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除染に潜むリスク 第1回 

見切り発車の巨大事業 建設業はどう備えるか

 2012年1月建通新聞連載

福島県で行われた除染作業の様子(写真提供・福島市)

 東日本の大規模な除染を国が先頭に立って進める―。野田佳彦首相は昨年9月の就任会見で、東京電力福島第一原子力発電所事故で発生した放射性物質の除染に政府全体で取り組む方針を示した。1月1日の放射性物質汚染対処特措法の施行に伴い、国が除染に投じる予算は、国会審議中の12年度予算案計上分を含めると1兆円を超えており、多くの建設業がこの新分野に参入しようとしている。一方で、広域にわたる放射性物質の除染は世界的にも前例がない。技術・工法の確立と実際の除染作業を同時並行で進めざるを得ない。予測困難なリスクがそこには潜んでいる。除染をめぐる関係者の動きを取材した。

 

【土木・建築とは大きく異なる】

 環境省は昨年12月、国が直轄で除染事業を行う「除染特別地域」と、市町村が放射線量を測定した上で除染する「汚染状況重点調査地域」を指定した。対象地域は9県113市町村に及ぶ。除去土壌と廃棄物は福島県内で約2800万立方b、そのほかの地域で約1300万立方bが発生すると試算されている。
 しかし、原子力発電所のサイト内を除けば、国内に除染の実績はこれまでほとんどない。海外に目を移しても、原子爆弾に使うプルトニウムを精製していた米国ワシントン州のハンフォード・サイトの除染など、前例は限られている。
 

 「目に見えない放射能の除染は、今までの土木・建築の作業とは大きく異なる」。福島県内の除染に携わっている田中俊一元日本原子力学会長は、除染について専門的な知見を持つ技術者を配置すべきと訴える。同時に田中氏は、この分野には、その専門家が極めて少ないという問題点も指摘している。

 

【積算基準や共通仕様も未整理】

 除染の発注に必要な積算などの準備も整っていない。環境省は、昨年12月に「除染関係ガイドライン」をまとめ、施設別の除染方法などを例示しているが、国の共通仕様書や積算基準は未だに整理されていない。環境省が3月末までにこれらをまとめる見通しだが、参考になる事例があまりに少ない。同省の除染チームでは「いったん作成した後に短期間で更新する、暫定的な内容にせざるを得ないのではないか」と話している。 重点調査地域に指定され、先行して除染を進める自治体は、独自に仕様や積算基準を設定して発注せざるをえず、発注者によって工事内容や価格にばらつぎが生じることも考えられる。あいまいな基準のままなら、入札時に無理な価格競争につながる恐れもある。
 

 ある原子力の専門家は、除染を米国の有人宇宙飛行計画『アポロ計画』を例え、その実行がいかに困難かを強調する。汚染状況重点調査地域に指定された自治体担当者は、本格化する除染作業を前に「課題しか見あたらない」とため息をつく。