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建設業の資金調達の進め方  第6回「会計の重要性」

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従来、建設会社にとって会計とは、税額計算を行うため、経営事項審査の申請のため、そして金融機関に提出するため、等の道具でしかなかったかもしれません。しかし、会計情報は、本来、企業内部の経営管理すなわちマネジメントに活用するべき性質のものであり、その視点を重視して企業経営を行っていくことが必要不可欠です。また、(これが極めて重要なのですが)適切な会計基準に則り、会社の実態を説明することが金融機関に求められています。今後、会計情報の活用状況が、資金調達や金融機関取引の円滑化を左右する大きな鍵になると言えるのではないでしょうか。金融機関は、会計そのもののプロではありません。どのような会計基準を活用しているのか、また、どのようなプロセスで会計データを構築し活用しているのかについて多くの知識をもっているわけでもありません。しかし、金融機関と企業を結ぶ「言葉」は財務数値、財務情報が大半です。よって、会計そのものに強くないかわりに、目に見える会計の正確性・信頼性を求めます。だからこそ、会計参与のような、会計のプロががっちりと企業を見てくれることを喜ぶのです。
 金融機関に納得してもらう経理処理や財務情報の提供を行うに当たり、取得をお勧めし、活躍してもらいたいのが建設業経理事務士です。金融機関に「信頼できる経営」をする企業として、適切なアカウンタビ
リティ(会計情報による説明責任)を促進する中心的な役割を果たし
ます。すでに経営事項審査において、建設業経理事務士の上級検定合格
者は、経営評価の対象となっています。それに加え、商法、建設業法、
税法の会計関連規定等を十分に咀嚼している経理担当者の存在は、金融
機関に適切な情報を提供する役目も大きく担っていると言えます。
「新会社法」で新たに創設された「会計参与」と「建設業経理事務士」
の両者が建設業会計の実務上でどのように関係するのでしょうか。会計
参与は、公認会計士か税理士の有資格者に限定されています。もちろ
ん、会計参与が建設業経理事務士の有資格者であることに差し障りはな
く、むしろ建設業会計の特性に鑑みれば望ましいことです。
一方で、会計参与制度の導入とは関わりなく、建設会社で経理に責任を
負う取締役や執行役が、建設業経理事務士の有資格者であることは、意
義があります。建設業経理事務士の有資格者を、会社の経理に責任を負
う取締役等役員に選任することも一考です。
今回は会計の重要性として「建設業経理事務士」活用等についてお話
しました。次回は、経営計画の策定及びその後のモニタリングの手法として、近年急速に注目を浴びてきたバランス・スコアカードについてお話しする予定です。

執筆者プロフィール

鰍ンどり合同経営 中小企業診断士・取締役 藤井一郎