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■「土木建設業と環境ビジネス最前線」 =第5回=〜「バイオマス発電ビジネスの実態」〜

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ここ2〜3年、環境ビジネスの中で、一番、国の補助金が捻出されている分野がバイオマス事業である。バイオマス事業とは、食品残渣や家畜糞尿、下水汚泥等の有機廃棄物からメタンガスを取り出して発電させたり、肥料や飼料にリサイクルしたりする事業のことである。廃棄物の中でも、約半分を占める有機廃棄物を有効利用しようとするものである。その中でも、地方自治体での補助金事業として比較的多く実施されてきたのが、メタンガスを活用した発電事業=バイオマス発電事業である。この事業の売上は、食品残渣や家畜糞尿、下水汚泥等の有機廃棄物の回収費用と処理費用、発電によって作られた電力販売の売上になる。
 実は、このバイオマス発電事業、ヨーロッパでは早くから取り組まれており、いろいろなインフラが整っていることもあり、日本に比べるとはるかに導入が進んでいる。例えば、発電に占めるバイオマス発電の割合を、国の政策として高めに設定して、電力会社に規制を付けたり、地域のバイオマス発電事業により作られた電力を国が高い単価で買い上げたり、様々な施策を実施して、事業を普及させてきた。 
これらヨーロッパ諸国の動きに対して、これまでの日本の場合は、従来の化石燃料・原子力依存から脱却できておらず、ここ2〜3年での補助金が増えたとは言え、その内容についてはまだまだ物足りないものである。
 ところで、現実的なバイオマス発電事業についてだが、補助金や行政からの特別な施策が無い限り、事業性・収益性が見込めていないというのが実態である。現在動いている事業の大半はコスト的に赤字で、民間企業の事業として全く成り立っていないという状況なのである。設置したがまだ未稼働という地域もある。その理由は大きくは二つ。一つは、食品残渣や家畜糞尿、下水汚泥等の有機廃棄物からメタンガスを取り出す技術がまだまだ未熟で、コスト的に効果的効率的な手法がまだ開発されていないこと。実際、既存のバイオマス発電装置の場合、肥料・飼料リサイクル装置に比べると3倍以上のイニシャルコストがかかっている。最近では、肥料・飼料リサイクル事業の事業性・収益性は以前よりも高まってきているので、この肥料・飼料リサイクル装置並みのコストになれば、発電事業の方も事業性・収益性が確保できるかもしれない。2つめの理由は、他の廃棄物に比べると家畜糞尿の処理コストが著しく低いということ。売上の柱の1つである廃棄物の回収費用&処理費用による売上単価が著しく低い(他の有機廃棄物の1/10以下)ので、収益構造が良くならないのである。
 以上、整理すると、このバイオマス発電事業が普及していく条件としては3つ。@補助金がイニシャル投資の半分くらい出る。A家畜糞尿の処理費用が10倍以上になる。B国の施策として、発電された電力を電力会社が高い単価(通常の買電単価の3倍程度)で買い取らせる。これらすべてとは言わないが、これら3つのうち2つでも成り立てば、バイオマス発電事業は飛躍的に伸びるだろう。
 今のところ、「環境には良いが、コスト的に合わないので普及しない」典型的な事業なのである。いくら環境に良くても経済性を失っては上手く行かない。つまり、環境ビジネス成功のポイントは、「『環境性』と『経済性』の両立」、言い換えると、「環境に良くて、経済性も良い」、あるいは、「『エコロジー』と『エコノミー』の両立」と言えるのである。

船井総合研究所 環境ビジネスコンサルティンググループ
http://www.eco-webnet.com/

執筆者プロフィール

船井総合研究所 第八経営支援部 部長 菊池功