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知財ってなんだ? 第3回
特許取得の要件とは…「自然法則の利用と新規性、進歩性」

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 特許権を取得するためには、特許を受けようとする発明が、(1)特許法上の発明に該当すること(2)新規性を有すること(3)進歩性を有すること―の三つが主な要件となります。

 特許法上の発明とは「自然法則を利用した技術的思想の創作であって、高度のものをいう」と定義されています。例えば、変化球の投球方法はどうでしょうか。これは人間の訓練によって習得される「技能」であって、発明の定義にある「技術」ではありません。従って、特許法上の発明には該当せず、特許を受けることはできないのです。また、単なる商売の方法など、人為的な取り決めにすぎないビジネスモデル自体も、発明の定義にある「自然法則を利用した」ものには該当せず、特許を受けることはできません。ただし、コンピュータプログラムによるビジネスモデルは、「自然法則を利用した」発明に該当し、特許の取得が可能です。

 一方、人間を治療または手術する方法は、医療活動の妨げになる恐れがあるため、現時点では特許の対象から除外されています。

 新規性とは、出願時にその発明と同一の公知技術が存在しないことをいいます。特許法は、新規の発明に対して独占排他権である特許権を付与するからです。

 進歩性とは、その発明を公知技術から容易に考え出すことができないことをいいます。新規性はあっても公知の技術から容易に推考可能な発明にまで特許権を与えては、企業の経済活動に支障を来すからです。

 このように、特許を受けるためにはいくつかの要件がありますが、これらの要件は決してパイオニア的な大発明を要求するものではありません。むしろ、既存技術を改良した特許を多く保有している方が競業他社に対して優位になることもあります。例えば、ある企業が基本発明を保有する技術分野に、他の企業が後発的に参入した場合であっても、後発の企業が改良発明を積み重ねていくことにより、徐々に市場競争力を獲得することも少なくありません。技術は日進月歩に進化するものであり、優れた技術も改良を怠ればすぐに陳腐化してしまうのです。

 建設業の分野においても、免震装置、コンクリート構造物、ゴム支承、道路補強方法、建築物の解体方法、地下水の浄化方法、コンクリート構造物の製造方法、トンネル構築方法など、さまざまな発明が特許になっています。

執筆者プロフィール

特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表 角田 成夫

角田 成夫
特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表
東京電機大学機械工学科卒。旧防衛施設庁建設部で自衛隊や在日米軍の機械設備設計、積算、現場監督などに携わった。その後、都内の特許事務所で知的財産関連業務に従事し、弁理士登録。2014年にアテンダ国際特許事務所を開設。