無電柱化事業により、緊急輸送道路では電柱の撤去が進む一方で、地域全体では電柱の新設数が撤去数を上回り、電柱の総本数はむしろ増加している――。総務省が2014年度に行った調査では、中部地域のこんな実態が浮かび上がった。災害対策という差し迫った課題への対応は進んでいるものの、無電柱化率の底上げには一歩及ばない、こうした状況を打開する施策は何か。無電柱化事業の課題を取材した。
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(2015/6/24)
【東海3県】区画整理宅地造成 連携が鍵に
〜無電柱化の推進策〜
−日本の無電柱化の状況
災害に強く、景観の改善にも有効な無電柱化事業。国土交通省によると、名古屋市内の道路の無電柱化率は道路延長ベースで5%となり、全国の政令市では大阪市と並んで最も高く、東京23区の7%に次ぐ水準にある。それでも、ケーブル延長ベースで100%のパリ・ロンドン市や道路延長ベースで95%の台北市とは大きく差をつけられている。
−総務省による実態調査
こうした中、総務省中部管区行政評価局は、14年4月から8月にかけて、愛知県と名古屋市を中心に無電柱化事業の実態調査を行った。無電柱化の実態を把握し、無電柱化事業を加速させるためだ。 同局の試算を踏まえ、愛知県内の道路の無電柱化率を主要な道路管理者別に見ると▽国交省中部地方整備局が23.4%▽愛知県が0.9%▽名古屋市が4.4%▽豊田市が0.5%―となった。 また、愛知県内の第一次緊急輸送道路の無電柱化率は、▽中部地方整備局が管理する直轄国道が11.9%(うち名古屋市内が29.7%)▽愛知県管理が1.9%▽名古屋市が44.6%―だった。 こうした調査結果を踏まえると、名古屋市内の第一次緊急輸送道路で無電柱化事業が進んでいることが分かる。大規模地震により電柱が倒れて道路をふさぎ、緊急支援物資などの輸送を妨げるという事態への備えは、ある程度進んでいると言える。
−電柱の総本数は微増
では、地域全体での無電柱化率の推移はどうか。愛知県内の電柱の本数を08年度と12年度で比べると、中部電力管理の電柱は891090本で1.5%増、NTT西日本管理の電柱は522030本で0.5%増と、微増または横ばいという結果になった。 背景にあるのは、無電柱化事業による電柱の撤去をはるかに上回るペースで進む電柱の設置だ。中部電力の電柱の場合、09〜13年度に愛知県内で1012本を撤去したが、13435本増加した。NTT西日本では、527本撤去した一方、2369本増加した。
−本数を減らすには
電柱が増え続ける理由は何か。全国的に人口減少が進む中、愛知県の人口は増加を続けている。中部管区行政評価局は、電柱の新設を伴う宅地造成や土地区画整理事業などを挙げた。 歴史的背景も異なる中で、一律に海外の都市と無電柱化率を競うことは難しい。とはいえ、電柱の数を減らすには、宅地造成や区画整理といった事業と無電柱化をどう結び付けるかが鍵になりそうだ。
■東海3県で見る 主要無電柱化事業
東海3県内で第2四半期以降に発注を予定している主な無電柱化事業は次の通り。(@工事内容A工期B発注時期・四半期、発注方式は、指名競争の多治見市を除き全て一般競争)
<国土交通省名古屋国道事務所>
▽平成27年度19号守山電線共同溝工事(名古屋市)@電線共同溝工ほか、延長580bA約20カ月B2
▽平成27年度1号豊橋瓦町電線共同溝西新町工事(愛知県豊橋市)@同、延長660bA約20カ月B2
▽平成27年度1号豊橋瓦町電線共同溝伝馬町工事(愛知県豊橋市)@同、延長720bA約20カ月B2
<愛知県豊田市>
▽豊田土橋土地区画整理事業道路築造工事その10(曙町)@電線共同溝工ほか、延長140bA210日B2
▽豊田土橋土地区画整理事業道路築造工事その11(曙町)@同、延長127bほかA210日B2
▽豊田寺部土地区画整理事業道路等築造工事(千石町ほか)@同、延長200bほかA240日B2
▽(都)昭和町線電線共同溝整備工事(喜多町)@同、延長80bA150日B4
▽市道豊田駅前1号線電線共同溝整備工事(その2)(喜多町)@同、延長70bA150日B4
<愛知県岡崎市>
▽岡崎駅東土地区画整理事業岡崎駅平戸橋線電線類地中化工事(羽根町)@電線共同溝、延長80bA5カ月B2
<愛知県刈谷市>
▽市道2-496号線道路新設改良工事(銀座)@電線類地中化ほか、工事延長160bA7カ月B2
<岐阜県高山市>
▽都市計画道路西之一色花岡線道路改良工事(その2)(昭和町1)@電線共同溝、延長250bほかA7カ月B2
<岐阜県多治見市>
▽電線共同溝整備工事(音羽町1ほか)@電線共同溝、延長200bA約3カ月B4
(2017/6/24)
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