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ストック時代の建築積算と価格情報 第3回 「プライスのばらつき」

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発注者としては契約価格となるプライスが大いに気になるところですが、実際の価格はどのような傾向になっているのでしょうか? 一般財団法人建設物価調査会が毎年発行している「JBCI」(ジャパン・ビルディング・コスト・インフォメーション)http://jbci.kensetu-navi.com/ には契約価格(プライス)を分析したユニークな情報が掲載されていますので、その中からいくつかの情報を紹介します。

図2は2012〜2014年にかけて東京圏で建設されたマンションの床面積単価の分布傾向です。単価は契約金額(税抜き)を床面積で除しておりますので、まさにプライスの傾向と考えることができます。平均値は1u当たり約24万円(坪当たり約79万円)でありヒストグラムの最頻値とほぼ一致していますが、低額や高額なものもあり統計値のようにとても一つの数値に収まるものではありません。

プライスは各当事者が過去の経験等から主観的に判断する場合がありますが、実務ではJBCIデータと案件のプライスとを比較して、価格水準を客観的に評価することが行われています。統計値は母集団を代表する情報として利用されますが、建築プロジェクトは個別性が強く、評価するプライスが平均値や中央値等の代表値と乖離(かいり)する場合はなんらかの個別的要因が寄与していると考える必要があります。

図3は総工事費を構成する科目金額のウエイトです。積算に興味のない方はこのような内訳には興味を示さない場合もありますが、ストック時代において建物を長期間活用するには必ず把握しておかなければなりません。例えば過去の耐震偽装などにみられるように、構造躯体の費用を大きく削減した結果どのような結果を招いたのかは多くの方々の記憶に残っているはずです。したがって、建築の各部分の性能と価格との関連性を当事者間で十分認識しておくことがが、ストック時代では特に重要となります。

執筆者プロフィール

一般財団法人建設物価調査会 総合研究所経済研究部長 橋本 真一

橋本 真一
一般財団法人建設物価調査会 総合研究所経済研究部長
s-hashimoto@kensetu-bukka.or.jp
一般財団法人建設物価調査会 http://www.kensetu-bukka.or.jp/