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■建設業の会社法対応=第4回=

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コンプライアンスとは法令や社内規則等の遵守を意味しますが、近年、食品メーカーの食中毒事件、自動車メーカーのリコール隠し、鉄道会社の有価証券報告書の虚偽記載、銀行の検査妨害など企業不祥事が多発しており、また、建設業界でも入札談合や贈収賄事件が新聞やニュースで取り上げられています。最近では、単なる法令遵守だけではなく、組織内のルールの確立や人々の倫理観にまで踏み込むなど、コンプライアンスの意味合いが広くなりつつあります。
 企業が不公正な行動をとったときの社会的批判は、従来にも増して厳しくなっています。このような、不公正な問題を引き起こさないリスク管理体制を築き、企業不祥事の発生を未然に防ぐ予防法学的な対応がコンプライアンス経営には求められます。
そこで、建設業界に関連するいくつかの法的側面について検討してみましょう。

1.入札契約適正化法
建設業法では「元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得た場合」には一括下請負(いわゆる丸投げ)も可能となっていました(第22条第3項)。
しかし、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(入札契約適正化法)では、公共工事における一括下請負が禁止され(同法第12条)、同法に基づく国土交通省の通達により、「一括下請負」の基準が明確にされました。
「一括下請負の禁止について」(平成4年12月17日建設省経建発第379号:最終改正平成13年3月30日国総建第82号)によれば、一括下請負に該当する場合の判断基準を要約すると「元請負人がその下請工事の施工に『実質的に関与』していない」場合ということです。
『実質的な関与』を確認する方法は、次の2点です。

1)元請負人が自ら総合的に企画・調整及び指導を行っているか
これは、施工体制台帳の記載内容、監理技術者の業務内容等から判断します。
具体的には、@技術者専任、A発注者との協議、B住民への説明、C官公庁等への届出等、D近隣工事との調整、E施工計画、F工程管理、G出来型・品質管理、H完成検査、I安全管理、J下請けの施工調整・指導監督等を元請負人が自ら行っているかどうかを確認します。
元請負人が自ら行っていなければ、『実質的な関与』がない、ということで一括下請負に該当します。

2)現場に元請負人との間に直接かつ恒常的な雇用関係を有する的確な技術者が置かれているか
具体的には、監理技術者資格者証や健康保険被保険者証等で、元請負人との雇用関係を確認することになります。
置かれていない場合は、『実質的な関与』がない、ということで一括下請負に該当します。

受注した建設工事を発注者の同意なく一括して他人に請け負わせることは、発注者との信頼関係を裏切る行為であり、違反した場合は、建設業法に基づく監督処分(営業停止)等を受ける可能性があります。

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褐嚼ン経営サービス