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空き家再生への道 第5回 「活用可能な空き家の数と所有者の意識」

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適切な利活用を図れば、多くの空き家は、社会にとって有効な資源となるはずです。それでは、「その他空き家」約318万戸のうち、現実に利活用可能が高いものが、いかほどあるかについて検討します。

 これも国土交通省の分析データによると、耐震設計基準が改正された、昭和56年以降のいわゆる新耐震基準をクリアーしている空き家の数ですが、これが約110万戸あります。そのうちの鉄道の駅から1km以内、即ち徒歩で12分程度の距離にあって、簡易な修繕等の手入れを加えれば使える建物が全国で48万戸あるとしています。

 また、ある分析では、「居住困難な空き家」は約208万戸(約25%)であり、「居住可能な空き家」は約570万戸(約70%)であり、「一定の質を有する住宅である」としています(知的資産創造/2015年8月号)。

これら空き家はまさに、社会にとっての有効な資源となり得る資産であり、借家として貸し出すことも、改修して外国人向けの宿泊施設として利用することも可能なのです。このような有効利用の方法を検討すれば活用できる空き家を、所有者は何故、利用したり、売却処分したりしないのでしょうか。

それは、例えば、実家を相続により取得した所有者は、必ずしも現在の住まいの近くにあるとは限りません。むしろ、遠くに離れた故郷に実家がある場合が多いと思われます。また、その建物が都会にあっても、既に自分の住宅を別に所有している場合がほとんどです。

相続した空き家を利活用するとなれば修繕することも必要になります。修繕するとなれば、それなりの費用も掛かります。日々の生活に追われている人にとっては、このような手間暇とリスクを冒してまで処理することは、相当のエネルギーが必要となります。遠く離れていれば、処分しようにも適切な不動産情報も得にくくなります。何よりも考えることすら面倒くさく、ついつい後回しとなっているのが現状なのです。

執筆者プロフィール

一般社団法人全国空き家相談士協会 事務局長 宮村 勝男

宮村 勝男
一般社団法人全国空き家相談士協会 事務局長
一般社団法人全国空き家相談士協会  http://www.akiyasoudan.jp