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ストック時代の建築積算と価格情報 第5回 「なぜ価格はばらつくのか 価格変動要因を知る」

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プライスやその内訳となる科目工事費にはばらつきがあることを説明しましたが、なぜばらつきは生じるのでしょうか?

建物の規模(延床面積、建築面積、階数、階高等)、用途、構造、仕様・グレードなど設計の基本情報はもちろんですが、現場の施工条件や地域の需給状況、景気、労働力、さらには中国などの海外市場動向など、技術だけではなく経済、社会、国際的な要因によっても左右されます。

また、プライスを形成する資材などの取引価格にもばらつきがあります。そのばらつきを低減するために「建設物価」等の資材価格情報誌では、調査時に取引数量や納入場所、決済方法などの諸条件を明示しています。しかし実際の建築プロジェクトは、必ずしもそれらの条件には一致しませんので多少価格はばらつきます。それらの個々の数量と単価が積み上げられ、科目、ひいては総工事費の変動に結びつきます。

建設物価調査会では工事費と様々な価格変動要因との関連性を研究(注)しています。その結果、工事費に影響を及ぼす主な要因は確認できますが、さまざまな要因が相互に寄与するために重回帰分析等で関連性を分析しても高い決定係数を得ることは困難な状況にあります。

しかし関連性がわずかでも見いだせれば、それは価格推計の参考になります。表1は首都圏の事務所の工事費単価と価格変動要因(説明変数)との関係を示した表です。+や−の符号が説明変数の増加による単価の増減を示し、符号の数が説明力を表しています。このような要因と価格との関係は一般の人にも分かりやすいので、算出したコストの妥当性を説明する参考にしてはいかがでしょうか。

(注)価格変動要因の研究は、当会発行の「総研リポート」http://www.kensetu-navi.com/bunseki/report/index.html等で結果を発表しています。

執筆者プロフィール

一般財団法人建設物価調査会 総合研究所経済研究部長 橋本 真一

橋本 真一
一般財団法人建設物価調査会 総合研究所経済研究部長
s-hashimoto@kensetu-bukka.or.jp
一般財団法人建設物価調査会 http://www.kensetu-bukka.or.jp/