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建設業社会保険未加入問題 個別相談会の現場から 第5回 「必ずある!年金事務所による調査」

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 税務署、労働基準監督署などと同じように、年金事務所もまた、企業に対し調査を行っています。年金事務所による調査にはいくつか種類がありますが、今回は社会保険未加入問題との関連が強い「加入時調査」について触れたいと思います。

 加入時調査は、新たに社会保険加入した企業に対して、そこから概ね一年以内に行われるものですが、「加入させるべき従業員に未加入の者はいないか」「保険料額を決定付ける給与額が正しく届出られているか」という二点が重点的に確認されます。

 実は加入手続き時は、申請者(企業)が手続書類に記載した加入者や給与額でそのまま受理され、その内容の証明としての書類添付は原則として必要ありません。よって届出内容と実態にずれがあったとしても、加入の段階では通ってしまうことも多いのです。
 
 調査時は、「源泉所得税納付書控え」「賃金台帳(給与明細)」「タイムカード・出勤簿」といった書類の提示を求められ、実態と加入時の手続きとの整合性が確認されます。そしてそこに相違があれば、速やかに訂正手続きを取るよう指導されるのです。

 社会保険未加入対策がスタートして以降、現在までに数多くの企業が適用事業所となりました。しかしその中には、いざ調査となれば指導を受けることが目に見えているような、不十分な加入となっている企業が少なからず存在しているのが現状です。

 不十分な加入例として散見されるのは、個々の事情により加入の必要を迫られた企業が、保険料負担を抑えるために一部の役員・従業員のみで加入手続きを取っているケースです。
 
 このようなケースでは、企業単位の社会保険加入はなされているため、過去のコラムで触れたような建設業許可や現場入場、また年金事務所からの加入勧奨の面でも、一旦の解決をみた形となっているのですが、そのような状況につい安心してしまうことには危険性があります。

 なぜなら、調査時に指摘されうる要因を残して加入することは、単にリスクを将来へと先送りしているに過ぎず、自社における未加入問題の解決にはなっていないからです。しかもその将来というのも、概ね一年以内という実に近い将来なのですから、とにかく加入することだけを急ぐことは、その場しのぎの判断であると言わざるを得ません。

 「社会保険加入後には調査がある」、未加入企業が加入検討をする際には、この視点をもつことが重要であると言えるでしょう。

執筆者プロフィール

社会保険労務士法人エール  社会保険労務士 加藤大輔

加藤大輔
社会保険労務士法人エール  社会保険労務士
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社会保険労務士法人エール http://www.sr-yell.com/