建通新聞社

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測る、描く、守る。
第7回 ハザードマップを生かす

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 測量分野の課題の一つに、担い手の確保・育成があります。国土地理院では「国土を測る」という測量の意義と役割がきちんと国民に伝わっていないこと、生活との関わりについての説明が不足していることが、測量技術者が不足している大きな理由の一つになっていると考えています。このため、産学官の測量関係者とも連携し、広報の充実・強化に取り組んでいます。現在、国土地理院が中心になって行っているリーディング・プロジェクトのいくつかを紹介しましょう。

 一つ目は、全国の小中高校生を対象とした「学校へ行こう」プロジェクトです。GPS衛星などからの信号を観測する電子基準点は全国に約1,300点ありますが、そのうち約600点は学校の敷地に設置されています。そうした学校へ職員自らが出向き、児童・生徒や教職員に、電子基準点の役割や、測量の大切さをより具体的に伝えています。「背丈が5メートルあるマッチ棒のように見えるもの、あれが電子基準点」「人工衛星からの電波をキャッチして地面の高さなどを測り、国土地理院に届けている」「地震が来たとき、学校の地面がどれだけ動いたのか、すぐ分かるよ」などと説明しています。将来の担い手の確保・育成に結びつくかどうかは、子どもたちへの伝わり方に左右しますから、プレゼン力の向上がプロジェクトに欠かせない要素の一つになっています。

 大学生を対象としたインターンシップ実習生の受け入れや、国土地理院にある「地図と測量の科学館」でのサマースクールも行っています。その初弾は、日本地理学会と共催し、9月7日に実施しました。プロフェッショナルを志向する人の道しるべとなるべく、地図や測量技術の最前線を紹介。それらが社会の中でどのように役立っているのかを解説しました。

 こうしたプロジェクトは、測量関係者だけでなく、さまざまな全国の組織・団体と連携して行うことを心掛けています。たとえば、5月に本格運用を始めた石岡測地観測局(茨城県石岡市)のVLBIアンテナなどを活用し、地元自治体とも連携して地理を学ぶ重要性への理解を広げる取り組みも行っています。

 また、熊本地震の発生を受けて、映像や写真、地図や電子基準点で分かる地面の動きなど被災地の情報を迅速に収集し、応急復旧活動や被災者支援に役立てていただきました。防災・減災に向けたこのような役割を担っている国土地理院の姿を伝えることも、将来の担い手の確保・育成につながるはずだ、と考えています。(国土地理院)

執筆者プロフィール

建設産業にとっての地理空間情報は、もはや、測量分野やICT土工などに関わる人たちだけのものではない。このコラムでは国土地理院からの寄稿を連載。深化した測量の姿と進化し続ける地理空間情報の“いま”と“これから”をお伝えする。