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登記を極める フクダゼミナール
Lesson3 中間省略登記という手法

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【Lesson2のおさらい】
前回、Cさんは空き家になっている実家の土地建物を相続しました。周囲への配慮は別として、そのままであれば自分の名義に換える「所有権移転登記」をする必要性はありません。しかしその土地建物を売却する場合は、いったん自分に所有者を変更する登記の必要があります。一方で登記を省略する「中間省略登記」という手法があります。
さて、Cさんは「中間省略登記」によって登記を省略する事ができるのでしょうか?

まず、「中間省略登記」について簡単にご説明しましょう。

【登記の原則】
例えばXさんの所有する不動産をYさんが買い、Yさんがさらにその不動産をZさんに売ったとします。

この場合は通常X→Y→Zと順次所有者を変更する登記をします。
登記簿は次の様になります。

1 所有権移転 〇年〇月〇日売買 所有者 X
2 所有権移転 〇年〇月〇日売買 所有者 Y
3 所有権移転 〇年〇月〇日売買 所有者 Z

【登記の必要性がある?】
しかしYさんが買ってすぐに転売する場合、一瞬自分のところを通過するだけの不動産について安くはない税金(登録免許税)を支払って登記をする必要があるのでしょうか。登記をする目的についてはLesson1で、▽二重譲渡等の危険の防止▽担保設定登記の必要性―という目的があるとお話ししました。しかし今回のYさんは一瞬で手放すので、Xさんが二重譲渡する事を心配する必要はありませんし、担保の設定もしません(できません)。登記をする必要性はなく、もちろん法的義務もありません。

しかし、Yさんは原則として登記をしない訳には行かないのです。Lesson2でお話しした通り、登記をする場合は「所有者の変更の過程を忠実に登記簿に反映しなければならない」という登記制度上の原則があるからです。つまり、Yさんがいったん取得したという途中経過も登記しなければなりません。事実上Yさんは登記を強制される事になるのです。

【中間省略登記の考案】
もちろんYさんとしては自分にメリットがないのに登録免許税を払わされるというのは納得ができません。そこで考案されたのが「中間省略登記」なのです。

これは、「所有者変更の過程を忠実に反映する」という原則(X→Y→Zと所有者が変わったのならその通りに登記しなければならない)を逆手に取り、所有者をYに変更することなくXから直接Zに所有者を変更するというものです。つまりYが所有者にならなければYに所有者を変更する登記をする必要もない、むしろ登記できないというわけです。これは中間者であるYへの所有者変更を省略するので「中間省略登記」と呼んでいます。

なお、厳密にいうとこの手法は「新」・中間省略登記です。「旧」・中間省略登記に関しては機会があればご説明させていただきたいと思いますが、ここでは2005年以前に行われていた手法であるという事だけお話しておきます。

新・中間省略登記を行った場合、登記簿は次の様になります。

1 所有権移転 〇年〇月〇日売買 所有者 X
2 所有権移転 〇年〇月〇日売買 所有者 Z
                                         
Yさんは登記されませんから、登録免許税を支払う必要がありません。

また、Yさんには不動産取得税も課税されません。従って計4%ほどの税金を節約する事ができる事になります。

(詳しくは次回に続く)

執筆者プロフィール

フクダリーガルコントラクツ&サービシス(千代田区)代表 福田龍介

福田龍介
フクダリーガルコントラクツ&サービシス(千代田区)代表
早稲田大学法学部卒業。1989年司法書士登録。大手司法書士事務所勤務を経て2002年、フクダリーガル コントラクツ &サービシス(FLC&S) を設立、開業、数々の不動産トラブルを未然に防ぐ。05年から「中間省略登記問題」に取り組み、06年末の規制改革・民間開放推進会議の答申にも関与した。新・中間省略登記の第一人者。