まえると、賃貸住宅にとって建て替えのビジネスモデルは成立しないだろう。米国における管理業の形態を、そのまま現状の日本に当てはめることは難しいだろうが、オーナーや顧客の不動産に対し中長期の戦略を練り予算を立て、問題が発生した場合には改善のための追加投資を行い、場合によっては所有不動産を売却することで結果的に収益を上げ、一方で管理コストを下げるという管理業が担うべき幅広い役割を意識するべきだろう。だからこそ、経営パートナーとしての『アセットマネジメント』と、決定した予算内で物件の管理を進める『プロパティマネジメント』の双方の能力や専門知識を備えた人材が求められている。単なる『御用聞き』ではなく、中期的に的確なアドバイスが出来る人材の育成に向けて、企業は研修・学習制度の充実などに本腰を入れて取り組むべきだ」
「高齢者の単身居住や空き家の問題などを考えると、賃貸不動産には今までと違ったニーズが求められてくるはずだ。社会的な位置付けも相対的に高まり、より適切な管理が必要となる。一定のトレーニングを受けた専門家が賃貸住宅管理を担うことが、未来の賃貸住宅の在るべき姿なのではないだろうか。放置しておけばより顕在化するであろう、少子高齢化や地方の衰退などの問題に対しても、賃貸住宅が担う役割は少なくないはずだ」
「入居者にとって、この物件に長く住みたいと思わせるようなきめ細かいサービスを施せる企業が、今後の賃貸住宅管理業の中心的役割を担うだろう。対症療法ではなく、自らで管理の戦略を立て、居住者に安心・安全・満足を与えることのできる施策を考え、実行することのできる管理会社が多くを占めるような賃貸管理業界に成熟しなければならない」



(※注1)2007年7月に日本賃貸住宅管理協会、全国宅地建物取引業協会連合会、全日本不動産協会が団体ごとに独自に設けていた賃貸不動産管理の資格を統一資格として位置付けるため、「賃貸不動産経営管理士協議会」を設立し、賃貸不動産経営管理士制度を創設した。

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