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知財ってなんだ? 第11回
知的財産権をどう守る?…法的措置により救済

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 知的財産権は一種の財産権ですから、これを侵害する行為に対しては法的措置を取ることができます。知的財産は無体物であるため、不動産のように占有ができず、侵害されやすいという問題があります。このため、故意に侵害する場合のほか、知らない間に他人の特許権を侵害してしまうこともあります。

 例えば、特殊な工法を用いた建売住宅を製造・販売したものの、その工法が他人の特許発明であったということもあります。それでも侵害行為により特許権者側に損害を与えた場合には権利行使を受ける場合があります。

 それでは、どのような行為が知的財産権の侵害となるのでしょう。特許権の場合であれば、特許発明を無断で実施する行為がこれに当たります。ここでいう特許発明の実施とは、発明に係る「物」を製造、販売、使用等する行為、発明に係る「方法」を使用する行為等をいいます。特許権の権利範囲は、特許請求の範囲という書面の記載に基づいて定められます。

 権利侵害に対しては、侵害品の製造や販売の中止を求める差止請求、侵害によって生じた損害の賠償を求める損害賠償請求等の法的措置を取ることができます。これらの請求については、民事訴訟によって侵害や損害の有無の確認や損害額の算定等が行われますが、偽ブランド品の販売等、悪質な侵害行為に対しては侵害罪等の刑事罰が科されることもあります。また、訴訟が長期化して損害が大きくなることが予想される場合は、裁判所に対して仮処分の申請をすることにより、本案判決まで暫定的に侵害行為を停止させることもできます。

 一方、実施者側にも対抗措置があります。まず、実施品が特許権の範囲に含まれないと判断した場合は侵害を否認します。また、特許権は特許庁の審査を経て付与されるものですが、特許発明と同一または推考容易な先行技術が看過されて特許された場合など、本来特許されるべきでない特許権に基づいて権利行使されることがあります。そのような場合、特許が無効理由を有する旨を訴訟で主張することにより、特許権者側に対抗することができます。また、特許出願の前から特許発明を知らずに実施していた場合は、先使用による実施権を抗弁として権利行使を免れることができます。

 実際の特許権侵害訴訟では、原告の勝訴率は約3割と言われ、それ以外はほとんどが和解で争いを終結しています。いずれにしても訴訟は多くの時間と費用を要するため、訴訟に至る前の警告段階で和解するケースも少なくありません。

執筆者プロフィール

特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表 角田 成夫

角田 成夫
特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表
東京電機大学機械工学科卒。旧防衛施設庁建設部で自衛隊や在日米軍の機械設備設計、積算、現場監督などに携わった。その後、都内の特許事務所で知的財産関連業務に従事し、弁理士登録。2014年にアテンダ国際特許事務所を開設。