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■国交省の法令順守強化、取締りで問題点と解決策発見を

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 国交省は、4月から各地方整備局に地整局長をトップとした「建設業法令遵守推進本部」を設置した。先月14日、大森雅夫大臣官房審議官は、建政部長(推進本部副本部長)らを集めた担当部長会議で「ルール違反を行った企業に対しては、市場からの退出を含めた厳しい対応によって公正な競争基盤を確立することが大切だ」と訓示した。
 これは、建設産業政策研究会の第2次中間とりまとめで、適正な競争環境の整備を図るため、建設業者の法令違反行為への対応強化を掲げていたことを具体化したものだ。やるべきことをやっている企業が、やっていない企業と競争し、損を被るようであってはやはりおかしい。
 推進本部では、施工体制Gメンによる立ち入り調査件数を現行の400件から1000件に増やすという。ぜひ、徹底して違反行為を取り締まってほしい。
 その上で、個々の企業の違反行為だけでなく順法行為も含めた幅広い視野で、発注者から現場までの建設生産システムに潜む問題点と、その問題が発生してくる地点にまでさかのぼって要因を明らかにし、場合によっては従来の枠組み、省庁の壁を超えた問題解決への対応を図るべきだ。
 研究会の中間とりまとめでは、例えば技能労働者の「社会保険・労働保険への加入」も守るべき一つとして指摘した。当然、これは推進本部の取り締り対象でもある。「建設産業が技術者・技能者から見て魅力ある産業への転換を図る」ためには重要だ。法定福利制度をないがしろにしていいはずがない。
 しかし、技能労働者の労働条件の改善や、雇用環境の整備を一体誰が担うというのか。直接的には専門工事業者であろう。中小・零細な専門工事業者に技能労働者の「社員化」という重い負担を求めることは、現在のような受注環境下にあってはそれほど容易ではない。法令順守を求めれば求めるほど、一人親方が増え、偽装請負が進行する恐れはないのか。
 芝浦工業大学の蟹沢宏剛助教授が本紙で指摘しているように(「建通ネットワーク」2006年12月8日付け)、「雇用の枠を外れた労働者」に対しては「新たな仕組みの模索」も必要となってくるだろう。
 法令順守が強く求められることは、知らずに違反行為を犯している場合もあり企業にとってはリスクが高まる。確かに懸念材料といえるが、建設産業全体として見れば問題を明らかにして解決の道筋を付ける好材料になる。そのように受け止めたいし、そのような取り締り強化でなければならない。