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■建設業の資金調達の進め方=第1回「金融機関の現場の変化」

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 今回は、金融機関の現場の変化を中心にお話しします。現在、金融行政の変化によって、金融機関には次の変化が出てきています。
@メガバンク等の融資攻勢
メガバンクや大手の地方銀行等は無担保・無保証の「ビジネスローン(クイックローン)」を中小企業に対して融資商品の主流とし、融資の拡大を積極的に行っています。また、法人取引の新規開拓をすべく専門店舗「法人営業所」の開設も進んでいます。中小企業白書2006年版によると、クイックローンの利用は従業員規模の小さな企業ほど多く、業種別では業況の厳しい分野に属する建設業が多いようです。
Aスコアリングモデルの活用
一般的に「ビジネスローン」と呼ばれる、クレジットスコアリング形式の中小企業向け融資が増えています。クレジットスコアリングとは、信用リスクと関係が深いと考えられる諸変数(企業属性、財務状況など)から融資実行の可否や融資条件を決定する融資手法です。その背景には、金融機関の担当者数の減少や、効率的な融資審査を目指す方針があります。
B地域金融機関の活動力の低下
地域金融機関は、不良債権処理対応、店舗の全面的見直し、組織の効率化等の遅れから、行員数の減少に収益が追いつかず、行員の疲労感が漂っています。合併や統合、支店の統廃合など特殊な事務手続きに追われ、肝心の顧客との折衝時間が激減しています。また、効率化による人員削減により担当者一人当たりの顧客数が増加し、ますます一社当たりの接触が減ってきました。そのため、財務諸表以外の情報がどんどん減少しています。その上に従来は貸出現場担当者には、2〜3年先輩や課長代理、課長がOJTを含めて面倒をみてきました。このような密着した指導が企業を見る目に最も役にたっていました。しかし現場の行員のみならず、上司の数も減っていますので、OJTが出来なくなっています。それによって企業を見る目がどんどん弱くなっています。
 このような中で、金融庁は、中小企業の融資判断を行う上で、財務面のみではなく様々な視点(企業の強み)を加味する必要を叫んでいます。これは金融庁より「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」という形で公表されています。
融資を受ける企業にとっても、金融機関の変化や、その背景にある金融行政の変化を知ることは、金融機関担当者と互角に話をするためにも、とても重要です。
次回は、金融機関の貸出行動の指針となる「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」についてお話しさせて頂きます。

執筆者プロフィール

鰍ンどり合同経営 中小企業診断士・取締役 藤井一郎