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建設業の資金調達の進め方 第8回「バランス・スコアカードの活用法」

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前回はバランス・スコアカード(以下BSC)の役割についてお話しました。最終回となる今回は、建設会社としてBSCをどのように活用するかについて考えたいと思います。 
BSCは、前回お話したように4つの視点(「財務」「顧客」「業務プロセス」「学習と成長」)で経営をモニタリングしていくツールだと考えられます。その際には、厳選された重要業績評価指標(以下KPI)を適時確認します。建設会社で使う際のポイントを視点別に確認していきましょう。
@財務
「財務」の視点とは、「金融機関はどう見るか」の視点と言えます。財務戦略は、成長期には「成長性」、持続期には「利益率」、そして収穫期には「キャッシュフロー」の最大化を志向します。まず、最終的に会社の戦略と実行が、▽顧客価値の増大=既存顧客の離反防止、新規顧客の獲得▽資産管理の効率的運用=コストダウン―に的確に結びつき、数値として現れてくることが重要です。KPIとしては、例えば原価管理システムの導入等になるでしょう。
A顧客
「顧客」の視点とは、TQCで最も重要視してきた「顧客はどう見るか」の視点と言えます。ここでは、財務目的に対する収益の源泉と位置付けられています。例えば、ここでのKPIとして既存顧客への紹介依頼件数を設定し、これを増加することで、特命工事件数が増加した場合、顧客価値の増大に結びつくことになります。
B業務プロセス
「業務プロセス」の視点とは、会社のコア・コンビテンシー(強み)を見極め、評価するために「どのような業務プロセスに秀でる必要があるのか」の視点と言えます。
つまり、顧客満足に大きなインパクトを与え、さらにマーケットリーダーであり続けるために必要となる、重要な技術とスキルを意味します。例えば、KPIとして施工前打ち合わせ回数の増加により、追加変更工事率が減少となる場合、コストダウンに結びつくことになります。
C学習と成長
「学習と成長」の視点とは、企業価値に直接関係する「改善と価値創造を継続できるか」の視点と言えます。ここでは、組織が長期的な成長と改善を生み出すために構築しなければならないインフラを意味し、(@)人材、(A)情報システム、(B)モチベーションや権限委譲からなる組織プロセス、から構成されます。つまり、従業員のスキルを再構築し、情報技術やシステムを強化し、組織プロセスを調整するための資源分配を示すものです。例えば、KPIを研修受講率とし、これが向上することで資格取得者が増加した場合、やはり業務プロセスを継続できる人材の育成に結びつくことになります。
今回のメルマガでは、「建設業の資金調達の進め方」についてお話しました。全編を通してお話したかったことは、金融機関は変化していますので、今まで通りの対応だと、資金調達がうまくいかない場合が出てくる可能性があると言うことです。金融機関担当者との、密度の濃いコミュニケーションが今まで以上に重要となります。そこでは、中・長期経営計画等の作成や、金融機関へより一層の情報開示が求められるでしょう。そうした際に、私が今回お話したポイント等を参考にして頂ければ幸いです。

執筆者プロフィール

鰍ンどり合同経営 中小企業診断士・取締役 藤井一郎