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ストック時代の建築積算と価格情報 第4回 「プライスの内訳もばらつく」

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図4はマンションのプライスを構成する科目の統計値と分布を示しています。マンションは前回お示しした科目平均値で考えると全体の約32%が構造躯体、約31%が仕上げ、約19%が設備となっています。構造躯体は建物の規模(階数・面積等)や品質(構造強度)、仕上げや設備はグレードや性能により価格差が生ずるものと考えられますが、ここで重要なことは、各部分の耐用年数です。

建物の性能は時代と共に向上しており、構造躯体は人間の寿命以上の耐用年数が十分期待できます。したがって新築時には品質に見合った適切な費用を計上する必要なことは言うまでもありません。一方、仕上げや設備は性能劣化や陳腐化などから将来にわたり修繕や更新が必要となります。その時には既存撤去など新築時には存在しない費用も発生し、場合によっては新築以上の費用を要することもあります。
 
ストック時代では発注者や所有者は建物をどのような期間活用していくのか十分考え、性能と工事費を理解して維持保全しなければなりません。そのための価格情報が当事者間で広く共有されれば、少なくとも過去の耐震偽装事件のような構造躯体コストを軽視するような悲劇を防ぐこともでき、将来確保すべき仕上げや設備の更新費用もイメージできます。さらに不動産流通の場でも新築や改修に要した部分別コストが建物の品質評価に役立ちます。

積算には膨大な情報と労力が必要ですが、その目的は最終的な総工事費を導くことだけではありません。積算業務に携わる技術者は建物を形成する各部分の品質とコストとの評価を行い、ストック管理を行う方々に情報を伝達し、アドバイスすることが求められます。

執筆者プロフィール

一般財団法人建設物価調査会 総合研究所経済研究部長 橋本 真一

橋本 真一
一般財団法人建設物価調査会 総合研究所経済研究部長
s-hashimoto@kensetu-bukka.or.jp
一般財団法人建設物価調査会 http://www.kensetu-bukka.or.jp/