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知財ってなんだ? 第7回
創作時点で権利発生…「建築の著作物」も保護対象

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 著作権は、音楽、美術、小説などの著作物に関し、その著作物および著作者を保護する権利です。特許権、実用新案権、意匠権および商標権は、特許庁に出願し、登録を受けなければ権利は発生しません。これに対し、著作権は、著作物を創作した時点で発生し、権利を発生させるための手続は必要ありません。著作権法では、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されており、こうした法律上の著作物に該当しない場合、著作権は発生しません。ちなみに、著作権の登録もできますが、それは著作権の発生要件ではなく、創作日などを立証するためのものです。また、著作権の保護期間は、著作者の死後50年(映画の著作物の場合は公表後70年)になります。

 著作権は、他人の著作物に依拠せずに別個に創作されたものであれば、同じ著作物について複数の著作権が発生することがあります。つまり、自分の著作物と同じものを第三者が使用していた場合でも、それが第三者自ら創作した著作物であることを証明されると、著作権を主張することはできません。従って、いかに独創的な著作物であっても、必ずしもその著作物を独占することができるというわけではないのです。

 著作権は、美術の創作物にも発生するため、物品のデザインを保護する意匠権と似ています。しかし、意匠権が工業的に量産可能な物品を保護対象とするのに対し、著作権で保護される美術の著作物は一品製作物などの純粋美術品である点で異なりますし、意匠権と著作権が同じ創作物に重複して発生することは少ないと考えられます。ただし、美術工芸品のように、量産可能であっても美的鑑賞の対象となり得るものについては、意匠権と著作権の両方で保護される場合があります。しかし、美的鑑賞の対象となり得るか否かの判断は困難な場合が多く、量産を目的とした美術工芸品が必ずしも著作物として認められるとは限りません。

 建築物は、「建築の著作物」として著作権法の保護対象となり得ますが、全ての建築物が著作物として保護されるのではなく、「思想又は感情を創作的に表現」した建築物のみが保護されます。従って、著作権で保護されるのは建築芸術といえるようなデザイン性の高い建物に限られ、何の変哲もない普通のビルや一般の住宅は保護されません。また、建物の設計図も「学術的な性質を有する図面」として著作物となり得ますが、「創作的に表現されたもの」に限られます。

執筆者プロフィール

特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表 角田 成夫

角田 成夫
特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表
東京電機大学機械工学科卒。旧防衛施設庁建設部で自衛隊や在日米軍の機械設備設計、積算、現場監督などに携わった。その後、都内の特許事務所で知的財産関連業務に従事し、弁理士登録。2014年にアテンダ国際特許事務所を開設。