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■建設業の資金調達の進め方  第3回「技術力の評価とは」   

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前回は、金融機関の貸出行動指針である「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」を中心に、金融機関の融資は『財務内容だけでなく、企業の強み(技術力、販売力や成長性等)を総合的に勘案し判断する』とされていることを確認しました。今回は、技術力について、建設会社としてどのように金融機関にアピールできるかを考えてみたいと思います。
 ここで金融機関が重視している3ポイントをまとめてみましょう。
1特許権や実用新案の存在だけでなく、金融機関の担当者が日々活動  の中で、知りえた企業の技術力であれば、評価することができます。
2新規受注を含めて、受注の確実性、業績の確実な改善性を見込める  かどうかが重要です。
3その技術力を活かして、今後の事業の継続性や収益の向上に懸念がな いことも十分検証する必要があります。
 この3ポイントについて、具体的に建設会社が対応すべきことは、以下3点になります。
@技術力のアピールについては、大学や研究機関と連携して特許等研究活動を行っている時は、ぜひ資料や書類を金融機関担当者に説明しましょう。また、年間の研究開発費の内容、工事評点、ISO評点等も技術力をアピールする大きな資料となります。また、経営革新の実績なども大きなアピール材料です。もし具体的な資料が少ないという場合でも、自社の技術力が他社と比較してどのように優れているか等を、担当者とのコミュニケーションの中で、説明することが重要です。また、施工能力として工事の表彰の実績も十分なアピールになります。
A受注の確実性、業績の確実な改善性とは、短期的な企業の業績を判断するための材料と考えてよいでしょう。ここではまず、受注一覧表を作り、獲得確実性をランク付けし(A〜Dというのが一般的)、金融機関に提出することです。長期的な受注予想を作ることは難しいかもしれませんが、来年度くらいは何とかなるのではないでしょうか。社長、幹部、営業担当者、そして目端の利いた現場担当者(意外と最大の営業マンです!)とじっくり会議を行って受注一覧表を作成していきましょう。こんなの無理だよとか取れっこないよとかの発言は極力控えて、まずは前向きに受注可能な案件を出していきましょう。
B今後の事業の継続性や収益の向上とは、自社の長期的な収益が安定・向上することを指します。それらを説明するためには、受注一覧表だけでは片手落ちです。長期的に、当社の技術力を活かして攻めるマーケットはどこなのか、そのマーケットが将来その程度拡大するかを説明する必要があります。民間・公共という大まかな分類ではなく、各工事の中身や顧客などを分けて分類します。@、Aと比較すると、一番説明に苦労されるのではないでしょうか。ここでこの説明に必要なものが、中・長期経営計画なのです。
 @、A、Bともに、一番重要なことは、金融機関担当者との密度の濃いコミュニケーションであることは言うまでもありません。
 次回は、販売力(営業力)について、建設会社としてどのように対応できるかをお話しする予
定です。

執筆者プロフィール

鰍ンどり合同経営 中小企業診断士・取締役 藤井一郎