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MBA社労士流『売手市場のハローワーク求人戦略』 〜欲しい人材が向こうから来てくれる求人票の作り方〜
第3回 いつ、どこで、いくらで募集するか

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【募集時期】
 筆者が毎月開催する求人セミナーは参加者の大半がアンテナの高い経営者ですが、広告の出稿タイミングを意識している方はほぼゼロです。新卒採用と異なり、中小企業が随時募集する中途採用では、いつ出稿するかで反響の量・質は大きく変化します。

(活動のピークは決算時期)
 一般に中途採用のタイミングは、@3月A9月B6月−の順に多いと言われます。これは、日本では4月決算(9月中間決算)の企業が多く、経営計画(人員計画)上、期初の4月、10月に向けた採用活動が中心となるためです。6月が多いのは、新入社員教育後、配属されたGW明けに退職者が増え始め、その補充が狙いです。採用担当者ならば、毎年のように、頭を悩ますことでしょう。

(若手が9月、中高齢層は1月に活発化)
 次は、ターゲット人材が活発に動くタイミングがいつか。一般に、退職が増える時期は人事異動が多い3月と9月、決算期と重なります。また、ボーナス後の6月と12月も多くなります。さらに新卒の特徴として、ゴールデンウィーク後の5月が加わります。
 では、求職活動のピークはどこか?筆者の経験では、夏休み身近の5〜7月は動きが鈍く、夏休みに友人と情報交換した後の9月が若手のピーク。一方で、中高齢層のピークは、12月のボーナス後、年末年始に親戚や友人と情報交換した1月です。

 つまり、たくさんのターゲット人材から採用活動を行いたい場合は、求職者が増える9月頃がベターと言えます。このあたりは、5年、10年と社歴を重ねた企業でしたら、自社の入退社データと付け合わせた確認が可能です。ターゲット人材が動くタイミングと、自社の退職時期のトレンドから、求人広告の出稿タイミングを決定する必要があります。

【求人媒体】
 求人媒体は、自社の採用ニーズによって使用方法が異なります。上の図表に、中小企業で広く使われる媒体を8つ選択し、4軸でポジショニングを例示しました。

(8つの媒体)
@紙媒体AWeb媒体B人材派遣C人材紹介DSNSE口コミ
F学校(大学・専門校)Gハローワーク

(4つの軸)
@コスト(縦)Aスキル(横)B特長(色)C採用期間(線)

 以下、ハローワークを活用する場合の思惑を説明します。
 @低コストA中堅スキルB中高齢層−をターゲットに、Cやや時間をかってもいい−。という趣旨です。
 募集背景により、コスト、ターゲットや採用期間が変化します。各々の特徴とその時点の採用ニーズに適した媒体を組み合わせて参照ください。

【採用コスト】
 「採用コスト」とは、人材獲得にかかる総コストです。これを、採用人数で割った「採用単価」が個別の予算組みのベースになります。大手企業を中心とした調査ですが、ターゲット別、媒体別の近年の相場として参考データを示します。

(ターゲット別採用コスト)
@新卒採用「2016年マイナビ企業新卒内定状況調査」より
 1社当たりの求人コスト総額は平均で556.0万円、1人当たり45.9万円と報告されています。中小企業には重たい数字といえますが、まさに売手市場を物語ります。

A中途採用「2014年マイナビ中途採用状況調査」より
 1社当たりの広告費用は約227万円、人材紹介費用が約561万円です。1人当たりでは求人広告費が約40万円と報告されています。ここで、特に採用コストが高い職種は技術人材です。中でも、我々のターゲットである建築・土木技術者は、常に人材不足の状態にあるため、採用コストは跳ね上がります。

 (広告費と人材紹介手数料が大)「リクナビNEXT」より
 では、採用コストで最も大きなものは何か。まずは、転職サイトなどの「広告費」です。例えば、大手求人サイトに2週間掲載すると「120〜150万円」程度は必要です。これで取れればいいですが、中小企業では、相当綿密な計画が必要な金額です。
 2つ目は人材紹介サービスの「紹介手数料」です。もちろん、成果報酬が原則ですが、内定人材の年収の20〜30%が相場であり、これも思い切った覚悟が必要です。

 やはり、採用コストを抑えながら優秀人材を確保するためには、図表1の媒体をいかに上手に組み合わせかにかかってきます。

 今回は、採用戦術の3要素(いつ、どこで、いくらで)を確認しました。自社の採用活動が適時、適確、適価に行われているか、再度、採用責任者は確認してください。

 次回は、あらゆる採用活動の起点となるハローワークについて、インターネットサービスを活用した具体論を解説します。

執筆者プロフィール

中小企業診断士事務所 みらいの経営代表(0円求人コンサルタント) 山崎広輝

山崎広輝
中小企業診断士事務所 みらいの経営代表(0円求人コンサルタント)
info@miraino.biz
ハローワークで20年間、毎月200人を採用してきた「社労士なのに経営ができる・わかるMBA社労士」元大東ビジネスセンター(株)代表取締役 https://www.miraino.biz