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知財ってなんだ? 第12回(最終回)
知的財産権を取得する意味は?…新たな「企業価値」を創造する

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 これまでお話ししてきたように、特許をはじめとする知的財産権は、企業の技術やブランドを守る重要な財産であるととともに、その活用によっては大きな利益を生み出すことができます。

 知的財産権は、その知的財産を自らが独占排他的に実施または使用することができますから、自社の製品や技術に特許があることをアピールすることで市場優位性を保ち、他社の参入を阻止することができます。また、知的財産権を保有していることによって、例えば製品の売買契約や工事の請負契約、あるいは他社とのアライアンスを有利に進めることもできます。

 一方、知的財産は、その独占をするだけが活用方法ではありません。自社の特許や商標の使用を他社に許諾してライセンス収入を得ることもできます。また、あえて無償で知的財産を開放し、その実施や使用を広く世間に認めることで、自社技術やブランドを戦略的に普及させることもできます。この場合は、不適切な知的財産の利用がなされないよう、他社による実施や使用をコントロールするためにも知的財産権の保有が必要になります。

 また、企業の技術者にとっても、自身の研究開発の成果が特許出願という形で会社に評価されれば、発明意欲が高まり、結果的に企業の技術力が向上するというシナジー効果が得られます。

 さらに、近年では、知的財産権が企業の経営資産として有効に活用されている場合、知的財産権の金銭的価値を合理的な根拠に基づいて評価し、その評価結果をM&Aや融資の審査に活用しようとする動きが見られるようになってきました。例えば、企業の知的財産権について、専門の調査会社がその技術内容などを含めたビジネス全体を踏まえ、評価するサービスが国の委託事業としても行われています。このような知的財産価値評価は、金融機関が融資対象企業の事業性を評価するツールとしても役立てられていますし、成長性のある企業の資金調達にも貢献しています。

 知的財産は、人の頭の中から生み出されるものです。不動産や有価証券を得るためには金銭を支払わなければなりませんが、知的財産という無形の財産は、研究開発に携わる技術者のみならず、現場で働く作業員も創造することができます。しかし、せっかくのアイデアも財産化せずに放置されてしまうことも多くあります。これは企業にとって大きな損失です。今後、建設業界において、知的創作活動がより一層奨励され、一つでも多くの「財産」が生み出されることを期待しています。

執筆者プロフィール

特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表 角田 成夫

角田 成夫
特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表
東京電機大学機械工学科卒。旧防衛施設庁建設部で自衛隊や在日米軍の機械設備設計、積算、現場監督などに携わった。その後、都内の特許事務所で知的財産関連業務に従事し、弁理士登録。2014年にアテンダ国際特許事務所を開設。