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知らなかったではもう遅い!労務管理の落とし穴?! 第2回 有給休暇を請求してきた社員に「忙しいので有給休暇を取ってほしくない」は有効か?

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 人手が足りないくらい忙しい時に有給休暇を請求されると、本音のところは「有給なんか取ってる場合じゃないんだけどなぁ、他の社員が働いているんだから、その辺りは考えて欲しいな」と思われる事も多いのではないでしょうか。

 労働基準法では、社員が一定の時季に年次有給休暇(以下、有給休暇とします)を請求してきた場合に、会社は事業の正常な運営を妨げる場合でなければ、社員が請求してきた時季に有給休暇を与えなければならないとしています。これを「時季指定権」といいます。

 一方、社員の指定した時季に有給休暇を与えることが会社の事業の正常な運営を妨げる場合は、有給休暇の取得の時期を変更することができるとしています。これを「時季変更権」といいます。
 この時季変更権が認められる場合の判断として、
(1)事業規模と内容
(2)業務の性質・内容
(3)業務の繁閑
(4)代替者の配置
などを総合的に考えた上で判断されるとしています。

 例えば、有給休暇を取得する日に行う予定の業務が、本人が持っている専的知識を必要とし、その社員にしかできない業務であり、また部門の人数も少なく、代替社員の確保もできない状況にある場合などは、事業の正常な運営を妨げる場合にあたると考えられ、会社の時季変更権が有効となると考えられます。

 会社は社員の代わりの人員を確保する努力をしないまま、単に「忙しいから」という理由だけで「時季変更権」を主張する事はできず、どうにも代わりの者がいなく業務がストップしてしまうという状況にない限りは、本人からの請求を拒む事は難しいとなります。

 これは慢性的な人員不足を理由として代替要員を確保する努力をしていない場合も同様とされますので、時季変更権を行使をする上では、会社は社員に対して有給休暇を与える配慮をしている事が前提となり、また慢性的に人手不足であるならば社員の増員に努力をしている事がポイントとなります。

執筆者プロフィール

なりさわ社会保険労務士事務所・特定社会保険労務士 成澤紀美

成澤紀美
なりさわ社会保険労務士事務所・特定社会保険労務士
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