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■「社労士からみた建設業経営」=第4回=

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一般的にその契約が請負契約として正当なのかどうかということに関して、民法632条に記載がされており、簡単に言うと、注文者と請負業者の間で仕事を完成することの対価として報酬を得る契約であり、注文者から仕事の進捗状況の報告や仕事のやり方の範囲程度の指示であれば、請負契約としては正当化されます。
しかし、注文者から請負業者(一人親方を含みます)や、請負業者の労働者に細かい指示をして使用従属関係にあったり、労働時間の管理や残業を命じたり、また報酬としてではなく賃金として支給をしている場合、偽装請負の可能性が極めて高くなり、さらに建設業の場合、現在禁止されている労働者派遣に該当してしまう可能性もあります。
もし、そういった偽装請負と判断されてしまうと当然、厳しい罰則が科せられることになり、更には、請負ではなく注文者側の労働者としてみなされる可能性も高く、適正な請負であれば、本来加入させる必要の無い労災保険や雇用保険、健康保険、厚生年金などの加入義務と労働基準法の適用により、遡っての未払い残業代の支払いなども最終的には発生することになります。
こういったことは、単なる書面の契約上の問題だけではなく、業務の実態に即して判断されますので、建設業に多い請負契約が、実態として、正当化される請負なのか、それとも、書面上は、請負だが実態としては、派遣契約に近い場合、早期に注文者と請負業者の契約の見直しや、請負業務としての適正な内容に是正をする必要があります。
 ここのところ、正社員とこういった請負労働者の間の格差問題に対して、徐々にその是正が行われており、ニュースなどでも大手企業が偽装請負で取り上げられることも多くなっております。
各種団体が配布している偽装請負チェックシートでまずは確認をし、必要であれば専門家の助言を求めて早期に是正をしていくことが建設業経営には、必要なときなのかもしれません。


執筆者プロフィール

冨田社会保険労務士事務所 冨田 正幸