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知財ってなんだ? 第8回
権利取得の手続きと留意点…「知る」ことで難易度とコスト認識

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 これまでご紹介した知的財産権のうち、特許権、実用新案権、意匠権および商標権の産業財産権を取得するためには、特許庁に出願し、登録を受けなければなりません。今回は、これらの権利を取得するための手続きと留意点についてお話します。

 手続きと言いましても、通常は専門家である弁理士が代理人となって書類の作成、提出および特許庁とのやり取りを行いますが、手続きの流れを知ることは権利取得の難易度やコストを認識するために必要であると考えます。

 まず、出願手続きで重要なのは出願書類の作成です。産業財産権法は書面主義を採用していますので、出願書類には権利の取得を請求する対象を記載した上で、所定の様式に従って記載しなければなりません。産業財産権は独占排他権という強力な権利ですから、その権利範囲を画定する書面の記載には厳格さが求められます。また、実用新案法以外は審査主義を採用していますので、出願時の内容のまま権利が取得できるとは限りません。既に世の中に存在する技術や他人の権利と重複する権利の請求は認められませんから、出願前の調査も重要になります。出願書類は特許庁に提出しますが、提出方法には、インターネットによる電子出願のほか、窓口提出や郵送も可能です。

 出願後は、特許庁で審査が行われますが、特許出願は出願しただけでは審査されませんから、出願から3年以内に出願審査の請求という手続きをしなければなりません。特許の出願件数は毎年30万件以上にも及ぶため、本当に権利取得を望む出願のみ審査するためです。意匠と商標は出願から4〜6カ月ほどで審査され、実用新案は出願から2カ月ほどで無審査登録されます。

 審査の結果、出願の発明や意匠に新規性がない、類似の登録商標が存在するなどの拒絶理由があると判断された場合、審査官によって拒絶理由が通知されます。拒絶理由通知を受けた場合であっても諦める必要はありません。審査官の判断に反論する意見書や、権利の請求範囲を減縮する補正書を提出するなど、拒絶理由を解消するための手続きを取ることができます。それでも拒絶理由が解消しない場合は拒絶査定となりますが、拒絶査定を不服とする審判を請求することもできます。

 出願に拒絶理由がない場合、または拒絶理由通知への反論により拒絶理由が解消した場合は特許査定となり、特許料を納付することで権利が発生します(意匠、商標の場合は登録査定、登録料)。

執筆者プロフィール

特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表 角田 成夫

角田 成夫
特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表
東京電機大学機械工学科卒。旧防衛施設庁建設部で自衛隊や在日米軍の機械設備設計、積算、現場監督などに携わった。その後、都内の特許事務所で知的財産関連業務に従事し、弁理士登録。2014年にアテンダ国際特許事務所を開設。