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どうなる? 未加入対策後の建設業界改革
第4回 下請指導に関する企業体制の構築

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【下請指導体制についての検討ポイント】
・下請企業の保険加入状況の確認方法は?
施工体制台帳、作業員名簿等に設けた記載欄のみで行うのか。加えて証明資料の提出を求めるのか(その場合に求める具体的な資料種類と提出方法は)。

・未加入企業、未加入者への加入勧奨の方法は?
口頭か文書か。未加入状況のある企業に対して、加入猶予期間をどれほど設けるのか。猶予期間中の指導はどのようなスパンと方法で継続するのか。

・未加入状況がある企業との請負契約についての方針は?
既存の取引企業や、新規取引予定の企業に未加入状況がある場合の契約方針。

・個人情報保護への配慮について
受領書類の管理方法。提出された書類に不要な個人情報が含まれていた場合はどのように処理し、指導するのか。

検討の結果に共通の一つの答えがあるわけではありません。第3回で触れた通り、それは各社のコンプラインス遵守の捉え方によって左右され、対応に差が生じます。

ただその内容は、実情に即しており、かつ実効性があることが重要です。例えば、厳格な方針を掲げたとしても、それを実行できる体制や人材がなければ絵に描いた餅となります。また、逆に緩い基準では、現在の業界全体としての厳格化傾向にそぐわず、それを重視する企業との取引関係に支障をきたす可能性が出てきます。

そのためにも検討時には必ず、実際に対応する責任者・担当者の意見を聞き取り、具体的指導とのすり合わせを図りましょう。

また、責任者等は基本的には社会保険の専門家ではありませんので、その役割における負担は大きくなりがちです。よって自社の指導方針に沿った対応を可能とするための、サポート体制を構築する姿勢が重要となります。具体的には、管理を容易とするシステムの導入や、人員の確保、また仕事の割り振り変更などが挙げられます。

上記のような検討を重ねることで、その元請企業等の未加入対応はまとまりを持ち、第2回で触れた下請企業の混乱や反発は生じにくくなりますし、元請企業等側の負担軽減、そして体制強化にも繋がります。

現在そのような体制がなく、散発的な対応となっている企業は早期の検討を、また一度方向性を定めた企業もその再構築を検討してみて下さい。

執筆者プロフィール

特定社会保険労務士 社会保険労務士法人エール(横浜市) 加藤大輔

加藤大輔
特定社会保険労務士 社会保険労務士法人エール(横浜市)
社会保険労務士法人エール(横浜市)所属。特定社会保険労務士。建設企業向けのコンサルティングを幅広く手掛けてきた社会保険未加入問題の第一人者。関連する執筆やセミナー講師など多数。