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■建設業の会社法対応=第3回=

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経審の申請における財務諸表等の記載方法においても、建設業法施行規則の記載要領に「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行をしん酌」することが明記されています。これは、従来の記載要領にあった、「貸借対照表は、会社の財産の状態を正確に判断することができるよう明瞭に記載すること」、「損益計算書は、会社の損益の状態を正確に把握することができるよう明瞭に記載すること」等という表現を改めたものですが、その記載に係る会計基準を明確化することで、各社の任意の会計処理から企業会計原則等(中小企業であれば、「中小企業の会計に関する指針」等)を会計処理のよりどころとしてしん酌するべきことを明確にしたといえます。
なお、「しん酌する」とは、一般的に、「くみとること」、「照合し、取捨すること」という意味です。したがって、中小建設業の経営者は、この基準の内容をある程度理解しておく必要があり、自社の会計処理がこの基準に適合するよう努めなければなりません

このほか、会社法では、会計監査人を設置していない企業(株式譲渡制限会社=国内企業の大多数)の計算書類の作成に関して、貸借対照表、損益計算書に加えて、株主資本等変動計算書の作成が要請され、さらに個別注記表が求められることを明らかにしました(会社法第435条第2項)。ここで、求められる個別注記は、重要な会計方針に係る事項に関する注記、株主資本等変動計算書に関する注記、その他の注記とされています。(会社計算規則第129条)。

また、「会計帳簿の作成及び保存」(会社法第432条第1項)では、「適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない」として、適時性・正確性に明文の規定が置かれています。つまり、会計帳簿の作成における適時性の要請から、『経理処理は1ヶ月まとめて後でやればよい』というような処理は認められないことになります。

もう一つ重要な留意点として、会社法では、特例有限会社を除くすべての株式会社に決算公告が義務付けられていることがあげられます(同第440条第1項)。すなわち、株式譲渡制限会社であっても、官報または日刊新聞紙あるいはインターネットによる公開により、決算公告が義務付けられていますので、注意が必要です。

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褐嚼ン経営サービス