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MBA社労士流『売手市場のハローワーク求人戦略』 〜欲しい人材が向こうから来てくれる求人票の作り方〜
第2回 採用目的と欲しい人材を明確にする

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【経営者が決める人材戦略】
 前回の記事で、中小企業では「欲しい人材像が明確に判る求人票が少ない」と指摘したところ、旧知の人事コンサルタントから、「うちのクライアントは採用目的も人材像も明確にしてる。それでも来ないんだよねぇ。」と相談がありました。

 求人票を見ると、自社都合を優先したキーワードは羅列されているものの、「相手の行動喚起」、すなわち、応募につながる情報はほとんど見当たりません。

 例えば、@急募A補助B見習い−など、求人側のわがままが満載。これでも来たのは「ヒト余り」時代です。超売手市場の今、求職者目線で人材像を示し、そこに魅力や共感を得られない限り、ピクリともしないキーワードです。

【採用目的】
 年度末に向かい、どの業界も人手不足に拍車がかかります。建設業はその代表格です。

 採用目的が「人手不足の解消」となれば、どうしても「急募」を使いたくなります。

 また、「安い人件費で雇いたい」場合、「補助、見習い」も使いたいでしょう。これは特に、徒弟制度の名残がある「建設業、製造業、美容業」に顕著といえます。

 ところが、このような「急募、補助、見習い」など、企業側の都合が前面に出すぎた採用目的は、求職者にとっては、興味がないどころかマイナスでしかありません。

 では、どうすべきか?

 ずばり、国の政策「働き方改革」に乗る手があります。

 例えば、採用目的(募集の背景)を「働き方改革を見据えた増員です」とうたいます。

 これであれば、働き方改革に積極的に取り組む当社の姿勢を示しつつ、
 「@急いできて欲しい」けど、
 「A一人増やさないことには改革に手を付けられない」ので即戦力が欲しい。
 ただし、現実的に無理がある。
 であれば、
 「B補助的ポジションで構わない」。
 我々の働き方改革に加わってくれる人がいたら、お互いにハッピーになれるなぁ。

 という、社長の心からの発露としての採用目的を明確に発信できます。求職者の背後におられる「ご家族に対する安心感」につながり、「嫁ブロック」も減るでしょう。

【欲しい人材】
 次に人材像の明確化です。採用目的が「欠員補充」の場合、ありがちな間違いは前任者の業務内容を羅列することです。後釜の採用で、即戦力を求めるのはムリです。今や、人材紹介会社や派遣会社のような、プロでさえヒトを集められずに倒産する時代です。欲しい人材を狙って採りにいけるのはGoogleやMicrosoftなどの働き方においても名実ともに一流と目される企業くらいでしょう。

 そこでお勧めしたいのが「組織図から逆算」して採りたい人材像を明確にする方法です。

 今回採用したい人材の仕事内容、雇用形態、権限・責任などを以下の3要素を中心に考え、我が社の組織図のどこに据えるべきかを明確にします。

 @職位:管理職、一般職、嘱託、パート、アルバイト
 A職務:営業、設計、現場監督、営業事務、工務、本部スタッフ
 B能力:免許・資格、業界知識、実務経験

 仮に欲しい人材が「業界経験20年以上の営業管理職」など、採用市場に少ないスペックであっても、まずは内部人材で補填できないか。つまり、内部昇格による人事異動の可能性を探ります。たとえ技術者集団であっても、必ずしもスペシャリストばかりではなく、ゼネラリスト志向の方もいます。次善の策を用意したうえで、「業界経験10年以上の営業担当者」等に間口を広げます。

 そして、この「2つのターゲット」に対して「2種類の求人票」を出すのです。うまく、営業管理職が応募してくれたら万々歳ですが、仮に担当者でも御の字です。求める人材像を広げつつ、最低限、欲しい職務経験ははずさない。これは時代に合わせた戦略です。

 求人票が自社都合のキーワードだらけになっていないか、今一度確認してください。

 次回は、明確にした採用目的、人材像に基づいて、採用担当者が実践する採用戦術について解説します。

執筆者プロフィール

中小企業診断士事務所 みらいの経営代表(中小企業診断士・社会保険労務士・MBA) 山崎広輝

山崎広輝
中小企業診断士事務所 みらいの経営代表(中小企業診断士・社会保険労務士・MBA)
ハローワークで毎月200人採用、20年で20億円の社会保険料を適正化。経営経験、コンサルタント、20年の人事労務実務およびMBAの知見を基にした経営者目線のアドバイスは、「社労士なのに経営ができる・わかるMBA社労士」として異彩を放つ。