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登記を極める フクダゼミナール
Lesson7 読者からの質問

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 今回もゼミナールの読者からの質問にお答えしましょう。

 先般、大手ハウスメーカーC社が巨額の土地代金をだまし取られるという大型詐欺事件が発生しました。これは、土地の所有者Aに成りすました「偽A」が、C社から代金の一部を受領(ずりょう)した後、行方が分からなくなったというものです。

 これに関連したご質問をいくつか頂きました。


Q1:事件に関する報道記事の中に「中間省略登記の仮登記は難しくない」とありましたが、そうなのですか?

Q2:同じく「不動産仲介者は登記を飛ばし(中間省略)、不動産所有者から直接C社に移転させる登記ならば、不動産所有者も偽者である可能性が高い」とありました。これだけを読むと短絡的に「中間省略登記って危険だ!」と感じてしまうのですが・・・?

Q3:不動産の売買では大金を振り込む方法による決済場面をよく見かけます。決済時に「着金確認」「同時決済」がなぜ重要か、簡単に教えていただけませんでしょうか。それにより、被害者が陥ったワナのからくりが分かるような気がするのですが・・・。


A1(中間省略登記の仮登記は難しくない?)
 中間省略登記というのは、登記を省略するということで、中間省略登記という登記があるわけではありませんから、その仮登記も有り得ません。ここでいう「中間省略登記の仮登記」とは、中間者(A→B→Cと順次売買する場合のB)の名義で行う仮登記の事です。今回も偽Aと被害者C社との間に「B社」が介在し、仮登記を経ていたという報道がありました。この手口自体は不動産詐欺事件では最近多いようです。

 ただし中間省略登記の場合はBに対する所有権移転はせず、偽AからCに直接所有権を移転しますから、最終的に仮登記は抹消することになります。実務的には後述する「同時決済」が大半なので、仮登記がされることはほとんどありません。

 なお、C社の公表によりますと、転売の形式ではありましたが中間省略ではないとのことです。


A2(中間省略登記は危険?)
 「中間省略」するのであれば所有者も偽物である可能性が高い、というのは、もし所有者偽AからいったんB社が買い取って登記も済ませ、その後でB社からC社が買うのであれば、B社への移転の時点で所有者が本物かどうか確認を取るはずだから所有者が本物である可能性が高い。しかし所有者偽AからC社に直接所有権を移転させるのであれば、その確認を経ていないから所有者が偽物である疑いがあるという意味だと思われます。

 この論旨には事実誤認があります。それは、中間省略登記の場合は確認を一度しか行わないと認識しているという点です。

 中間省略の有無に関わらず、偽A→B、B→Cという二つの売買契約があることに変わりはありませんから、偽Aが本物かどうかという確認もそれぞれの売買において行うことに違いはないのです。従いまして中間省略だから危険だということは全くありません。


 A3:(決済時に「着金確認」「同時決済」がなぜ重要か、簡単に教えていただけませんでしょうか)
 決済には同時決済と異時決済の二通りがあります。

〈同時決済〉 新中間省略登記において、AB間の決済とBC間の決済を、間を置かずに行うことを言います。これによってBは売買代金を払うのと同時に所有権をCに移転させることができ、C以外の者に売却されてしまう危険がなくなります。

〈異時決済〉 実務的には同時決済が大半ですが、今回の様な不動産詐欺の場合はかえってこれが危険を増大させたと言えるかも知れません。B社がいったん買い取り登記完了したのを確認した後でC社が買い取る事にしていれば、詐欺に巻き込まれることはなかったと思われます。これを同時決済に対して「異時決済」といいます。

 もっとも、「詐欺事件の場合は急がせるのが常とう手段ですから、異時決済を要求することは難しいでしょう。またB社がグルであれば異時決済もあまり意味を持ちません。それぐらいの時間的余裕を持って取引に当たるというのが不動産詐欺への対処方法としては極めて重要です。
 
〈着金確認〉 新中間省略登記ではAの代金受領(ずりょう)とCの所有権取得は引き換えの関係で、Aが代金を受け取らないとCも所有権を取得できませんから、Aが間違いなく売買代金を受け取ったことを確認するのが重要だということです。

 詐欺事件の場合は「本物の」Aが代金を受け取ったかどうかを確認しないとCは所有権を取得できないということになりますが、そもそもこれは着金確認以前の問題です。取引の前に偽Aが本物かどうかを確認する必要があるのですから。

執筆者プロフィール

フクダリーガルコントラクツ&サービシス(千代田区)代表 福田龍介

福田龍介
フクダリーガルコントラクツ&サービシス(千代田区)代表
早稲田大学法学部卒業。1989年司法書士登録。大手司法書士事務所勤務を経て2002年、フクダリーガル コントラクツ &サービシス(FLC&S) を設立、開業、数々の不動産トラブルを未然に防ぐ。05年から「中間省略登記問題」に取り組み、06年末の規制改革・民間開放推進会議の答申にも関与した。新・中間省略登記の第一人者。