4月21日の市長選挙で初当選を果たした中平正宏四万十市長。日本最後の清流と言われる四万十川が流れるなど自然環境に恵まれ、また土佐の小京都と呼ばれる市街地を抱える同市は、テレビドラマの舞台になるなど全国からの注目度も高い。一方で高齢化や、将来的に発生が予測される南海トラフ巨大地震への対策も急務となっている。こうした課題に対し、どう取り組んでいくのか。中平新市長に聞いた。
■初当選を受け、まずはテーマを教えて下さい
「夢とビジョンのあるまちづくり」を目指していく。夢がなければ我慢もできない。まずは総合計画と四万十市版の産業振興計画を策定して市の将来像を示す。それを市民に受けてもらい、意見を聞きながら将来に希望の持てる四万十市を作っていかなければならない。
その前段になるのが産業の振興だ。一番は雇用の場を作ること。高齢化も進んでいるが、究極の高齢化対策は若い人が留まり、また戻って来られる環境を作ることであり、そのための施策を打ち出していく。特に農業と林業については、私が農業に従事していた頃よりもはるかに厳しい状況になっている。逆にこのことが転換への最後のチャンスであるかとも考えているが、多くの雇用の場をすぐに確保するのは難しい。その上でこれといった産業がない地方都市である四万十市では、雇用を生み出すためにある一定の公共事業の導入は不可欠と考えている。
■その公共事業について具体的に教えて下さい
公共事業に従事している子育て世帯は非常に多い。旧中村市との合併を推進してきた西土佐村の村長時代、小泉改革の中で地方が厳しい状況にあった。しかしながら四万十市では公共事業に関してはこの8年間、合併以前と変わらない発注量を確保してきたと思う。公共事業の削減で地域の建設業者が減少してしまうと、例えば南海トラフの巨大地震発生時や、西土佐地区での降雪時の除雪、台風に伴う災害時など、迅速な対応が困難になる。各地域で対応可能な建設業者を確保するためにも、地方に行けば行くほど公共事業は必要になるという現実を国に強く訴えていきたい。
■特に必要なインフラ整備は
幡多地域全体のことを考えるとまずは四万十市までの高速道路の延伸。また災害発生時のくしの歯作戦のことを考え国道441号と国道439号の整備。これらに通じる道も未整備のものが多いため、県道、市道整備を中心に対応していかなければならない。
■南海トラフ巨大地震への市としての対策を教えて下さい
沿岸部の津波対策については2014年度に一定のめどがつく見通し。その後は市街地の液状化対策、山間部の土砂崩れによる孤立集落の発生を防ぐ対策などに本格的に取り組んでいく。そのためには国の南海トラフ地震への特措法、国土強靭化法案などが欠かせないものであり、その実行力に期待をしている。
昭和南海地震では旧中村市の中心で液状化や家屋倒壊、火災などにより全国の中でも最も甚大な被害が出ており、来る南海トラフ巨大地震はそれよりも何倍も強い地震と予測されている。家屋の耐震化は急ぐ必要があり、国の施策として補助率のかさ上げなどをやってもらいたい。これに関しては南海トラフの勉強会などで高知県や近隣市町村、また他県との連携をとり、国に対し働き掛けていきたい。
■四万十市を舞台にしたテレビドラマがあるなど注目を集めています、観光産業について教えて下さい
四万十川に架かる佐田沈下橋には7月の連休で多くの人が訪れるなど、ありがたい状況だ。観光のステップアップのためには、先ほども述べたように高速道路の延伸が重要。国道441号の整備が完了すれば、愛媛県からのルートができる。松山市や広島市へのマーケットを期待して要望していきたい。また例えば電柱の地中化を行えば、町並みを小京都として売り出せるのでは。四万十川、小京都の町並みに加え四万十市の魅力は海産物を中心とした食事。食材と料理は全国のどこに向けても引けをとらないと思っており、アピールしていきたい。
■建設業界にひとことお願いします
地震、異常気象を含めて何かあった時には協力をお願いしなければならない。そして全産業の中で最も若い人の雇用の場になっている間違いない事実がある。農家に従事した経験から、適正価格を下回った競争では厳しいと考えている。ある一定の利益が得られるような仕組みづくりができるように、国の動向を見ながら対策を取っていきたい。