世界遺産「富士山」の普遍的価値に対する一層の理解を深め、保全に向けた思いを後世に継承していく機運を高めるため、あす23日の「富士山の日」に、『「富士山の日」フェスタ2017』が開かれる。静岡県が山梨県と共に開催する。場所は、富士山の眺望も良い静岡市駿河区の日本平ホテル。第1部では、両県知事、両県議長があいさつし、「描かれた霊峰 01Art of Fujisan」(映像)の受贈、ビデオ紹介(両県の富士山後世継承の取組の映像による紹介)・SPAC公演が行われる。第2部では、「富士山と私〜富士山を深く究める=`」と題したパネルディスカッションが行われる。パネリストは、秋道智彌山梨県立富士山世界遺産センター所長、静岡県文化・観光部文化局のハドソン・マーク教授、松島仁准教授、大高康正准教授、田代一葉主任研究員、コーディネーターを内山純蔵静岡県文化・観光部文化局教授が務める。この他、県民参加型の「富士山の日」関連協賛事業が、市町・民間団体などの協力で県内各地で行われている。
ソフト事業と共に、富士山の麓の富士宮市内で拠点整備が進んでいる。静岡県が、富士山の自然、歴史、文化に加え周辺観光の情報提供を行う拠点として整備している(仮称)富士山世界遺産センター。場所は、富士宮市内の神田川西側、富士山本宮浅間大社の南側。センターのオープンに備えて、JR身延線側に富士宮市が駐車場を整備済みである。
建設工事は、2016年3月に着手して、建築工事は当初の計画通り順調に進み、17年1月末で約51%まで進捗した。建築工事、電気、機械設備工事は2017年7月で完了し、外構工事と内部の展示工事が10月までを予定。12月のオープンを目指している。建築工事の施工は、佐藤工業・若杉組JV、電気設備工事は住友・三和JV、機械設備工事は須賀・遠藤JV、外構工事は佐藤工業が担当。設計は坂茂建築設計(東京都世田谷区)が担当している。
構造は、基礎は鉄筋コンクリート造で、上物は全て鉄骨造。施設規模は、地上5階、高さ18.56メートル、延べ床面積3410平方メートル。現在は、展示棟の鉄骨工事・床躯体工事、北棟の内装工事・電気設備工事、西棟の外壁工事・内装工事・電気設備工事、外構工事は井戸設置工事を進めている。
敷地の西側に建物を配し、施設は北棟、西棟、展示棟の三つの棟に分かれ、富士山の歴史、景観、文化、魅力を紹介する。
施設の概要は、メインエントランスを入ると、1階の壁面を使って展示、南側にミュージアムショップ、カフェ、北棟にはライブラリー、西棟には研修室、収蔵庫などを設ける。1階には逆円すい形のスロープの出入り口がある。2階は、ブリッジで北棟、西棟につながり、北棟の映像シアター(265インチの4Kシアター)では迫力ある映像を見ることができる。西棟には企画展示室を設け、重要文化財の展示が可能なものとなる。3階も北棟・西棟(2階建て)の屋上部分に渡ることができる。展示棟の部分はガラスで覆われているため、北棟・西棟共に屋上のガラス内部は常設展示室、外部は屋外展示となる。展示棟は、らせん状に回りながら見ることができる博物館の展示も魅力の一つ。さらに最も上の5階まで上がるとガラス窓があり、一枚の絵のように富士山が切り取られて見える「ピクチャーウィンドウ」を配置する計画だ。
また、約7000平方メートルの敷地の中に、施設前面に水盤(約2200平方メートル)を設ける。
展示棟に設ける逆円すい形の構造体は半分が建物の外部に、半分は内部にある。構造体の外側に富士ひのきを使って木の格子を付け、県産材の活用を推進する。逆円すい形の構造は、柱が20本、柱梁は曲面が無く、直線材が折れているイメージ。中央のコア部分にエレベーター、階段があり、その上に5階床・屋根が乗る。逆円すい形のため、水平力に耐えるように外周柱を配置した。木格子は、ガラスの壁で建物外部と内部に仕切られるため、外部と内部で条件が違い、内部は不燃注入板とする。90角の木材に30の不燃注入板を張り、150角の角材とした後に120角の角材に削り出す。鉄骨は直線で造るが、木格子組みは3次元の曲線で造る。外部の格子は140角の角材から120角に削り出し、表面に超対候性木材撥水(はっすい)剤を塗る。また、森林認証制度のプロジェクト認証を取得予定だ。
設備関係の特徴は、くみ上げた井戸水を熱交換することで冷水または温水とし、空調に使用。さらに、水盤の水も2次利用水を使う点が挙げられる。
静岡県知事 川勝平太
2月23日「富士山の日」に寄せて
〜富国有徳の理想郷ふじのくに≠テくり着実に〜
富士山を後世に引き継ぐことを期する日として設けられた「富士山の日」は、明日、世界遺産に登録されてから4回目を迎えます。
昨年7月の第40回ユネスコ世界遺産委員会において、富士山の保全状況報告書の審議が行われ、他の世界遺産の模範とされるなど、高い評価をいただくことができました。ここに、関係の皆様に改めてお礼申し上げます。
県では、富士山の保存管理と情報提供の拠点となる「富士山世界遺産センター(仮称)」の整備を、2017年12月の開館に向けて進めています。同センターは北棟・西棟・展示棟の3棟から構成され、特に展示棟は、外壁に富士ひのきで製作した木格子を使用し、「逆さ富士」をイメージした逆円すい形が特徴的な施設です。このセンター整備を含め、保全状況報告書に記載した取組を着実に実行し、再度ユネスコから高い評価をいただけるよう、引き続き万全を期してまいります。
国土の象徴・富士山を擁する本県は、ふじのくに≠自称しています。「富士」という漢字は、「富」の下に「士」と書き、「富」を「心豊かな徳のある人」を意味する「士」が支えています。その「富士」の字に恥じないように、物心ともに豊かな富国有徳の理想郷ふじのくに≠テくりを着実に進め、世界の人々から憧れを呼ぶ「ジャパニーズ・ドリーム」の実現を目指してまいります。
明日は、正面に霊峰富士、眼下に駿河湾、三保松原、清水港などが広がる静岡市の日本平に、富士山を愛する皆様にお集まりいただき、山梨県と共に「富士山の日」フェスタ2017を開催します。
このイベントを通じ、富士山の多彩な魅力と保全活動に関する情報を全国に向けて発信してまいりますので、皆様の御支援・御協力をお願いします。