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空き家再生への道 第8回 「リスクを考える」

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 インターネットのサイトに、「空き家を借りてリニューアルして貸し出し、毎月100万円を稼いでいる」という記事があります。

 この話の内容がどこまで真実なのかは分かりませんが、駅の近くにある空き家で、これを安く借りて、手を加えた上で賃貸用に貸し出せば、一定の期間で投資した資金以上の収入が得られる可能性があります。

 この場合、この事業を行う者は、改築費用を投資しなければなりません。そのため、もしも借り手が現れないときには、投資した額が回収できず損失が発生するというリスクを伴います。

 ただ、リスクのないところに利益は生じません。適正なリスクの分析を行わないで新たな利用方法を考えるのは危険です。リスクの分析を行わない空き家対策は、周囲への危険を取り除くという意味でのメリットはあるが、それ以外は、所有者にとっても、対策事業にかかわる人にとっても、何ら利益を生じさせないかもしれません。

 空き家対策を行う場合には、社会的必要性から利益なしで行なうにしても、ビジネスとして展開させるにしても、常に適正なリスクを見積もり、これをコントロールしておく必要があります。

 現時点で、空き家を放置していることによるリスクとしては、放置しておくことによる周囲への危険性等という外部不経済を及ぼすだけではなく、「空家等対策の推進に関する特別措置法」による勧告がなされた場合に、固定資産税が従来の6倍になるというリスクが加わりました。

 空き家の所有者も「面倒くさいから」では済まされない時代になってきたのです。空き家対策としては、所有者に現在のリスクを的確に認識してもらうとともに、利活用の方法によって生ずるリスク、これらのリスクを負うことによって得られるメリットを示して、動き出すことが重要です。

 この時に必要なのが、それによって所有者にどの程度の運用利益または売却利益が得られるかということです。

執筆者プロフィール

一般社団法人全国空き家相談士協会 事務局長 宮村 勝男

宮村 勝男
一般社団法人全国空き家相談士協会 事務局長
一般社団法人全国空き家相談士協会  http://www.akiyasoudan.jp