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どうなる? 未加入対策後の建設業界改革
第11回 長時間労働慣行は打破できるか?

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 建設業に抱くイメージや、入職をためらう理由、離職の理由についての調査で、長年にわたり必ず最上位に近いところに挙がるのが、「休日が少ない」「労働時間が長い」といった回答です。実際の厚労省調査でも、建設業の年間労働時間は全産業の平均に比べ2割多く、約65%が4週4休以下で就業しているという結果が出ています。

 建設業界において今も続く社会保険未加入問題は、課題としては古くからあったものが、厳格化により大きく取組みが動いた、いわゆる古くて新しい問題ですが、建設業における「長時間労働の是正」も同じ道を辿ろうとしています。

 現在、いわゆる36協定の時間上限については、「月45時間・年360時間」との厚労省告示があります。今国会で審議される改正労基法により新たに設けられようとしている残業上限は、この強制力のなかった告示を法制化するものです。建設業は天候に左右されやすいなどの業界特性から、そもそも告示の対象外でしたが、改正法施行後5年間の猶予期間を設けた上で適用となる見込みです。 

 上記を踏まえ国交省は、適正な工期設定や賃金水準の確保、週休2日の推進等を目指し、発注者を含めた関係者で構成する協議会を設置しました。今後はその実現のため、労働者の確保・育成、施工時期の平準化や、書類の簡素化、生産性の向上に資する支援等を進める方針です。

 また日建連は上記を受け、会員企業向けに自主規制の導入などを促す働き方改革の推進策を発表しました。中身としては、前述の猶予期間である5年間において、先行して段階的な労働時間削減を目指し、週休2日についても2021年度までの実現に向け、関係各所と連携して環境を整えていこうとするものです。

 日建連は未加入対策の際も、5ヵ年計画の期日(平成28年度末)に先行する適正化目標を設定し、そこに具体的な期日設定をしてきました。今回の自主規制も先行的であり、かつ削減目標を数値設定するなど具体的である点でも共通しており、直ちに労働時間を短縮することの困難さを念頭においた積極的な内容となっています。

 未加入対策時の自主規制目標の際には、それに基づき事前の適正化指導が厳格化した経緯もありますので、今回の長時間労働に関しても、実務的には5年の猶予期間を待たずして、対応を迫られる企業が多くなると考えられます。よって各企業はこれを想定し、早期に自社の取組みを検討すべき時期にあると判断すべきでしょう(次回に続く)。

執筆者プロフィール

特定社会保険労務士 社会保険労務士法人エール(横浜市) 加藤大輔

加藤大輔
特定社会保険労務士 社会保険労務士法人エール(横浜市)
社会保険労務士法人エール(横浜市)所属。特定社会保険労務士。建設企業向けのコンサルティングを幅広く手掛けてきた社会保険未加入問題の第一人者。関連する執筆やセミナー講師など多数。