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知財ってなんだ?(第1回)
知的財産権とは…「経営戦略に不可欠な武器」

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 読者の皆さんにとって財産と言えば何を思い浮かべるでしょう。不動産、宝玉類といった有体財産もありますが、有体物ではない無体財産も存在します。この無体財産は知的財産ともいわれ、知的財産についての権利を知的財産権といいます。知的財産権には、産業に関する権利(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)と、文化に関する権利(著作権)があります。

 最近では、東京オリンピックのエンブレム問題など、知的財産権が関わる場面が多くなっていますが、その権利の特徴や保護対象によって役割が異なります。具体的には、特許権と実用新案権は主に技術的アイデアを保護する権利、意匠権は物品のデザインを保護する権利、商標権は商品やサービスのブランドを保護する権利、著作権は芸術などの創作物を保護する権利です。

 また、これらの権利は業種や分野によっても役割が異なることがあります。例えば、機械や電気分野の製造業では、主に流通性のある製品や部品などの「物」自体に関する特許が多いのですが、建設業界においては、建築物や土木構造物の「工法」に関する特許が多く見られます。近年の建設業界では、企業間の競争激化において他社との差別化を図るため、工法だけでなく、建築物などに用いる構造、装置、材料などの多様な技術の開発にも各社が力を入れるようになり、独自技術の権利化が盛んになっています。

 一方、特許などの知的財産は、土地や建物のような有体物とは異なり、人の頭の中から生み出されるため、研究開発に携わる技術者のみならず、現場で働く作業員も創り出すことができます。資本力、技術力の高い企業でなくとも、アイデアがあれば、中小企業、小規模事業者などが価値の高い知的財産権を取得・保有することが可能です。しかし、せっかくのアイデアであっても権利化せずに放置されてしまっては企業にとって大きな損失となります。

 また、知的財産は独占するだけが活用方法ではありません。他社にライセンスすることによりロイヤリティ収入を得たり、あるいは無償開放して自社技術の「工法」を業界に普及させることも可能です。

 このように、知的財産権は、自社技術の市場優位性を保ち、利益を生み出すための「財産」として、企業の経営戦略に欠かせない、重要な武器となります。

執筆者プロフィール

特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表 角田 成夫

角田 成夫
特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表
東京電機大学機械工学科卒。旧防衛施設庁建設部で自衛隊や在日米軍の機械設備設計、積算、現場監督などに携わった。その後、都内の特許事務所で知的財産関連業務に従事し、弁理士登録。2014年にアテンダ国際特許事務所を開設。