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■建設業の会社法対応=第5回= 〜建設業に求められるコンプライアンス(2)〜

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改正独禁法では、迅速に競争秩序の回復を図るため、従来の勧告制度が廃止されました。すなわち、審査を経て、事前通知(排除措置や課徴金)をしたあと、事業者に意見申述・証拠提出の機会を与える等の手続きを踏んで排除措置命令、課徴金納付命令などが行なわれます。審決が確定しますと、違反行為者と競争関係にある者又は一般消費者は、違反行為者に対して損害賠償請求ができるとされ(第25条第1項)、違反行為者は故意又は過失がなくてもその責任を負うことになり(同条第2項)、民法の不法行為の考え方よりも厳しくなっています。
違反で多額の課徴金を課せられたり、損害賠償請求されたりすることで、企業経営の屋台骨を揺るがすことになりかねません。

次に、建設業界にとって重要な建設業法を見ていきましょう。
<建設業法関連>
国土交通省が地方整備局に出した通達「経営事項審査の虚偽申請における資格認定の取り消し等について」(平成15年2月10日国地契第87号)では、競争参加資格の内容認定に、虚偽申請された経審が使用されていることが明らかになった場合で、次のいずれかの場合は、特に「悪質性が高い」ものとして、競争参加資格の認定を取り消すことになっています。
1)故意に経営事項審査の虚偽申請したことにより、建設業法に基づく監督処分等を受け、その処分を受けた日から過去2年以内に同様の故意の経営事項審査の虚偽申請により監督処分を受け、少なくとも1回は経営事項審査が競争参加資格に使用された場合
2)経営事項審査の虚偽申請のため、正しく申請される時と比較し、経営事項評価点数に大幅な変動が認められた場合

これらの場合、有資格業者名簿の有効期間(2年間)内における競争参加資格の再申請は認められません。また、特に「悪質性が高い」とまでは認められない場合には、指名停止措置で対応するとしています。
さらに、建設業法では請負契約書の作成が要請されていますが(第19条)、契約書や受注書がないまま「口頭」での建設工事契約が行われたり、また請求時に請求金額が一方的に決定され、かつ支払期日も長期にわたったりするなどの法令違反が行われると、訴訟になるケースも考えられます。

こうした直接的なペナルティのほか、インターネット等で実名が載るなどの信用失墜に及ぶケースもあります。このように、市場や発注者、消費者からの支持を得続けるにはコンプライアンスを常に意識する必要があります。
換言すれば、建設企業は「国民の財産や社会資本の整備に深く関与している」という公的使命の自覚を持つことが必要であり、まさに建設業界こそ、「コンプライアンス経営」に取り組んでいくことが重要となるのです。 (連載おわり)

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褐嚼ン経営サービス